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あざらしの談話室2コミュのFreedom-Fighter 2-3

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居合わせた全員の表情が引き締まる。ついにやってきたな、そんな表情だった。ハスティーはすぐに準備を始めた、といってもボストンバッグを引っ張り出してきただけだが。中身を確認して、彼の準備は終了した。

時計の針はちょうど11時を刺していた。12時になったらフリッツが迎えの車を寄越してくれるという。それまでは暇である。

「ちひろちゃんの顔を見られるのもあと1時間か」

そんな寂しいこと言うなよ、キックスがラプターに言った時だった。それまで口を閉じていた彼女が口を開いたのだ。



私も行く・・・連れて行ってほしい



は? あまりに唐突で予想だにしなかった。ラプターが聞きなおすと、彼女はそれまで見せなかった真剣な眼差しで共闘を希望した。

「その願い、叶えることはできない」

そう簡単に連れて行くことはできないのだ。

「遊びに行くんじゃないんだぞ」

ハスティーがちひろの説得を始めた。キックスとラプターも援護射撃する。この3人はあくまでも軍人で、ちひろはただの民間人だ。訓練も受けていない19の少女である。当然連れていくことなどできない。彼女は3人の代わる代わる説得を受け、徐々におとなしくなってきた。ハスティーはちひろの肩を持った。

「お前はオレ達に代わり、この商店街を守っていてくれ。オレ達が再び戻ってくるまで」

ハスティーは笑みを浮かべた。ちひろは少し下を向いていたが、頭を上げ笑顔で返事した。

「絶対に帰ってきてよ?」

無論そのつもりだ、彼らは答えた。

出発の時間が近づいてきた。3人は外に出る。ちひろも見送りに出る。商店街は慌ただしくなっている。さっきより人が多くなっているような、そんな感じを受けた。間違いなく、人々はパニックに陥っている。これから戦争が始まるんだ。両手に持てるだけの買い物を提げて我が家に戻る人、買いだめ客を相手に翻弄する店、中にはパニックからか、店員にくってかかる客もいる。その店員がちひろの親父さんだとわかったのはその直後だった。親父さんと客の間に割って入るちひろ。と、客がちひろに手を上げ、そのまま彼女に振り下ろした。平手打ちがちひろの左頬にヒットした。地面に崩れる彼女の体。

「何をする!」

咄嗟にハスティーが介入した。終戦後ほとんど見なかった彼の『怒』の表情だった。錯乱状態の男性客はハスティーに矛先を向けた。ハスティーはちひろを守るべくディフェンスを張った。男性のストレートパンチを意図も簡単に止め、即座に首を腕で絞めた。

「鈍ってはいないようだな」

キックスは腕を組み感心していた。その中に警官がやってきた。ハスティーは腕を緩め、男性を解放した。警官はその男性とハスティーを取り押さえてしまった。

「放せ! オレは何もしていない!」

うるさい、黙れ! 警官がハスティーを黙らせる。キックス的には実に笑えるシチュエーションだが、ラプターは慌てていた。すぐに止めさせるよう警官に言うが、まるで聞いていない。仕方なくキックスが動くことに。

「そいつを放せ、軍人だぞ」

隊長であろう男がキックスに近付いてきた。明らかに信用していない。そこでさらに言葉を続ける。

「オレは海兵隊のジョージ・キックス中尉だ。そいつはオレの上官でミリアル・ハスティー中尉だ。あまりやり過ぎるとまずいぞ」

キックスがを証明ID見せると、警官は慌てて離れた。これは失礼しました、頭はそう言ったがかなり棒読みだ。こいつは信じてねぇな、キックスもラプターも心で思っていた。だが無理もなかった。ここ最近巷では証明書の偽造が流行っているらしい。この警官達は真偽を確かめる余裕もないので、とりあえず解放した・・・といったところなのだろう。

「大丈夫か?」

キックスはハスティーに駆け寄った。けがはしていないようだ。ちひろも慌てて駆け寄ってきた。とりあえず立ち上がり、その場を離れる。その時、クラックションが鳴る音が聞こえた。一台のジープが人混みの中から現れた・・・フリッツだった。

「お待たせしました」

彼は右手に武器を持っていた。黒々とした機関銃、背中には普段見るものをカスタムしたバズーカ砲。服装は今朝とは違って、ネイビーブルー基調の迷彩服で、頭にはバンダナを巻いていた。こうも印象が違って見えるものか、3人はかなり驚いていた。


あんなところでんなもん(武器)ちらつかんな、とはオーガンシティーを出た直後に放ったキックスの言葉


「NRE(Normal-Equipment:通常装備)か。予想通り深刻な事態に陥ってるみたいだな」

トーンを落としてハスティーが呟いた。

「まだNREだからいいじゃんさ。これがAEとかOEだったら肝っ玉潰れちゃうよ」

ラプターが顔をひきつりながら言った。AEとはAssault-Equipment(強襲装備型)、OEとはOnslaught-Equipment(猛襲装備型)である。OEともなるとフリッツの場合、大砲と言っていいくらいの武器が加わる。3人はジープに乗り込んだ。ちひろはただ黙ってそれを見ていた。会話しずらい空気がそこにあった。

「今まで、なんだかんだで世話になったな」

ハスティーのようやく出た言葉に、ちひろの瞳がわずかに潤む。ハスティーは彼女に笑顔を見せる・・・それはちひろへの、今までで最高の笑顔だった。

「死ぬんじゃ・・・ねぇぞ!」

ちひろもまた、今までで見せたことのない笑顔で兵士達に言葉を送った。4人はその言葉に敬礼で返した。


プップッ



クラックションを合図にジープは動き出した。商店街を抜けたところで、ジープを止める者がいた・・・『メンフィス』こと『さら』だった。その隣には・・・

「ちとせちゃん!?」

ちとせとさらが待っていた。フリッツは車を止める。ハスティーが降りて2人に近付く。

「ごめんね、時間ないのに」

さらは少し申し訳なさそうに話した。彼女の頼みかな? フリッツがぼそり。

「オレ達はここで待ってるから、その辺にでも行って話ししてこいよ」

キックスがハスティーとちとせにそう促した。すぐに済ませるよ、彼はちとせを連れて歩き出した。

「バカかお前は、別に急ぎの用でもないんだ。ゆっくりしてこい。むしろそうしろ!」

そう言ってキックスは開いた右手を上げ親指を立てた。それはチームで通用する『無二の仲間の証』であるサインだ。まぁ敬礼と似たような意味だと解釈してもらってもいいだろう。もっともこのサインは戦場で考え出されたもので、当時は「健闘と再会」を意味するものだった。

「あのサインはここで使ってたんですね」

ようやく第一声を放った。実はこのサイン、ハスティーがはねすけとして生活していた頃(つまりは前日まで)サークルで別れ際にこのサインを使っていたのだ。もっとも意味は『元気にまた逢おう』とかそういった意味に変わっているが。

「なにかあったの?」

少し歩いたところに木陰があった。そこに並んで座る2人・・・。最初彼女は口をもごもごさせていたのだが、そのうち・・・



じ、実は、せ、先輩に・・・先輩が・・・

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