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BOOKERSコミュの手に汗握るサスペンス

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「デカ長、ホシを見つけました!」
 木坂は声を震わせながら叫んでいた。祝日とあって、遊園地内の人ごみをかき分けるように木坂の目はホシに照準を合わせていた。
「よし、良くやった。お前一人で大丈夫か?」
「はい、あと一歩のところまで追い詰めてます」
「逮捕状は間に合わないから、別件でパクれ。俺が責任を持つ」
「はい」
 木坂は容疑者のすぐ後ろにつけていた。初めての手柄に興奮が覚めやらぬ様子であった。そうとも知らず容疑者は振り返る様子もなかった。

 しばらくすると、また、デカ長からの指示がきた。
「どうだ、パクったか」
「いえ、手が届きそうなんですがホシもしぶとくて、なかなか捕まえられません」
「じれったい奴だな。俺がこれから合流するから待ってろ」
「はい」
 新米刑事の木坂には荷が重いと察したデカ長が助け舟を出すことにした。

 デカ長が到着すると木坂がメリー・ゴーランドの前で一人佇んでいた。
「どうした木坂?」
「すみません。追いつけませんでした」
「何やってたんだ、お前は!状況を説明してみろ」
「ホシが馬に乗ったので、直ぐ後ろのパンダに乗って追いかけたのですが・・」
 木坂は言葉が続かなかった。自らの失態を詫びるように、うな垂れていた。
「バカだな。キリンだったら手が届いてたかも知れないぞ」
 木坂は、さずがデカ長だと思った。今度乗る機会があったら是非そうしようと固く心に誓った。
「落ち込んでいる暇はないぞ」
「はい」
「それで、ホシはどこに行ったんだ?」
「たぶん、丘の方へ」
 木坂が言い終わるのを待たずにデカ長は駆け出した。

 程なくしてデカ長の執念が実を結んだ。ホシを発見したのだ。まさにホシは高飛びする寸前であった。
「間に合って良かったですね。さすが、デカ長」
 木坂が小走りで息を切らせながらデカ長に追いついた。額の汗を拭うのも忘れて二人は見つめあった。
「俺もダテにメシを食ってるわけじゃないぞ」
 デカ長はそっと木坂の肩に手を置いて微笑んだ。
「ぐずぐずしてる暇はないぞ。さあ行くぞ」
 デカ長に続いて木坂もホシを追った。ホシに至近距離まで近づくとデカ長が耳打ちした。
「立っていてはまずい。座ろう」
 促されるように木坂が腰を下ろした。観覧車の中の二人は、まるでデートでもしてるように肩を寄せ合ったまま、一台先の観覧車の中のホシを見つめていた。
「デカ長、早くパクリましょうよ」
「焦るな」
「でも、逃げられてしまいますよ」
「大丈夫だ。頂上まで行けば、それ以上は上には行けないんだ」
 長年のカンがそう言わせるのか、デカ長はやけに落ち着いていた。

 しかし、予期せぬ展開が待っていた。
「ホシは逃げ足の速い奴ですね」
「そうだな。てっきり追い詰めたと思ったんだけどな」
「デカ長でも、しくじることがあるんですね」
「これは、ひょっとして本庁指定の難事件に発展するかもな」
 観覧車を下りた二人は眉間にシワを寄せ合った。デカ長はしきりに首をひねっていた。

 このまま引き下がる訳にはいかなかった。時効が迫っていたからだ。執念に燃える二人がホシを追った。

 デカ長の鼻が利いた。すぐにホシの姿を捉えたのだ。今度は何が何でも逃すことは出来ない。デカ長がコーヒー・カップに飛び乗った。運悪く木坂の前で定員オーバーになった。係員から次まで待つように言われると、仕方なく木坂はホシとデカ長を恨めしく眺めるしかなかった。
 奇しくも同じコーヒー・カップに乗り合わせたホシとデカ長は楽しそうに見えた。
「相席してすみませんね」
「いえ、いいんですよ。ぼくも一人だから」
 多分、ホシとデカ長がこんな会話をしているのだろうと、木坂の目に映っていた。ホシは意外と愛想よくデカ長を受け入れていた。これはデカ長の作戦だと思った。敵に油断させておいてからパクるのだと木坂は睨んでいた。
 ホシは中央のハンドルを力一杯回していた。デカ長は少女のようにキャッキャと、はしゃいでいた。

 木坂は初めての捜査で何かに役立つだろうと思って、持ってきていた使い捨てカメラを二人に向けた。猛スピードで回転するコーヒー・カップから身を乗り出すようにしてデカ長がVサインをした。しかし回転が速すぎてシャッターを押す時には背を向けた状態になっていた。

 やがて回転も収まり、次の客たちが我先にコーヒー・カップを目指す中で、デカ長だけが肩を落としたまま動こうとしなかった。シャッター・チャンスに間に合わなかったのでスネているのが木坂にも分かった。
「後で記念写真を撮りますから」
 上目遣いに見るだけでデカ長は口をむすんだままだった。
「機嫌をなおして下さいよ」
 なおもスネるデカ長であった。

「お客さん、次の人が待ってるんですよ。降りてください」
 居座るデカ長に係員が声を掛けた。渋々、コーヒー・カップから腰を上げたデカ長を木坂が抱えるようにして連れ出した。

 デカ長が少し機嫌を取り戻すと記念写真を撮ることにした。
「シャッター押してよ」
「お前ら、いい加減にしろよ」
 ホシが怒った。
「お前らばっかり、いい役やって」
「分かったよ。じゃあ、今度は君はデカ。ぼくは犯人でいいや」
「ねえ、もう一回やろうよ」
「集合時間、大丈夫か?」
「先生たちは、まだ広場に来てないよ」
「じゃ、やろう、やろう」
「ほんと、お前ら、よくやるよ」
 デカ長が、ため息をついた。

 追いつ追われつのサスペンスは遠足日よりの遊園地で閉園まで続くのであった。
           The endless?

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