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桂の書庫コミュの零地帯144 二人の瞳

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白い官衣を纏った体を、一本の腕が貫通していた。


ダラリと下がった手から、金色の釈杖が滑り落ち…
白い官衣の腹部は、みるみる紅く染まっていく…

シン
『姉上には感謝していますよ。
あの時、ジャガ-を殺さないでいてくれた』

シンさんは、笑ってる…
狂喜の笑み…
左手に構えた釈杖は、汚れもなく輝いてる。

サ-シャ
『駄目…』

サ-シャさんは、震える両手で、自分を貫いた腕を掴む。

シン
『駒は揃いました。
『今』を逃すつもりはないですし…
姉上も楽になりましょう。
もう、その美しい瞳をあけてはどうです?』

ゆっくり…
ゆっくり…
笑ったまま、その腕を引いていく。

サ-シャ
『ダメ…嫌…』

尚も抑えようとするサ-シャさん。

シン
『さあ…返してもらいますよ』

サ-シャ
『駄目…ダ…
あの子を…破壊神にしては…ダメぇ…』

閉じられた瞳から、次々と涙がこぼれ落ちる。

シン
『終わりましょう、姉上』

一瞬だけ、シンさんの笑みが消えた。

サ-シャ
『…あの子を…』

一気に腕が引き抜かれ、サ-シャさんの体は弓なりに反って崩れ落ちた。

サ-シャ
『ジャガ-…
愛してるわ…』

シン
『やはり、姉上の瞳は美しい』

足元に倒れたサ-シャさんを見下ろすシンさんの笑みは、今までで一番軟らかかった。

シンさんは僕達に向き直ると、いつもの口調で語りはじめた。

シン
『創造女神はジャガ-を産んですぐ、小さな命を創造男神から護るため、産まれたばかりのジャガ-を聖樹の根本に封印しました。
その時、聖樹への影響を考え、ジャガ-の力を両目に集めくり抜き、創造女神自ら体内に封印したんですよ』

差し出された手のうえに、真っ黒な球体が二つ乗っている。
あれが、ジャガ-の瞳…

シン
『創造女神は、己の身から溢れ出しそうになる暗黒の魔力をさらに封印すべく、自らの手で、その両目を潰しました。
以来、何度転生をし繰り返しても、その身にジャガ-の瞳は封印されたまま…転生した身の瞳も開かないまま…』

…サ-シャさんが見たシンさんは、どんな風だったんだろう。
僕が見ている今のシンさんは、とても悲しそう…
口元は笑っているけど…

ああ…
あの時も、こんな顔をしていたっけ…
聖樹が封印された時も…

シン
『さあ、扉をあけましょう』

淋しげな笑みは一瞬で、またいつものシンさんに戻っていた。

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