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アフターパーティーコミュの38

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38

※10/16にアップしてから37話の後半を大幅に書き直してます。(11/6)



頭が痛い。それに、ぼーっとする。そうだ、私は市井君の部屋にいる。睡眠不足に眠剤を飲んだせいで、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。今、何時なのだろう。時計を探したが見当たらない。部屋の中が薄暗いということは、もう夕方なのだろうか。私は寝転がっていたソファから体を起こした。ひどく頭が重い。冷たいものが飲みたくて、鈍い体を何とか立たせて市井君の家の冷蔵庫を漁る。2Lペットボトルのウーロン茶があったのでそれを取り出し、流し台の近くに乾かしてあったカップにそれを注いで一気に飲んだ。喉はすっきりとしたが、相変わらず頭はぼーっとしたままだ。もう一杯分のウーロン茶をカップに注いで、ペットボトルを冷蔵庫に戻そうとした時に、別の部屋からボサボサの頭をした市井君が現れた。
「繭ちゃん、起きた?」
「あ、市井君、いたんだ。ごめんね。寝ちゃったみたい。あ、お茶もらっちゃった。」
私は手にしたカップを掲げて市井君に告げた。
「いいよ、いいよ。適当にやって。それより、俺が帰って来た時に繭ちゃんソファでぐっすり寝てて、ちょっと起こしたけど起きないからもうそのままにしちゃったよ。」
「ほんとに?ごめんね。私さ、家出る時に浩二の眠剤くすねてきて、それここに来て1錠飲んじゃったんだよね。だからかも。ちょっとまったりしたかっただけなんだけど、昨日ほとんど寝てなかったから効いちゃったのかな。」
「だからか。揺すっても起きる気配ないからさ。」
「ねえねえ、ところで今何時?この家、時計どこにあるか分からなくて。」
「今?5時半くらい。」
「あ、なんだ。」
「朝の、だよ。」
「朝の?!」
驚愕した。ソファに横になりながら、昼の情報番組を見いていたのは記憶にある。だから5時半と言えば、夕方の5時半まで数時間寝てしまったのかと思ったら、まさか朝の5時半だなんて。ということは、半日以上寝ていたことになる。どんなに激しいパーティー明けでも、10時間以上は寝たことがないのに。明らかに飲んだ眠剤の効果だ。私はその薬の効き目に驚いた。これまで私が服用したことのあるレンドルミンなどとは比べものにならない強い薬だ。それでこの頭痛も納得がいく。
「そっか、もう朝か。そう言えば、浩二どうだった?」
「ああ、うん。」
何を話したらいいものやら、という感じで、市井君は言葉を濁した。
「薬飲んだ?」
「駄目だった。やっぱり薬は嫌だって。なんか医者に洗脳されるって言ってた。」
「やっぱり。ねえ、浩二変だよね?私が変って思ってるだけじゃないよね?」
「ああ、あれはおかしいな。普通じゃない。」
「良かった。」
私は思わず言ってしまった。浩二が普通じゃないという事態は全くもって良いはずがない。ただ、自分と同じ意見の人がいるという同類の安心感が、そう言わせてしまったのだ。おかしいのは私ではなかった。誰が見てもやっぱり浩二は普通ではないのだ。
「俺が思うに、浩二は繭ちゃんのことが好き過ぎるんだよ。好き過ぎて執着してるっていうか。あれは1回少し距離を置いたほうがいいかもな。」
「だから旅に行ってたのに、その途中でこうなっちゃったんじゃない。」
「そっか。だよね。浩二は少し繊細なところがあるからな。」
「ねえ、これからどうしたらいいと思う?私、不本意だけど、もしこのままおかしな状態が続くなら、浩二の実家に連絡するしかないと思うんだけど。また警察沙汰とかにはしたくないし。」
「それもしょうがないのかもね。」
「でも、その時は浩二と別れる時だよ。多分。」
「浩二には気の毒だけど、それもしょうがないと思うよ、俺は。あいつ繭ちゃんにかなり依存してる所があるから、それを治さないといけないと思う。」
自分が薄々思っていたことを他人の口から聞くことで、何かが吹っ切れたような気がした。
「市井君、ありがとう。私、そろそろ行くよ。浩二のことが心配だし。」
「俺も一緒に行こうか?」
市井君の気持ちが嬉しい。でも今の所、これは私と浩二の問題だ。
「ううん。大丈夫。また相談させて。後で連絡する。」
私は彼のアパートを出た。通りは朝の日差しが眩しい。目を細めると、また激しい頭痛がした。

一晩外泊してしまったことで、多少の後ろめたさを感じながら、私は自分のアパートへ帰宅した。恐る恐るドアノブを回してみると、鍵はかかっていない。私はなるべく音をたてないように、ゆっくりと部屋の中へ足を踏み入れた。そこに浩二はいなかった。予想していなかった訳ではない。夜中また出たり入ったりをしていたのだろうか。今夜も寝ていないのだろうか。あれから一体どんな風になってしまったのだろう。私は彼を心配しながらも、しかし彼が部屋にいなかったことに多少安堵していた。それにしてもこれからどうすべきなのか。私は部屋の中を見渡した。暴れた様子もないし、とりわけ変わった感じはしない。彼のバッグは置き去りになっている。しかしその中に携帯と財布は見当たらない。代わりにテーブルの上にマイルドセブンとライターが置きっぱなしになっている。私はなんとなしにそれを手に取り、1本をくわえ火をつけた。普段吸わない煙草を吸ったことで、頭がくらくらし、頭痛も激しくなる。私は馬鹿だ。そう思っていると、アパートの外階段を上る靴音が聞こえてきた。恐らく浩二だろう。私は身構えた。

部屋のドアが激しく開き、飛び込むように浩二が入ってきた。その反動でバタンとドアが大きな音をたて、空気を震わせて勢い良く閉まる。隣り近所からクレームがきてもおかしくないほどだ。
「浩二、どこに行ってたの?」
私は聞いた。私の声に驚いたのか、浩二が衝撃的に動きを止めた。なんだかこれまでの浩二とまた様子が違う。肩で息をして、目はギラギラと獣のようだ。嫌でもクリスの家で暴れた時の浩二を思い出させる。浩二は私の質問が聞こえなかったのか、もしくは私の言葉の意味が分からないような顔をして、ただ私のことを見つめている。それは決して優しい瞳ではない。浩二の混乱は時間を追って酷くなってはいないか。私は取り繕うように彼に話しかけた。
「昨日はごめんね。ディズニーランドはまた今度行けばいいよね。」
さっきからずっと苛々と何かを考えているような思い出そうとしているような表情で黙っている浩二に、私は穏やかにそう切り出した。が、その途端、彼の顔がみるみる赤くなり怒りの表情に変化する。私はまた言ってはいけないことを言ってしまったみたいだ。
「な、何で、いいいつもお前はそう勝手なんだ。あ、あいつとグルになりやがって。どどどいつもこいつも。ふふふざけるな。お俺を病気扱いしやがって。」
黙っている間に抑えていた感情が爆発した、といった感じで、浩二が汚い言葉で罵り始めた。ディズニーランドに行かないことそのものよりも、彼の指示に従わなかった私に対して怒りと混乱を覚えているようだ。私は初めて浩二にお前と言われたことにショックを感じていた。
「ごめん。でも昨日は本当に誰ともそんな約束していなかったんだよ。」
言葉を続けようとすると、私も自分の感情が乱れ、ふるふると涙声になっていく。
「あああいつと、う、うまくやっていくつもりなんだろ。馬鹿にしやがる。」
「そんなつもりないよ。あいつって市井君のこと?市井君は偶然あの場に現れただけだよ。」
「そそそんな偶然あるわけないんだよ。おお前が、ああいつに思わせぶりな態度とってるのは、み見れば分かるんだ。」
「何でそんなこと言うの?私は浩二のために一生懸命やってるのに。」
「そ、そそそうやってお恩着せようとしても無駄だよ。おお俺にはす全てお見通しなんだ。」
「もうやだよ。そんなこと言うならもう別れようよ。いいよ、もう。別れよう。私、浩二の実家に電話するから。電話して迎えに来てもらう。」
「おおお俺の実家は関係ないんだよ。おおおおお前が。おおお前がああ。」
「薬飲んでよ!薬飲まないならもう別れる!」
私は泣いていた。怒り、悲しみ、恐怖、疑心、混乱、そういう負のエネルギーのカオスだった。そんな私を、歯を食いしばりもの凄い形相で睨みつけた浩二が、ガタガタガタガタと体全体を震わせ始めた。その激しく震える自分の体を抑えるように、爪を立てて両腕を握り締めている。急に彼から酸っぱくて強烈なアンモニア臭がし始めた。怖い。彼が彼自信を抑えきれなくなったら終わりだ。殺される。そう感じた。私は泣きながら慌ててキッチンに移り、滅多に閉めないキッチンとワンルームの間にある引き戸を閉めた。そうして彼との空間を遮断してからシンク下にあるキッチン棚の内側に差し込んであった包丁数本を取り出して、ガスレンジの裏側と壁の間にある隙間にそれを隠した。何故か刃物だけは手の届く所に置いておいては駄目だと思った。それから急いでアパートの外へ逃げた。真昼間の住宅街だ。通行人はいなくても、何かあれば誰かに声は届くに違いない。私はこれ以上、浩二と二人きりで狭いアパートにいることは精神的に耐えられなかった。

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