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Angel's CompanyコミュのScratch Snow Scramble 第一話

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「さみぃーなー、今日は……」

自室のカーテンを開けて、空を見上げる。
黒に近い灰色の厚い雲。
空からは大粒の白い雪が、こんこんと降り続いている。
昨日の夕方から降り続けた雪はやむことを知らず、世界を一晩で白銀の世界へと変えてしまった。

「雪なんてウザいだけだわ、マジで」

小学校の頃は雪が降っただけではしゃぎ回っていたわけだが、今は雪なんて本当に邪魔なだけだ。
雪かきするのも面倒だし、バスや電車が遅れたりもする。
さらには自転車に乗れなくなるから、俺達高校生にとっては死活問題だ。

「さて、と……」

雪のせいで、自転車には乗れない。
俺はいつもより15分ほど早く準備を始める。
階段を降り、顔を洗うため洗面所へ。
フローリングの床が痛いくらいに冷たくて、ついつい爪先立ちになってしまう。
我ながら情けない格好だとは思うが仕方がない。
蛇口をひねり、お湯が出るのをじっと待つ。
水で洗ったほうが目が覚めるんだろうが、水なんかで洗ったら永遠に目が開かなくなるなんてことになりかねない。
ちょいちょいと指先で水を触って、水温を確かめる。

「……ちょっとお兄ちゃん、なにやってんの?」

「うぉっ!!」

後ろから急に話しかけられ、びくっと背筋が縮こまる。
振り向けば、俺よりも頭1つ分ほど下から睨みつける我が妹『未来(ミク)』。
ショートカットに誰に似たのか猫っぽいツリ目。
お湯が出たのを確認してから、バシャバシャと顔を洗う。

「や、ほら。水だと寒いからさ」

「や、うん。まぁ一理あるけどさ」

俺と交代で洗面所に入り、顔を洗った後、髪をくしでとかしていく。

「今日、雪でチャリ乗れないぞ?大丈夫か?」

「ん、たぶんねー」

どうでもいいような返事が鏡ごしの未来から帰ってくる。
まぁコイツが今更遅刻したところで、誰もなんとも思わないんだろうが。
未来は、よく学校に遅刻する。
俺が起きたときに起こせばいいと思ってるかもしれないが、それが出来たら苦労はしない。
コイツの寝起きは、尋常じゃなく悪い。
や、みなさんの想像してる寝起きの悪さの3倍は悪い。
俺はかるく溜め息をついて、リビングの扉を開けた。

「おはよー」

すでに起きていた両親に挨拶する。
親父はすでにスーツに着替えていて新聞片手にコーヒーを飲んでいた。
母さんは弁当を作っているのか、まだ台所をドタバタしている。
テーブルの上には俺と未来の分の朝食が並んでいた。
トーストにハムエッグ、ホットミルク。
ごくごく普通のありふれた朝食。
そう、我が家はものすごくありふれた普通の家庭だ。
別に両親が海外出張するわけでもなく、実は妹が義妹でもなく、メイドロボがいるわけでもない。
今更かもしれないが、俺の名前は『長谷川 純一』
はい、普通。
そんな特別な名字でもなく、読めないほど難しい漢字を使ってるわけでもない。
ってか、俺の名前を間違えて読むヤツは日本人としてどうかしてると思う。
トーストにたっぷりのマーガリンを塗って、テレビを見る。
いつも見ている朝の情報番組。
綺麗なお天気お姉さんが、恐ろしいことを口走っていた。

「現在、東北の日本海側で降っている大雪は今週末まで続く予定で、明日から降雪量は──」

危うくトーストを吹き出すところだった。
雪をロマンチックだとか、綺麗だとか言ってるヤツらは現実ってもんをわかってない。
毎年毎年いやというほど降る雪。
本当に邪魔なだけなんです。
や、本当に。
たまに降る分には綺麗なのかもしれないが、積もってるところにさらに降られてもねぇ……。

「ジュン、帰ってきたら庭の雪かき頼んだわよー」

ダイニングキッチンの向こうから母さんの声。

「……りょうかい」

そうなんだよ。
これが一番のネックなんだよな。
雪が降ることで何が一番大変かって言ったら、雪かきが一番大変なんだ。
雪の降らない地方の人はわからないかもしれないが、雪ってのは意外と重い(まぁ軽かったら雪崩で死ぬ人なんていないわけだが)。
かなりの重労働だ。
はぁ……朝から憂鬱だ。

「おはよー」

俺が朝食をとり終わったところで、髪をとかした未来がリビングに入ってきた。

「ごちそうさん」

それと同時に、食器をかたして俺は席を立つ。

「急げよ、未来」

「ん、おけー」

後ろ向きのまま、俺に向かってぷらぷらと手を振る。
そんな妹の様子は気にも留めずに(や、もう見飽きたし)、俺は自分の部屋への階段を上る。
パジャマを脱ぎ、壁にかけてある制服に着替える。
Yシャツが冷たくて鳥肌が立つ。
恨めしく窓の外を睨みつける。
しんしんと降る雪。
灰色の空を見て、大きく溜め息をつく。
今日もまた憂鬱な日々が始まる。

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