ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

200×年映画の旅コミュの2007年7月下旬号(自宅ヴィデオ鑑賞・2)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「結婚の夜」(7月29日 自宅ヴィデオ鑑賞/TVエアチェック)
1935年/監督:キング・ヴィダー

【★★★ 登場人物のプラトニックぶりが今観ると新鮮で、ハリウッド黄金時代を実感させるメロドラマ】
 淀川長治さんが生前、この映画について熱く語っているのを読んだことがあり、以来観たいと思い、TV放映された時に喜び勇んで録画したのですが、つい日頃の忙しさにかまけて観ていなかった映画です。
 最新作が新聞評で酷評されて腐っている作家ゲイリー・クーパーは、気分転換のため、父が残した田舎の家に妻と一緒に出かけます。都会育ちの妻は、早くNYに帰りたいということばかり口にする一方、クーパーは田舎の空気が新鮮に思え、土地を売って欲しいと申し出てきた隣家のポーランド移民家族の一人娘、アンナ・ステンの健気で素直な魅力にも惹かれ始めたため、何かと理由をつけてNYに帰ってしまう妻をよそに、クーパーだけは田舎に残ります。そして、ステンとの触れ合いを繰り返すうちに、クーパーの作家としての創作意欲が湧き上がり、ステンをモデルにした小説を精力的に書き始めます。しかし一方、ステンには親が決めた結婚相手がいて、ステンの父は娘と既婚者クーパーとの交際を快く思わず、結婚式の段取りも決めてしまいます。
 激しく降る雪の夜、クーパーの家に結婚の話を報告に行ったステンは、豪雪のために家に帰れなくなり、クーパーの家に泊まります。すでに妻への思いは薄れ、今やステンのことを愛しているクーパー。親の決めた結婚に気が進まず、クーパーへの想いを深めるステン。しかし、意外にお堅い映画が好みのゴールドウィン傘下では不倫の一線を堂々と越えることはできないがゆえ、二人は清い関係のまま朝を迎えるのですが、雪の夜をプラトニックなまま過ごす二人の純潔ぶりが、今観ると実に新鮮です。
 この2日後に開かれた結婚式で、新郎は、クーパーに未練を残す新婦に我慢がならず、クーパーとの決闘を申し込むためクーパーの家に乗り込むのですが、決闘を止めようとして間に入ったステンが階段から転落して死んでしまうという悲劇的な最期を迎えてしまうことになります。
 ベルエポックのメロドラマであり、ヴィダー演出の凄味を感じるほどではありませんが、実に味わい深い映画で、1930年代こそハリウッドの黄金時代だったと実感できる映画でした。


「百萬圓貰ったら」(7月29日 自宅ヴィデオ鑑賞/TVエアチェック)
1932年/監督:H・ブルース・ハンバーストン、エルンスト・ルビッチ、ノーマン・Z・マクロード、スティーヴン・ロバーツ、ノーマン・タウログ、ジェイムズ・クルーズ、ウィリアム・サイター、ルイス・D・ライトン

【★★★ 8話オムニバスで出来・不出来には濃淡があるものの、ルビッチ演出部分は他を寄せ付けず圧倒的】
 8人の監督によるオムニバス・ドラマ。
 年老いた大富豪が、自分の遺産目当てに寄ってくる親族にうんざりしたため、遺産は見知らぬ人々に与えてしまえと決意し、電話帳にスポイトで水滴を落とし、当たった人8人にそれぞれ100万ドルの小切手をプレゼントすることにします。
 映画は、100万ドルを急にプレゼントされた8人の喜怒哀楽を順繰りに綴ったものです。
 いつも店の商品を壊してばかりいて、妻からも店主からも小言ばかりを言われてストレスを溜めている男。トウが立って売れ残ることの多くなった娼婦。小切手詐欺を連続で働いているため、銀行から目をつけられ、せっかく100万ドルの小切手を貰っても現金に引き換えることができず、結局金がないために自滅する男。小切手が送られた日が4月1日だったため、誰かの悪戯だと思い込み、手放してしまう水夫。小切手を貰った途端、働いていた巨大オフィスを出て、次から次へとドアを通り抜けて社長のオフィスを訪ね、アッカンベーをするサラリーマン。折角買った自動車が、暴走トラックによってお釈迦にされたため、貰った100万ドルで次々と自動車を買い替えては、市内の暴走車退治に乗り出す老夫婦。死刑執行寸前に100万ドルを受け取っても、どうすることもできずに処刑される死刑囚。狭苦しいルールに縛られた老人ホームの経営を100万ドルによって買い取り、民主的で明るい経営に転換する老嬢。
 ……エピソードの出来・不出来には濃淡があり、暴走車退治に乗り出す夫妻の片割れを演じたW・C・フィールズの臭い芝居に辟易したり、死刑囚のエピソードの大仰な演出に呆れたりした一方で、社長にアッカンベーするチャールズ・ロートンのエピソードの簡潔にして手際よい演出にすっかり感心したら、あとで調べるとその部分はエルンスト・ルビッチが手がけていることを知り、やはりルビッチは他の凡百の監督とは比較にならぬことを実感しました。ちなみに、このルビッチ部分は、小津安二郎が「東京の女」(33)で、主人公・岡田嘉子の弟である江川宇礼雄が、恋人の田中絹代とのデートで観に行く映画として、引用されていました(さらには、小津「青春の夢いまいづこ」(32)には、この映画の原語版ポスターが、ヒロイン田中絹代の自室に貼られているという形で“引用”されてもいました)。


「君とひととき」(7月29日 自宅ヴィデオ鑑賞/TVエアチェック)
1932年/監督:エルンスト・ルビッチ、ジョージ・キューカー

【★★★★★ ドアが開閉されるたびに胸躍る、奇跡のように明朗で猥褻なルビッチ的セックス・コメディ】
 前記「百萬圓貰ったら」でルビッチに感心したせいもあり、ルビッチ映画でヴィデオ録画したまま観ていなかった「君とひととき」を鑑賞しました。ちなみに、共同監督としてジョージ・キューカーの名前もクレジットされていますが、中身は完全にルビッチ的コメディです。
 舞台はパリ。冒頭、警察署の署長が部下を集めて演説します。曰く、「春が来た。我々にとっては忌むべき季節・春がやって来てしまったのだ。春になると、パリはどうなるか? 客はカフェには寄り付かず、男と女が公園のベンチを独占する。これでは観光収入も上がったりだ」などという演説。そして警察官たちは、公園に駆り出され、夜の公園のベンチで抱き合っているカップルたちを公園から追い出し始めるのです。ルビッチ節、快調!
 そして、警察官に職務質問されるのがモーリス・シュヴァリエとジャネット・マクドナルドのカップルで、シュヴァリエは自分たちが夫婦だと主張しますが、警官は取り合わず、公園から追い出します。行くところがなくなったので仕方ない、などと呟きながらシュヴァリエは自宅寝室にマクドナルドを連れて来て、ルビッチ映画らしく寝室のドアがピシャリと閉められると、すぐにシュヴァリエが戻ってきてキャメラに目線を向けて、「警官は信じてくれなかったが、自分たちは本当に夫婦なんです」などと観客に向けてノロけてみせ、ドアの向こうからはマクドナルドの声で「ハニー!」などという声が聞こえ、シュヴァリエが「イエス、ダーリン」などと応えたのち、シュヴァリエは再び寝室のドアの向こうに消えてゆくのです。ドアの開閉が男女の仲の進展具合を表現してしまうというルビッチ流映画術が冒頭から炸裂し、観る者を喜ばせてくれる魅惑のオープニングです。
 このあと、マクドナルドの親友で大学教授夫人たるジュヌヴィエーヴ・トビンが、シュヴァリエのことが気に入ってしまい、何かとシュヴァリエを誘惑しようとするという形で、際どい不倫劇がコミカルに進展してゆくのを、シュヴァリエを始めとした役者たちの歌を交えたミュージカルとして見せてゆくのです。
 前記「結婚の夜」のようなプラトニックの純潔愛物語もいいですが、ルビッチの猥褻極まりない、それでいてスリリングで微笑ましいセックス・ウォー・ゲームもこの上ない愉しさであり、わたくしたち観客は、ドアが開け閉めされるたびに微妙に変化してゆく男女関係の機微に心躍らされてしまうのです。
 夫と親友の関係になど一切疑問を持たず、むしろ自宅で開くパーティに招いた若い令嬢に夫の気があるのではないかとやきもきする妻。マクドナルドのコケットリィに魅惑され、ついつい彼女を誘惑しようとしてぎこちなく行動してしまう夫の友人。妻の移り気にすっかり慣れきって、そろそろ自由になりたいと離婚の準備を冷静に進めるトビンの夫たる大学教授。
 いよいよ自分の親友と夫が怪しい関係になっていることにマクドナルドが気づき、果たしてドラマはどうやって収拾を図るのだろうと訝しく画面を眺めていると、実に可愛らしくも洒落た解決策を映画は用意しており、わたくしたちはただただニコニコして映画を観終えることができるのです。
 この奇跡のように明朗で猥褻なルビッチ的セックス・コメディを祝福しましょう!


「モンテ・カルロ」(7月29日 自宅ヴィデオ鑑賞/TVエアチェック)
1930年/監督:エルンスト・ルビッチ

【★★★ ルビッチ製セックス・コメディとしては中庸の出来ながら、まずまずの愉しさ】
 前記「君とひととき」に続いて、エルンスト・ルビッチの「モンテ・カルロ」を鑑賞。
 雨の中を教会から男たちがズラズラと走り出てきて、傘を手に沿道に並び、その傘に守られながら盛装した男女が走ってきて、教会の向かいにあるホテルに入ってゆき、最後に新郎と思しき男性が同様に教会からホテルに走り去ったあと、誰かを忘れてきてしまった、といったふうに、新郎は教会に戻ってゆくと、そこにはお目当ての新婦がおらず、新郎は結婚式寸前に花嫁に逃げられてしまったことに気づくというオープニング。彼は、花嫁を必ず見つけ出し、ちゃんと結婚式を挙げてみせると決意します。
 花嫁ジャネット・マクドナルドのほうは、その頃召使の女性を連れて行く宛てもないまま、欧州横断鉄道に乗っており、車掌に停車駅を聞いたところ、モンテ・カルロという響きに魅せられ、そこに行くことにします。車窓から流れるヨーロッパの田園風景を眺めながら、愛情に溢れた生活を夢見る歌を歌うマクドナルド。
 こうしてモンテ・カルロに着いたマクドナルドは、ルーレットで一文なしになるものの、貴族生活に慣れた彼女は贅沢にしか生きられず、そんな彼女に一目惚れした伯爵ジャック・ブキャナンが美容師になりすまして彼女の身の回りを、金銭面も含めて世話してやり、彼女のほうはブキャナンが美容師だと思い込んでいるため、彼のことが好きになるものの、身分違いゆえ悩んでいた結果、ついには冒頭でマクドナルドが袖にした新郎が彼女の居場所を突き止めてモンテ・カルロにやってきて、いよいよマクドナルドもその新郎と結婚する羽目に陥るかと思ったところ、たまたま観に行ったオペラの「ムッシュー・ボーケール」が、髪結いの男と恋に落ちた貴族の令嬢が、実は相手が髪結いではなく本当の王子様だと知るに至るという物語に触れて、ブキャナンの伯爵としての正体も知ることとなり、ハッピーエンドを迎えるというミュージカル・コメディ。
 ルビッチ製のセックス・ウォー・ゲーム劇としては、猥褻なクスクス笑いを誘う面も、ドアの開閉の機能ぶりも、洒落た隠し味も、前記「君とひととき」には及びませんが、まずまずの愉しさでした。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

200×年映画の旅 更新情報

200×年映画の旅のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング