歴史　ちょっといい話コミュの吉田茂と広田弘毅

戦前吉田は、外交官としてデビューするんですが、この時の同期がなんと、広田弘毅なんですね。

どちらも、その後総理大臣になります。

広田はトップの成績で試験に合格、外交官時代はロンドンやワシントンの大使、外務大臣、そして、２２６事件で岡田内閣が総辞職すると、広田に組閣の大命が下ります。

　もともと広田の考えは、国際協調主義、欧米や中国との関係を良好にしていきたいという考えもあったのですが、日本国内では二度の軍事クーデターにより、軍部の発言は無視できないものとなっており、後に軍部の台頭を許すこととなる軍部大臣現役武官制の復活をさせてしまうんですね。

　戦後、広田はＡ級戦犯として裁かれることとなるのですが、この政策が原因で軍部の暴走を招いたとして、巣鴨プリズンにおいて、絞首刑となります。

　

　一方の吉田茂は、広田のように妥協を許さない性格でした。対華二十一か条の反対運動を起こし左遷され、外交官時代は主に中国各地の領事館に赴任し、裏街道を歩まされ、出世の道から完全に遠ざかりました。

　吉田は名誉を手に入れることは、ありませんでしたが、欧米の植民地支配と内乱状態で乱れる中国赴任は、権謀術数の限りを尽くした外交を学ぶには最適だったんですね。

　そんな吉田の才能を見込んだ広田は、組閣の際に吉田を外務大臣に起用しようとしますが、軍部は軍国主義を批判し、欧米協調外交を目指す吉田を大いに嫌い実現することはありませんでした。

その後も吉田は、日独伊三国防共協定に反対し、日英外交の協調性を強く訴えますが、それがさらに、軍部から睨まれることとなります。

孤立してゆく吉田茂、そんな吉田にも彼を支えようとする人たちがいました。

　九州の実業家麻生太賀吉、後に吉田と共にＧＨＱと互角に渡り合うことになる白洲次郎。

　日本はその後、泥沼の戦争へと突入し、予想したとおり、日本は苦戦を強いられます。

　近衛文麿は、天皇陛下に敗色濃厚である旨を伝える近衛上奏文を執筆し、吉田に相談。吉田は、早急な欧米との和平工作が必要だと近衛に主張しますが、そのことが、軍部のスパイの知るところとなり、吉田はついに逮捕されます。

　しかし、いかに強気な軍部においても、やはり、戦局を好転させるにはいたらず、程なく日本は、ポツダム宣言を受諾し、日本は戦争に敗れます。

　青い目をした大君ダグラスマッカーサーが、神奈川県の厚木基地に到着し、新しい指導者の下で、日本は再出発することになります。

「戦争に負けて、外交で勝った歴史がある。」

「われわれは戦争に負けたのであって、奴隷になったのではない。」

上の言葉は、吉田茂によるもの、下の言葉は、白洲次郎の言葉です。

アウトローな経歴を持つ吉田茂ですが、非常に心強い印象を受けますね。

かつてイギリスでは、葉巻をくわえた頑固者の宰相が政権を握り、第二次大戦を勝利へと導きますが、和製チャーチルこと吉田も、この後、歯に衣着せぬ、アメリカとの互角以上の交渉を行い、日本の発展に大きく貢献することになります。