歴史　ちょっといい話コミュの王佐の臣　荀彧

いわゆるナンバー２ではなく、リーダーを支えるのが、王佐の臣だと思う。

孔明のように、主君の代わりに執政の座につくものもいるが、やはり、王を（佐）たすけるという点から言えば、荀彧が三国志の中ではもっともその役割としてぴったりな気がする。

荀彧とは、かの荀子の子孫され、儒学者の名門中の名門。

象牙の塔の腐れ儒者といった平和主義で屁理屈な雰囲気は全くなく、彼の智謀は、武官顔負けの、とにかく主戦派に与するものだった。

曹操という男は、他人に決断されるのを非常に嫌う。だからといって、誰の意見も聞かずに専断するのも嫌なタイプだった。

結局のところ、意志はすでに決まっているのだが、気に迷いが生じたときに、主君を勇気づけ、また、その決断にさらに、血肉を付け加えるのが、この荀彧の役割だった。

全く長期戦が不可能なほど兵糧がなかった曹操軍が、１０倍の兵力と有り余る兵糧を保有する袁紹に、攻め込んだのだ。

いかに強気な曹操といっても、さすがに、攻めるかどうか躊躇する。しかし、曹操の国は貧しく、袁紹の国は豊かで強大。

早いうちに袁紹を攻めなければ、後に取り返しの付かないことになるというのは十分承知していた。

身の保身を考える文官が多い中で、唯一曹操の迷いを断ち切ったのが荀彧だった。

戦いに絶対というものは決して無い。確かに今戦うのは不利だが、時を伸ばせばもっと不利になる。一か八かの賭けに出ることになるが、今こそバクチをうってでも袁紹に攻め込むべきである。

戦いは兵の数ではない。

曹操と袁紹とでは、すでに戦う前から十勝十敗の勝負がついている。

袁紹は、見かけばかりを重要しているが、我が君は自然体を重要視している。これ道の勝利

袁紹は、朝廷に歯向かって戦いを挑むが、我が君は、皇帝を有している。これ義の勝利

袁紹は、あいまいな組織運用をしているが、我が君は、厳格である。これ治の勝利

袁紹は、猜疑心が強く心が小さいが、我が君は、度量が大きい。これ、度の勝利

袁紹は、決断できないが、我が君は、謀はまず実行にうつう。これ、謀の勝利

袁紹は、肩書きで人材を集めているが、我が君は、才能で人材を集めている。これ、徳の勝利

袁紹は、讒言を聞き入れるが、我が君は、讒言を聞き分けることができる。これ、明の勝利

袁紹は、善悪の判断があいまいだが、我が君は、法を持って実行している。これ、文の勝利

袁紹は、用兵の方を全く理解していないが、我が君は、神のごとく兵を操る。これ武の勝利

故に、戦う前から、廟算して勝つとは孫子の言葉だが、すでに、十戦十勝しているわけだから、こと戦いに負けるわけがない。

こう、曹操を勇気づけ、躊躇していた袁紹攻めを主君に決断させたのが、荀彧だった。

戦いとなると、曹操は、その神業の如き用兵術と謀略、そして、速やかな決断により、短期の間に袁紹を滅ぼすという奇跡を起こした。

ハプスブルクのマリア・テレジアの王佐カウニッツは、仇敵フランスとの同盟を成功させ、プロイセンとの決戦を女帝に献策する。これも、マリア・テレジアがプロシアとの決戦を熱望していたことを成功させるために思慮遠謀のかぎりを尽くしたという点では、荀彧と合い通じるものがある。

ただ、いかに優れた王佐の臣がいたとしても、君主が聡明でなければ、彼らに活躍の場はない。

よく聞き、よく見ることを、聡明というが、主君にとって必要なのは、道理に叶った決断力だと思う。

コメント(18)

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[2] mixiユーザー 12月10日 21:49

＞完顔玲玲＠呂尚さん

ハプスブルクの臣下のほとんどはプロシアとの戦いに消極的だったそうですけど、カウニッツはマリア・テレジアをよく支えましたね。

結果として戦いには勝利できませんでしたが、ハプスブルク帝国の黄金時代を築いたのは、旦那のフランツ・シュテファンとの二人三脚のたまものですね。

[4] mixiユーザー 12月10日 22:56

＞完顔玲玲＠呂尚さん

たしかに、スペインは大航海時代とダブっていたとも言えますが、カトリック両王からスペインの全盛期が始まりますね。

[5] mixiユーザー 05月12日 12:18

荀彧は最初のところ袁紹を見捨てて、曹操についた理由は曹操が曹操の謀略と法律を重んじて社会の再建するこころだった。荀彧は曹操に多くの進言してた、曹操も聞き入れてた。十勝敗は郭嘉の話だったが、荀彧は曹操が袁紹に比べて四つの長所あると述べただけだった。曹操は最初から勝つつもりでいた。董承を殺した後、一ヶ月間で許都から出発して劉備をぶちのめした。劉備は戦わずに逃げたし、関羽は城を挙げて降参した。あそこまで袁紹の行動を把握できた。

しかし、廃止三公、丞相の官職の設置で荀彧は曹操との関係が壊れ始めた。曹操は全ての権力を自分自身のものにしたがってた。そのような乱世ではそれがいちばんよかった。その時から曹操は政治に関して殆んど董昭の話を聞いてた。復九州（河北すべて冀州、曹操の領地になる）、曹操が魏公に晋爵、全ては董昭の建議で荀彧が反対してた。

荀彧は漢朝に忠誠を誓う自身のイメージを壊したくなかった。もちろん彼も曹操の邪魔にならなかったと自覚してた。自分のその節を守るために自殺した。自分のやってきたことに遺憾も持ってなかったからそうできた。もちろん漢献帝は曹操の傀儡になることは既に一番いいオチだったのだ。そこは別に荀彧が何も間違ってなかった、荀彧最初から曹操に献帝を迎えることを強く勧めてた。献帝が許都に遷都したのはほとんど董昭の謀略だったけどね。

[7] mixiユーザー 05月12日 12:34

実際、北で烏丸を破ってから曹操は既に荀彧への信頼がそれ以前にくらべてかなりなくなった。曹操の権力は既に止められなかったし、曹操も戦争より朝廷の政局を考え始めた。

[8] mixiユーザー 05月13日 15:33

>>[7] ただ、曹家は、三代で滅び、晋王朝も長くは続きませんでしたから荀彧の意見もある程度正しかったかもしれません。

[9] mixiユーザー 05月13日 15:53

それは関係ない。曹操は荀彧より頭よかったし、ただ日ごろより多くの仕事してたせいで多くの問題を細かくまで考えられなかった。曹操の孫の曹叡が享楽主義者で大志もってなかったのは問題だった。曹叡自身は頭いいほうだったが。

そして、復九州と曹操の魏公晋爵は許都の朝廷の機能を空っぽにするためだった。すべての政務と軍事を河北に移すことだった。無能な人間に政治の邪魔して何のメリットもない、それは曹操の考えだった。天下の統一こそが一番大事、曹操の配下はほぼみんなそう思ってた。漢朝の死節を守ったのも荀彧だけだった。

代理尚書令の職から光禄大夫に昇進したあと、実際荀彧は朝廷から離れて何も出来なくなった。品位は低いが、尚書令こそが全ての政務を管理する要職だった。荀彧はあの仕事を１５年以上やってた。

[11] mixiユーザー 05月13日 16:56

>>[9] ここが日本と中国の違いなのかもしれませんけど、日本の場合は天皇の座を脅かした権力者はほとんどうまくいっていないですね。また、中国は、中央集権で皇帝に権力を集中させたほうが強い王朝になっていますけど、日本の場合は、中央集権よりも、中央の強い封建制のほうがうまく政治が機能しています。これは、国土の地形としての特質、地政学的な関係なんでしょうかね。

[12] mixiユーザー 05月13日 17:44

日本は島国だから、侵略されることもほとんどなく土地も小さい。実際源頼朝が幕府を開設した時点から、天皇の権力は特に空っぽになった。

[13] mixiユーザー 05月13日 18:10

>>[12] 昔から日本はネトウヨと一緒で、天皇を味方に付けたがるんですよ。また、日本は島国と言うよりは、山がちで、侵攻が非常に難しい地形なんですよ。中国に例えれば、中国全てが江南と言った感じと考えればいいと思います。曹操も赤壁では山と川で負けたようなものですからね。新田義貞も鎌倉攻めに手こずりましたし、江戸幕府も長州攻めに失敗したのは地形によるものです。また、権威を弱めることをしても消し去ることをすると非常に反発が強い。天皇家、摂関家、鎌倉室町の将軍家、関東管領など、力を弱めても消し去るってことはしないんですよ。そういう点ではイギリスに近いかもしれないですね。

[16] mixiユーザー 05月13日 21:11

>>[15] フランスは何度も憲法を変えましたけどイギリスは前例はすべて法律で成文化はしていませんからね。日本と近い考え方ですよね。

[18] mixiユーザー 05月13日 21:22

>>[17] 古い権威は弱めるだけで破壊しないというのは日英共通の考え方だと思います。中国は、易姓革命にしても中華思想にしてもフランスに近い考え方なんじゃないですかね。

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