歴史　ちょっといい話コミュの女帝マリア・テレジアと夫婦愛

「双頭の鷲」、神聖ローマ帝国の歴代皇帝を世襲してきた。ヨーロッパ随一の家ハプスブルグ家の紋章。広大な領土を統治するためには東西に見渡す頭が二ついるということに由来するそうです。

　その、ハプスブルグ家を唯一女性が相続したことがありました。名前をマリア・テレジアといいます。

　なぜ、女性が相続したのか？それは、マリアテレジアのお父さんカール六世に男の子が生まれなかったんですね。

　タダそれだけです。

　とはいっても、オーストリアは、イギリスとかロシアといった田舎の王様や皇帝とはちょっとわけが違う。ヨーロッパで最も権威のあるローマ皇帝の位にもつかなきゃいけない家柄なんですね。

　そこで、いつまでたっても男の子が生まれなかったカール六世は、あせって、家訓をかえて、女の子でも相続できるように変更します。

　諸侯はこれを認めるんですが、それから程なくして、食中毒でカール六世は死んでしまうと、一気に諸侯は反旗を翻します。

　だって、この肖像画を見てください。色白の純真無垢な世間知らずのお姫様って感じですよね。

　じっさい、マリア・テレジアもまさか、自分がハプスブルグ家を相続するなんて思ってもいなかった。

　政治、財政、軍事などなど、その他いっさいの引継ぎをお父さんはせずにこの世を去ります。

　まして、娘に相続させようなんて、さらさら思ってもいなかったわけですから、帝王学も学んでいなかったんですね。

こうなってしまっては、国の内外から、それは、いいさらし者でした。イギリスやオランダなんかの新聞は、こぞって、マリアテレジアの皮肉をギャグにして記事にします。

服を剥ぎ取られ裸にされる風刺画を掲載されたり、

会議の席で小さくうずくまってしゃべることのできない女の子

とかとか、、。

　しまいには、やくざまがいに各国はオーストリアに戦争を仕掛けてきます。世にいう「オーストリア継承戦争」

　隣国プロイセンは早速、オーストリアの北部シュレジレンを占領。ほかにもいくつかの領土を占領されてしまいます。

　しかも、ハプスブルグ家領内でも、マリア・テレジアを君主として認めない国も現れます。

　ジ・エンド、、、と思うところですが、、、

　ここで、マリア・テレジアは、藁にもすがる思いで、ハプスブルグ家の領邦で、マリアテレジアを支持するか迷っていた、ハンガリーに目をつけます。ハンガリーはかつて遊牧民であったため、馬に乗るのが非常にうまかった。そのために、軍隊が強く。軍人が非常に尊敬されていたんですね。

　そこでマリア・テレジアはなんと、忙しい執務を終えたあと、夜中に乗馬学校に通い馬術の猛特訓をします。そして、ハンガリーの乗馬のお祭りに馬で登場し、非常に難しい馬の後ろ足二本で立つという技を見せ、その巧みな乗馬の技術を披露し、ハンガリーの民衆は喝采。

　
　
　巧みな乗馬の技術で尊敬を集めるというパフォーマンスは成功し、マリアテレジアは見事ハンガリー議会の支持を取り付け、ハンガリー王の地位をかつて同様手に入れることに成功します。

　ハンガリーが味方についたことで、形勢は逆転。軍事国家プロイセンが占領したシュレジエンはかえってはきませんでしたが、他に奪われた領土は回復し、戦争を終結させることに成功します。

　当時政略結婚が当たり前のヨーロッパでマリア・テレジアはなんと、恋愛結婚をします。
　恋愛のパワーとはすさまじいもの、生涯で生まれた子供は16人。また、夫のフランツ・シュテファンは、影にひなたにマリアテレジアを支え続けます。

　フランツ・シュテファンは、政治にはほとんど関与せず、自分で勝手にビジネスを始めるんですけど、これがなんと大成功。国家に多額の援助をするようになるんですね。
　
　また、マリアテレジアは、数々の政治改革を断行、自分に対する批判も認めないほどの独裁者だったんですけど、なぜか、誰からも好かれ、自然と尊敬される人柄でした。

　しかし、宿敵プロイセンからは多大な犠牲をはらいながらも結局シュレジレンの奪回に失敗。多額の財政赤字と国土の荒廃。

　そして、夫フランツシュテファンの死。

　晩年のマリア・テレジアは、喪服を身にまとい、保守的になっていったといわれ、静かにこの世を去ります。

　しかし、オーストリアに残した彼女の功績は計り知れないものがありました。

　女性が継いだハプスブルグではありましたが、それでもなお、神聖ローマ帝国の繁栄と絶頂期を作り上げた政治手腕。

　今でも、マリアテレジアが歌の歌詞に出てくると、オーストリア国民は、彼女に敬意を込めて、誰が決めたわけでもなく自然と起立するんだそうです。

　マリア・テレジアは、自らの政務を行う宮殿を建てました。シェーンブルン宮殿というのですが、この天井画に、帝国の物産や職人を描かせました。ワイン、岩塩、ガラス職人が主人公となって、宮殿の大広間の天井に描かれる。彼女は、王侯貴族ではなく、庶民こそが帝国の繁栄を支えるということを知っていたんですよね。

そんな、女帝も６３歳で生涯を閉じます。

マリア・テレジアの墓は、見つめ合う二人の男女が墓石となっています。

恋愛結婚をし仲睦まじく、共に支え合った夫フランツ・シュテファンと女帝マリア・テレジア。

戦争、外交、内政など、、、、多くの功績を残した彼女でしたが、、、、

最も彼女を象徴するものは、その輝かしい軍功でも治世でもなく、円満な家庭と夫婦の愛情だったということなんですよね、、。