歴史　ちょっといい話コミュのフランス革命

１　アンシャンレジューム

チベットで独立へ向けての暴動が起こっている昨今、それを応援しようという動きが、ヨーロッパで活発に起こっています。
　
　なぜ、ヨーロッパではあのように、独立を応援しようという動きが活発なのでしょうか？

　それは、やはり、今日紹介するフランス革命の影響が大きいのではないかとおもいます。

　フランス革命

　王政を否定し、特権階級を否定し、フランスのみならず、欧州中をすべて敵に回しながらも、庶民のための国家を作ろうという理想を実現したのがフランス革命だと思います。

　簡単に言えば、我々の歴史の中で、奇跡といわれるものの一つに数えてもおかしくない事件、小説みたいな出来事だと思っていいのではないでしょうか。
　
　

　また、現代のヨーロッパにおいても、たとえ弱い立場であったり、たとえ絶望的な状況であっても、それが、正しい行いであるならば、必ず成功するんだ。という考え方を持つ人が多いというのも、このフランス革命の影響が強いんだと思います。

　そういった意味でも、私はフランス革命が好きですね。

　フランス革命が起こる以前のことを、アンシャンレジューム（旧体制）といいます。
　
　革命前のヨーロッパはどんな状況だったのか。

　啓蒙思想という、自由だの平等だのと言った思想が、はやり始めたのも確かなんですが、一方では王様が絶対的な権力を持っている時代でもありました。

　ロシアには、エカテリーナ。オーストリアには、マリアテレジア。プロイセンには、フリードリヒ大王。そしてフランスには、太陽王ルイ１４世。
　
イギリスだけがこの中で、早めにゆるい革命が起こっていまして、王様はお飾りになっていたんですけど、それ以外の国々は、そうそうたるメンバーですよね。どこの国も絶対王政下の絶頂期を飾った君主たちです。
　
　この絶対王政華やかな時代において、革命で君主制ではない国が誕生していました。

　それは、アメリカです。

　フランス革命に先駆けて、フランスの啓蒙思想の影響を受けて誕生した国家といえると思います。

　ただ、アメリカは遠い遠い海の向こうですし、なんせ、イギリスの単なる植民地でしたから、それほどショッキングな事件ではなかった。むしろ、イギリス以外のヨーロッパの国々は、温かい目で接してくれまして、円満に誕生できた国家といえるかもしれません。

　ところが、フランス革命は、それとは随分と勝手が違う。ヨーロッパの、しかもその大国で起こった事件でしたから、人々に与えた影響は随分と違うものがありました。

　その辺のお話については、またの機会に、、、。

２　　テニスコートの誓い

まず、なんで、革命が起こったのか？一つは、国家財政の破綻、格差社会による貧困といった、経済的な要因ともう一つは、啓蒙思想という新しい考え方の流行があるのではないでしょうか。

　で、いきなり革命にはなりません。最初にこの状況を何とかしようと考えたのは、実は、国王でした。

　格差社会をやめて、税金を貴族や聖職者からも取ろうと考えた、、。

　でもって、それにいち早く噛み付いたのは、それら特権階級だったんですね。

　そして、こんな大事なことは国民の代表者を募ってみんなの意見を聞こうということになった。

　ここに、啓蒙思想の影響を受け、随分と賢くなった庶民の代表者が登場することとなるんです。

　この庶民の代表に意見を聞くことにより、一気にフランスの政体は急進的な方向へと進むこととなるのです。

なんか、日本の幕末に似ていますよね。幕府が不平等条約を結ぶにあたり、天皇に意見を聞こうとして、ついには、外様諸藩によって江戸幕府が滅ぼされてしまう。

　それと同様に、フランスの改革を行うのに、多くの身分の意見を取り入れようと三部会を開くことで、革命の火が一気についてしまう。

　どれくらい火がついたのか？

　アベシエイエスという革命家はこう言っています。

　「第三身分とは何か？」

　「それは、すべてだ！」

それぞれの身分に意見を聞くのが会議ではない。フランス国民の大部分を占め、もっとも、フランスの発展に汗を流したのは、第三身分だ。だから、この国には、もともと、そんな身分制度なんて必要ない。

　そういう意見が出てきてしまうんですね。

　あせった、国王は、議会を解散しようとし、議場を閉鎖します。それに対して、第三身分の議員はどうしたか？

　もちろん解散なんてしません。宮殿の中で大きな部屋がありました。そこに、議員たちは集まり、勝手に議会を継続します。そして不退転の決意を持ち、憲法が成立するまでは、決して議会は解散しないぞ！と宣言

　この部屋の名前がテニスコートであったためにこの宣言を

　テニスコートの誓いというそうです。

３　革命勃発

パリから遠く離れたベルサイユからも、民衆の騒ぎが聞こえてきました。

　国王は臣下に尋ねます。

「暴動か？」

「いえ、陛下、革命にございます。」

　なんかどこかで聞いたことのあるセリフですよね。

１７８９年７月１４日

　学生時代この日はフランス革命と覚えさせられたような気がしますが、詳しくは、この日が、フランスの民衆が武器があると思われている牢獄を襲撃した日なんだそうです。

「民衆よ武器を取れ！」

民衆の怒りは頂点に達しまして、バステューユ牢獄は陥落

このころから、パリの民衆は、ことあるごとに国王に干渉するようになります。

パンをよこせといっては、今度は、女が武器を取りベルサイユへ向かい、ついには、国王をパリへ連れられることになります。

世に言う、ベルサイユ行進です。

この二つの事件をこう表現するそうです。

「男はバスチーユを奪い、女は国王を奪った」

4　列国の干渉

何とか、コメントがあって、少しばかりほっとしている私です。

とりあえず、話の続きをします。

前回の書き込みにもありましたが、国王は改革に積極的でしたし、また、そのやさしい人柄から国民には人気がありました。

　ところが、その一方で、政治に関しては情熱を傾けるタイプではありませんでしたし、優柔不断で、強い決意を持って行動をするタイプではありませんでした。

　そしてついに、そのやさしさと優柔不断さが原因で、命取りになる事件が起こってしまいます。

　それは、国王一家が、フランスを捨て奥さんの実家オーストリアへ逃亡する事件が起こります。
　
　ところが、国境ほど近い町ヴァレンヌで、間抜けなことに、国王一家は、つかまってしまいます。

　この事件で、国民の国王に対する信頼は地に落ちることになります。

　それまで国王に人気があった分、かえって国民の多くは裏切られたと思いますものね。

　国王一家にとっては、万事休す。。。といったところでしょうか、。

　ところが、ここで、国王が挽回できる、これとないチャンスがやってきます。

　
　大国オーストリアとプロイセンが、フランス国王一家に危害を加えたなら、フランスに攻め込み、パリを廃墟にするぞ！と脅します。

　世に言う、ピルニッツ宣言。

それに対し、共和派の連中はどう行動に出たか？

なんと、列国を相手に戦争をしようと主張するんですね。。

このとき、国王はこう思ったでしょう。。。

（素人による革命軍が列国と戦って勝てるわけはない。ここは、戦争を承認し、列国に戦いで勝ってもらって、革命勢力を一気に蹴散らせるまたとないチャンスだ）

　ということで、国王は、共和派の意見を入れて、宣戦の布告を承認するんです。

　共和派、、、、なんと、世間知らずな素人たちなんでしょうね、、、。

5　Vive la France

そしていよいよ、革命戦争が勃発します。

　やはり、国王の予想したとおり、フランスは緒戦から連戦連敗。次々にフランスの各都市が占領されてしまいます。

　勢いづく王党派、崩れゆく革命の理想。。。

　そんな中、プロイセン軍は、ついに、パリから２００キロメートルのところにまで、到達していました。

　ブラウンシュバイク公率いるプロイセン軍は最新鋭の砲兵技術を持ち、統制の取れた軍隊。将軍から兵卒、装備にいたるまで、当時のヨーロッパでは最高のエリート集団です。

　対するフランス軍は、、、、。

　義勇兵といって、戦争なんてやったことのない、素人集団。

　　　　　フランス革命の理想を達成しよう！

　
そういう、熱い想いをもって、いても経ってもいられなくなり、やってきたボランティアです。

　そして、この最新鋭のエリート集団と寄せ集めの素人集団が激突することになります。

　ヴァルミーの戦い。

　この戦いは、８時間にも及ぶ、死闘を繰り広げます。

　なにごとにも劣る義勇軍でしたが、そんなフランスの義勇軍にもプロイセン軍に勝るものが一つだけありました。

　それは、絶対に革命を成功させるぞ！という、気迫でした。

　

そして、、、、、

　その気迫が、奇跡を起こすことになります。

戦闘が長時間におよび、多くの犠牲を出しながらも決してひるむことのないフランス軍、、。　

この状況に、たまりかねたプロイセン司令官ブラウンシュバイク公は、決死の覚悟で戦いを挑んでくるフランス軍とこれ以上戦えば、かなりの犠牲者が出るであろうと判断します。
　

そして、ついに、退却の命令を全軍に告げることになります。

　
　退却命令が出るや否や、プロイセン軍の兵卒も、その死を恐れない気迫のフランス軍の進軍に恐れをなしまして、、武器を投げ捨て、一目散に戦場から撤退したといわれています。

　気づけばフランス貴族までもが、赤青白の革命の象徴でした三色旗（現在のフランス国旗）を銃剣の先にしばりつけ、その勝利を喜びました。

　このときマルセイユから来た義勇兵が歌っていたのが、ラ・マルセイエーズ。

　現在のフランス国歌です。

　これって一大事件だと思いませんか？

　だって、民衆からなる義勇軍がプロ中のプロを恐れさせ撃退し、敗走させたのですから、、、。

　当時、このヴァルミーの戦いの勝利はヨーロッパ中に衝撃を与えました。

　あの文豪ゲーテにして次のような言葉を残しています。

「このとき、この場所から、新しい世界史が始まる。。。」

6　国民国家

ヴァルミーで勝利したフランス軍。プロイセン軍を撃退する強い精神力はどこから来たのでしょうか？

　現在、世界中に○○共和国という国家がいっぱいあります。むしろ、王様のいる国のほうが少ないのではないでしょうか？
　
　しかし、革命当時は圧倒的に君主国の方が多かったでしょう。王権神授説という考え方もあるように、王とは神であり、また、国家そのものだったんです。
　
　

　啓蒙思想で代表される考え方に、ルソーの説いた主権在民というのがあります。

　今じゃあ、小学生でも当たり前じゃん。と突っ込まれそうな考え方ですが、当時は、当たり前ではありませんでした。

　ここから、ちょっと難しいお話になりますが、、、。

当時のヨーロッパの宗教は、キリスト教です。キリスト教って一神教でしかも、他の宗教は絶対に認めません。

　そういうわけですから、王権神授説を主張する王様や聖職者の言う事は、絶対ですし、疑う余地がなかったんですね。

　でもって、啓蒙思想がはやったときに、百科全書ってのが編纂され、この百科全書を学んだ人たちのことを百科全書派っていいますが、彼らは、キリスト教以外の宗教があるってことや、絶対王政以外の政体の多様性を主張するんです。

　

　じゃあ、革命が起こったフランスはどんな国になろうとしていたのか？

　もちろん、絶対王政に戻りたいなんて風には考えません。

　我々一人一人はフランス人なんだ。我々一人一人は、フランスの支配者で、フランスの主権者なんだ。

　そういう考え方が生まれるんです。

　こういう、「国民意識」をもった国家のことを「国民国家」というそうです。

彼らにより組織された軍隊のことを国民軍というそうで、もっとも強力な軍隊のあり方だそうですが、国民軍が他の国々でも本格的に活躍するのは、これよりさらに１００年近く後のことになります。

7　ベルサイユのばら断頭台へ

戦いにより、諸外国の干渉を退けたフランス。。

　ここにフランスは、共和制を宣言。第一共和制が始まることとなります。。（ちなみに現在は第五共和制というそうです。）

　そして、国王一家の、命運は完全に尽きます。

　革命の大天使といわれた、美少年サンジェストの言葉です。

「人は罪なくして王たりえない」
「この男は、王として統治すべきか、それとも死ぬか、それ以外はありえない」

　なんだか、よく意味は分かりませんけど、、。聴衆をアジるには、非常に心に響く言葉だなあと思います。

　共和制においては、このように、聴衆の心に大きな印象を与える演説というのは非常に大きな力を持ちます。

そして、投票の結果。。

　　　国王の死刑反対360票　　　賛成361票

たったの一票差で国王の死刑が決定、、。

「さようならベルサイユ、さようならパリ、さようならフランス」

「私は罪なくして死ぬ、ただ、もし可能であるならこの血がフランスの幸福を固めるための血でありたい」

ここに、ベルサイユのばらマリーアントワネットと国王ルイ十六世が処刑されることとなります。

8　列国の反撃

軍事国家プロイセンに快勝し、国王を処刑したことで、勢いに乗る共和国。

　２００年近くにわたり、ヨーロッパで最強を誇ってきた名門ブルボン王朝の国王が、単なる住民の暴動で処刑されたということは、多くの国々を動揺させました。

　自分の国でも革命が起こったらどうしよう。。。。

　ヨーロッパの多くの国の君主がそう思いました。

　とりわけフランスに恨みをいだいていた国、、、。

　
　それは、イギリスでした。

　アメリカという膨大な領土を独立させるのにフランスが手助けしたからです。

　

　イギリスではすでに、絶対王政が崩壊し、立憲君主制になっていましたが、ヨーロッパの多くの国々で革命の恐怖に怯えている事に目をつけたイギリスの若き宰相ピットは、反フランス包囲網を提唱します。

　「対仏大同盟」

一方でフランス国内では、国王が処刑されたのをいいことに、政敵を次々と処刑に追い込む政治恐怖政治が行われていたんですね。

バンデーの農民反乱

ジャコバン独裁

保安委員会の設置

公安委員会の政治

最高価格令

革命暦の制定

農地改革

テルミドール反動

総裁政府の成立

王党派の反乱

、、、、、。多くの混乱と改革が次々と続く中。

エジプトでフランス艦隊がイギリス艦隊との戦いで全滅する事件が起こります。

この戦いで気をよくしたイギリスは、もう一度声高らかに第二回の対仏大同盟を宣言します。

　
　テルミドール反動でいったんは独裁政治に嫌気のさしたフランス国民でしたが、やはり、この難局を乗り越えるためには、かつて恐怖政治をしいたロベスピエールのような協力な指導者が必要だと考えるようになります。

そして、その、国民の期待にこたえるかのように、クーデターが起こり、フランスに強力な指導者が戻ってくることとなります。

　ブリュメール１８日のクーデター

　ナポレオンボナパルト

　ロベスピエールどころか、それをはるかに凌ぐ、とんでもない怪物が、この後のヨーロッパの歴史を作りあげていくことになります。

　

おわり