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ラテン(イベロ)アメリカ文学コミュのcimarronということば

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 もう二十年もまえに、「Rancheador」というキューバ映画を観たことがある。

 監督はSergio Giralで、製作は1975年というこの映画、とくに内容を新鮮におぼえているわけではない。


 ranchearという動詞は、野営する、集落をつくる、あるいは、(集落などを)襲う、という意味が付されている。
 rancheadorと名詞になったとき、つまり、「襲うひと」となったときは、どのようなコンテキストが与えられるか。

 過酷な農園での奴隷労働にたえきれず、ブラジルにしろキューバにしろ、黒人奴隷は逃亡する。
 逃げた黒人奴隷をcimarronと呼ぶ。
 逃亡奴隷は、うまく逃げとおせた場合、奥地に部落を築く。
 それをcimarron部落と呼ぶ。

 しかし白人側だって黙っているわけではない。
 犬をけしかけたりして、すぐさま逃亡奴隷を追跡・拘束する。
 徒歩で逃げる者と馬で追う者、たいていは黒人側に分はない。

 そのうまく逃げおおせた黒人奴隷をグループを組んで借り出しにいく者たちを、rancheadorと呼ぶ。


 永いこと品切れのままの岩波現代選書のR・メジャフェ『ラテンアメリカと奴隷制』は、表題のようにラテンアメリカの黒人奴隷制について詳しく、以上の背景めいたものにも触れられていたはず。

 ことほどさように、キューバやらブラジル、その他黒人奴隷を必要としていた地域では、黒人奴隷についての用語はおびただしく、一方、ふつうのメキシコ人に、rancheadorは何か、と訊いてもこたえられない。


 もういちど、繰り返します。
 cimarronとは、黒人逃亡奴隷のことを指す。

 だから、フアン・ルルフォの『ペドロ・パラモ』をはじめて読んだときには驚いた。
 cimarronが、逃亡家畜、と訳されていたからである(いま、手元に見つからないので逐語的にテキストを引用できないのだが)。

 黒人奴隷文化が存在しないメキシコでは(じっさいは、黒人奴隷もちゃんといたことになっているが)、cimarronが、奴隷とは結びつかず、ただ逃亡という項でのみ、家畜につながっている。

 cimarronということばには、南米やカリブ海では暗さ、過酷さが同居している。
 拘禁されれば、厳しい罰が待ち受けているからである。
 キューバ映画「La ultima cena」では、拘束された逃亡奴隷は、耳たぶを切り取られた(mochaoreja風)。

 しかしメキシコでは、cimarronとは、野生さやら爽快さをイメージさせられるらしい。
 じじつ、メキシコ人は、ジーンズのブランドなどでこのcimarronということばを感じる。

 ちなみに、このcimarronということばは、アメリカインディアンのクリーク語にて、simanoliと変化し、英語でseminoleと行き着く。


 もちろん米国の黒人奴隷も逃亡したわけで、かれらはセミノール黒人と呼ばれる。
 この「黒人ディアスポラ」のことは、ちょうど岩波の『図書』3月号に、越川芳明「メキシコの黒人難民の村から」というテキストが掲載されていて、もう一方からの事情に通じることになる。


 今回のこのテキストは、前々から綴ってみようかと思っていたのだが、直接には、マイミクさんが読んだというジェイムズ・リー・バークの「シマロン・ローズ」という推理小説に触発されたもの。

 「シマロン・ローズ」のシマロンはテキサス州のインディアン居住地区にある川の名称だとのこと。
 それこそ越川さんのテキストにかぶってきそう。

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