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ラテン(イベロ)アメリカ文学コミュのバルガス=リョサ『ケルト人の夢』アルファグアラ社

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 十五,十六世紀以来ヨーロッパは非ヨーロッパ世界へと貪欲な浸蝕を始めた。なにしろ非ヨーロッパ世界の人たちを人間であるとは認めないような徹底ぶり。しかしながらヨーロッパの近代化においては自己批判的な動きも並行。「征服」が始まるとほぼ同時に、それを批判する動きがスペインから生まれる。もちろんその全体を眺めれば貪欲な浸蝕にくらべて自己批判的な動きは微々たるものといわざるをえない。それでも連綿と自己批判はつづいたのである。バルガス=リョサが描き出すのはコンゴとブラジル・東北部への収奪の厳しい批判であった。著者のこの執念には圧倒される。この調査は歴史から喪われようとしているものに光を当てた。そしてアイルランド。つぎの三つの国は似通っているとよくいわれる。メキシコ、朝鮮、それにアイルランド。ニホンにとっての朝鮮のような意味を、イギリスにとってのアイルランドは持たされている。これら三つの国は終始、大国の圧力に屈しながら歪んだ歴史を辿った。アイルランドなしに大英帝国は成立せず。カリブ海なしに大英帝国は存在せず。インドなしに大英帝国は歩をすすめることはできなかった、などなど。対外的と同様に、歴史的には国内植民地というのも存在する。しかも大英帝国とアイルランドとはおなじく白人であり、ただ文化圏がまったく異なっていた。ただその故に惨い扱いを受けるようになるとは。コンゴとブラジルの活性化された収奪・浸蝕を目の当たりにして主人公は覚醒し、アイルランドの歴史やら現状にアイデンティティを見いだすに至る。ただあまりにもナショナリズムが生々しいなかでの第一次世界大戦を前にして主人公の立ち位置は微妙であり、過激化すれば反撥が倍増してくる状況にあったことが哀しい。歴史の陥穽を渡りきることを強いられたがゆえに、その証言性は著しいものがあり、じっさい、公に認められもした。しかしこの陥穽には出口がなかった。だからこそ哀しさもつのる。さて、ヨーロッパ現代文学に刺戟されてバルガス=リョサはナラティヴの実験姓から始めていろいろな試みをペルーの地で実践・発展させることを試みた。ところがナラティヴの織り方にすっかり精通し、巧みな語り手となる。でも弱者やら歴史の暗部に埋もれかかっているテーマを掘り起こしてくることにも秀でている。この作品にもそれは言われることだが、おなじトーンで触れるならば『楽園への道』をあげなくてはならない。(もちろんここでおなじく触れておくべきことはナラティヴでは興味深く、視点にも冴えが見られるというのに、エッセイとか政治的なテキストになると、とたんに凡庸さに墜ちるということ。とても残念。ただしこれも昔、サルトルらに心服していながら。キューバなどの問題から急角度に考えを旋回させてしまったということは残念。)

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