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高木 竜馬:RYOMA TAKAGIコミュのスカラシップレポート(2010年 8月度 & 9月度)

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          エンゲルバルト氏(右)     ホームパーティ

                2010年 8月度 & 9月度
                          高木 竜馬

 北ドイツの人口52万の大都市ハノーファ近郊にある、観光客も多く訪れる由緒ある田舎街ゴスラー。ここで毎年開催される音楽祭に付帯したアリエ・ヴァルディ教授のマスタークラスで 8月下旬の半月間勉強しました。ゲリット・ツィッターバルト教授の4つの時代、すなわちバルトロメオ・クリストフォリ(フィレンツェ=スカルラッティ)、アントン・ヴァルター(ウィーン=ベートーヴェン中期)、ジョン・ブロードウッド(ロンドン=ブラームス)、セバスティアン・エラール(パリ=リスト・ショパン)のフォルテピアノのレプリカによる古楽器レッスンもたいへん興味深いものでした。

 ホストファミリーは、地元で有名なお医者様兼モデルのクリストフ・エンゲルバルト氏。ご自宅のピアノは、きちっと調律された C. ベヒシュタインで、その素晴らしい楽器で毎日練習し放題の、最高の環境を与えて下さいました。晴れた日には、自転車をお借りしてレッスン会場の「クライスハウス」へ。その帰りはいつも、ゴスラーの美しい街並に魅せられて自転車で辻々を走り廻りました。また、エンゲルバルトさんは、毎晩のようにレストランに連れて出して下さり、ホームパーティやホームコンサートまで開催して下さいました。マスタークラスでは受講生コンサートがあり、プロコフイフの変ロ長調の「戦争ソナタ」を弾きました。最年少ということで地元新聞の取材を受けて1頁の半分くらいの記事になりましたが、いよいよ帰国の日に、新聞の切り抜き集をプレゼントして下さいました。

 ピアニストでは、アレクセイ・ガブリリュクさんと佐藤卓史さんが参加されていました。プロの完成度の高い演奏に、鳥肌が立ったり陶然としたりで大感動でしたが、それでもヴァルディ先生の素晴らしい言葉によって、レッスンがきちっと成立するのです。その結果、心はより激しく揺さぶられるようになり、密やかに心に染み入るような更なる自然さが備わっていきます。ヴァルディ先生、恐るべし。先生の一つ一つの言葉は、演奏者の霊感へ直接間接に訴えかけ、感覚と理性の両面から、演奏本能を呼び覚まします。

 先生曰く、「古典派時代の Adagio には、テンポは揺れて流れるという意味も含まれていて、すべての音をチューニングをするようにして、テンポを動かすことが可能なのです」(ハイドン e-mollソナタ2mov.)「3楽章は、思わず微笑むほどに楽しかった。それならば、1楽章をかなり厳格なソナタ形式に仕上げても、曲全体としてハイドンの洒脱さは失われないでしょう」(ハイドン e-mollソナタ3mov.)

 「ソナタの形式的発展の側面を考えれば、基本的なテンポは変えたくない。でも音色の変化だけでは不満足だ。ならば、ペダルの量を変えるのが最適な手法ではありませんか」「ペダルは、使い方によって偉大なる効果を生み出します。ペダルを使う時の合い言葉はひとつ。『その効果を、非常に丹念に吟味する』です」「メロディにおいて、次の音へ距離がある時は音の間の距離を弾くように。同じく休符がある時は休符を弾くように。音として出てこない箇所にこそ、あなたの魂を込めなさい」(ショパン h-mollソナタ1mov.)「心の中で弾きなさい。周囲にまるで気付かれないように、一人静かに気持ちを高揚させているかように。心の中では情熱的に、しかし決して表には出さないように。あるいは心は涙で濡れているのに、顔は微笑んでいるように」(ショパン h-mollソナタ3mov.)「体全体から、『音楽を表現するという意識の光』が出ていなくてはなりません。あなたの動作全てが、音楽を表現していなければなりません。最後の音を弾いた後の腕の上げ方ひとつまで、音楽が生きづいているように」(ショパン h-mollソナタ4mov.)

 「ピアノは、もちろん歌う楽器であり、しかし同時に打楽器でもあり即物的機械的な性格さえもっています。ピアノの、どの側面を主役に抜擢するかは、作曲家の意図と演奏者の美意識に委ねられています。どれかひとつに固執するのではなく、臨機応変に対応することによってピアノの魅力を大いに多面的に引き出すことができます」「今、有機と無機が戦っています。ところがこのソナタにおいては無機がしばしば勝利を収めます。この曲が『戦争ソナタ』と称される所以です」(プロコフィエフB-durソナタ1mov.)「人間の心と体は不思議なものです。本能が反応さえすれば、技術的な困難など微塵も感じないものです」(プロコフィエフ B-durソナタ3mov.)

 「作曲家の心は、細部に宿ります。ですから、私たち演奏家は音楽の細部に、すべての心を集中させることが必要なのです。『豊かな歌心』というのは、細かい音符の中からもしっかりと和声が聞こえてくるような、細部に対する心の働きが生み出すものです」「人間が持っている潜在的なパワーを、爆発的に解放しなさい。確かにそのピアノが持っている音量の限界点は把握すべきでしょう。しかし同時にその限界を引き出す能力こそが必要なのです」「テンポの動きは、人間の脈拍のようです。脈拍は基本的には同じテンポを刻むが、時として速さが大きく変わります。でも、それは変化に対応する健康的な心拍であって、病気ではないのです」「演奏に至る最後の最後の段階においては、演奏家の純粋な感性と豊かな想像力が求められます。多くの聴衆は、その感性と創造性が織りなす瞬間こそを、待ち望んでいるのです」(チャイコフスキー G-dur コンチェルト )

 「歌うような場所では、揺れて流れるテンポによって大いなる感動が得られます」「愚かな指揮者は、オーケストラに合わせて棒を振って遅れを生じさせてしまっている。優れた指揮者はオーケストラより先に棒を振ることで先頭に立ち、オーケストラを統率していきます。ピアニストも、頭では今弾いている場面より先を把握して、次に起こる音楽を予測してなくてはいけない。しかし心は、今弾いている場所で大いに歌わなければなりません」「楽譜の中に隠されている作曲家の意図を探す練習をしなさい。その為には、その作曲家の全てのジャンルの楽曲を聴くこと。あなたの知識のレパートリーを広げていきなさい」 (公開レッスンを見学して) 

 「コンクールは、本当に今受けるべきかを、全てのしがらみを捨てて考えてみる必要があります。そしてコンクールには、短い時間では到底語り尽くせない明と暗の世界があります。10代後半の今の大切な時期にコンクールを受けるべきなのか、それとも急がずにレパートリーを広げながら、勉強とコンサートに専念するべきなのか。この二つの相反する命題を両立出来れば立派だが、そのような人は世の中にいません。残念ながら若いのに先を急いでしまって、後で取り返しがつかなくなった人を沢山知っています。私が本当に言いたいのは、Ryoma はあなたの才能を焦らずにしかし確実に、そして大きく育てるべきだということです」「ハノーファへは来ないのですか? ハノーファでは、私は Ryoma を生徒としてではなく芸術家として扱うでしょう」(ガラパーティにて)

コメント(2)

とても素晴らしい内容に、感動でしたぴかぴか(新しい)何度も読ませて頂きましたグッド(上向き矢印)手(チョキ)また、訪問して、再度読ませて頂きますグッド(上向き矢印)
また、レポート、とても楽しみにしていますウインク
 ○ HIME さん

 いつもいつもコメントを頂き、有難うございます。

 ヴァルディ先生は、お顔はおっかないですが(爆笑)、とても
優しい先生で、ピアノを弾くのが楽しくて仕方がなかったようです。
数々の珠玉のお言葉には、私も感動しました。早速レッスンで
拝借させて頂いております。

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