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Arbeeの短編集コミュのある朝 (短編小説 cerpen)

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1.始まり

いつの間にか 私は、この家にやって来た。

 この家は、老夫と老婆が住んでいる。老夫は、説教師で、老婆は、人の病を治す医者だ。かつて、この家には、老夫と老婆だけではなく、あと二人がいる。長男が、夢を追って、遠い国へ行った。長女は、老婆が営んで来た治療室を継ぐために、他の町に行って、大学で、勉強している。

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2.朝の音 と 匂い

 今日は、いつもの朝と同じように、台所から、物音がして、老婆は、石油コンロに火を付けて、何かを作ろうとしている。私の耳には、このように聞こえる『クリタック・クリティック』。私の言葉は、老人と老婆が決して分かりはしない。だから、『クリタック・クリティック』と私には、聞こえても、彼らに、どのように、聞こえるか分からない。
 
 そして、雄鶏は、時を告げるかのように、鳴き始めて、また、他の家の雄鶏も次々と、鳴いている。静かな朝は、壊れた。私の耳には、『クククルユーッ、クククルユーッ」と聞こえる。私の耳は、家のどの動物よりも、とても、鋭いので、夜は、眠れない。それは、殆どの生き物が、音をたてないので、周りは、シーンとして、少しでも、物音がすれば、なぜか、不審なモノとして、自覚され、自然に、筋肉が緊張して、起き上がってしまう。そして、また、自然に、『グッグッグッ』というような声を出すのである。私が出している泣き声は、『ワンワン』と聞こえることもあるけど、でも、どう聞いても、私には、『グッグッグッ』としか聞こえない。不器用だけなのかもしれない。
 
 朝には、また、新鮮な匂いが漂っている。獣や鳥や竹や緑の木々は、起きた時の匂いは、独特である。人には、感じることが出来るかどうか 分からないが、私には、分かるのだ。そして、老父と老婆の心臓の弱い音がドキっドキっとすこしずつ間隔が縮まって速くなるのも、聞こえ、彼らの肌からも、湯気のようなものがブンブンと漂い、私の鼻にやってくるのだ。このように、朝には、生き物が、大地がおき始めた時期である。そして、このような時に、いつも、台所から、老婆が、何かをして、『クリタック・クリティック」という音がするのだ。

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3.過去が聞こえる 過去がにおっている

 その後、脈の間隔が、縮まって、その音がますます速く聞こえる老夫が起き、彼は、静かに、前の庭に向かって、歩いた。ホウキの音が聞こえた。木が疲れて、葉っぱを落とす。落とした葉っぱは、物凄い数である。私は、かつて、いた長男のように、算数が得意ではないので、少ない と 多い しか言えないのだ。その数は、長男がいつもやっている数字のように、視覚的に見えるのではなく、音として、耳にやってきて、匂いとして、鼻にやってくるのだ。
 
 老夫が丁度、掃き終わった頃、山の方に向かう車の音がし始めた。一つ、二つ、多い。車の中には、鶏や野菜や山羊などが入っている。山羊の糞の臭い匂いがそう教えてくれる。私のような動物になるのも、便利なこともある。たとえ、見えなくても、過去が、聞こえる。過去が、におっている。
 
 そして、太陽も、雄鶏の鳴き声に、起されたかのように、山がある方と逆方向の空は、真っ赤になって行く。徐々に、明るさを増して、やっと、眩しいのが出て来た。私は、この眩しくて、強烈な光があまり好きではない。肌が焼ける感じがして、毛の間に、変な汗と変なにおいが出て来ている。人には、見えない。匂いは、見えるものではないから当然なことだが。
 
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4.手紙

 老夫は、実は、酷い皮膚病を患っている。長男が、遠い国に行ってから、ますます、酷くなった。長男は、子供の時から、鼻の病気をしていて、よく熱を出した。だから、長男の遠い国へ行くことも、老父の誇りでもあるが、心配の種でもある。しかし、長男は、敏感で、鈍感の男だから、こっちの状況をそのまま書くと、長男の勉学を妨げることになるのではないかと考えて、老夫は、励ましの手紙や、聖書の引用などしか書いていないのだ。

 手紙を送ったにも関わらず、長男は、手紙を一通も返事してくれないのだ。全く、恩知らずの長男。長男とは、血が繋がっていないから、別に、私の問題ではないけど、しかし、私のことを丁寧に世話してくれる老夫は、いくらなんでも、とてもかわいそう。

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5.老夫婦の雑談

 今日は、庭の仕事が終わって、老夫は、応接間に、くつろいで、老婆が夜明け前から、ずっと、『クルタック・クルティック』と音を立てて、用意したバナナ揚げととっても甘いお茶を飲みながら、老婆と雑談している。今度は、長女の話である。
 長女は、歯の医者を目指して、大学で、勉強している。人という生き物は、全く、贅沢極まりない。歯のことさえ、ちゃんと医者もいる。これから、私が死んで、人の時で、二百年後、もしかしたら、毛の医者という職業もあるかもしれない。人になるのも、面白いかもしれないから、生まれ変わったら、人になってやる。

 老婆と老夫は、過去を振り返って、長女の話をしている。長女は、どうやら、わがままな女の子で、長男と違って、勉強があまり好きではないようだ。しかし、国の大学に入れることは、正に、奇跡だと老婆が言ってる。また、長男も、体が少し太いのに、軍隊高校に入れる奇跡の話もしている。彼ら老夫婦にとっては、人生は、奇跡のようだ。それは、彼らの出合いも全くの奇跡だからかもしれない。奇跡は、また奇跡を呼ぶのだ。

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6.メシ と 膝元の世界の平和

 朝の文字通りのスイート・ティータイムが終わってから、私の朝ごはんのタイムである。朝ごはんは、いつも、老夫がやってくれる。この老夫に、恩返しをしたいと思っている。それは、私が病気の時に、老夫が、鶏肉のレバーを口に入れて、細かく砕いてから、スープ御飯に入れて、私にくれたからだ。私にとって、メシを食わしてくれる者は、主人だ。しかし、この老夫は、少し特別な感情を抱く。また、訳を話すと、普通、人は、自分の分身を作るために、ペットを飼ったりする。だから、ペットが、病気になると、飼い主が、泣き出したり、慌てて、ペットの医者に連れて行ったりする。その訳をまた話すと、自分の分身が壊れるのを怖いから、そのようなことをするのだ。しかし、この老夫は、違う。彼は、そのような念を抱いていない。彼にとって、私は、ただの動物に過ぎない。それは、彼が信じている宗教は、そう教えているからだ。しかし、それでも、彼は、私に、丁寧にえさをくれたのだ。だから、もしかしたら、この老夫は、私に、愛というものを言葉無き言葉で、説教しようとするかもしれない。それは、ともかく、この老夫に、恩返しをしたいと思うのだ。

 朝メシは流石に、美味かった。でも、老夫に、構ってもらうために、最初は、食欲が無いふりをして、甘えたのだ。甘えた時に、『グーッグーッグーッ』という鳴き声が私に、聞こえる。そうしたら、老夫が、檻から、私を出してくれて、家中を走り回っている。

 この家の床は、相変わらず、冷たい。セラミック製のタイルのようだ。この床の上に、寝ていれば、体温が奪われて、風邪を引くかもしれないけど、走り回るには、最適だが、穏やかな老婆は、すぐさま、怖くて鬼のような老婆に変身する。老婆は、ホウキを以って私を追いかけたが、その時に、安全な場所がタダ一つ。老夫の膝である。老夫は、優しく私のことを構ってくれるのを見て、老婆も、怒る気がしなくなる。老婆にとって、どんなに、老けても、老夫は、ダンディーで、格好いい。自分の格好悪いところを愛する人の前に見せるのは、女心に反するから、どんな怖い鬼婆でも、大人しくなるのだ。私と同種で、反対の性別の生き物ーメスーには、無い心だ。これだから、生き物は、皆、人に成りたがっているのか。まぁまぁ、それはそれで。とりあえず、老夫の膝には、世界の平和である。

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7.音 と 匂い の 幸せな世界 へ

 老婆は、一応、元病院の医者だ。しかし、県知事の命令で、看護学校の先生に命じられて、午前中だけ、学校に行った。この国は、毎日、ネズミのように、人が生まれて来るのに、老いぼれた人を使うとは、いい加減に感じる。
 
婆は、人の時で言えば、8時に、学校に行く。老夫が車を運転して送ってくれる。車は、家の敷地を出たら、一応、一段落して、また、寝るのだ。この時間は、匂いも音もほどよく快適で、私がいつも寝てしまう。人が言う夢が無いから、快適匂いと音の世界に、包まれて、幸せである。

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