朝日新聞にて加藤典洋さんと鴻巣友季子さんが、「ノーベル賞を機に 翻訳文学を考える」というテーマで対談、それなりに刺戟的。
ノーベル文学賞と海外翻訳文学なるものはいかなる違いをもっているのか。
ノーベル文学賞のためには、まずはよいスエーデン語訳が欠かせないというが、スエーデンは世界のなかでも周縁国のひとつに属するために大国中心の見方とは異なったものが出せると思うが、そのスエーデンという文化的にも優れた国においても翻訳といういわば＜運＞に左右されるものなのだろうか。
ならばいっそのこと、ノーベル翻訳文学賞とか名をかえたほうが、へたに普遍性なるものを標榜しなくなるだけよろしいのではないか。
そんなことを考えたけど、がたがたいうより、まずは対談を読んでみなくては。。。
・・・・・・・・・・
ノーベル文学賞が６日、発表された。例えば日本の文学が賞の選考過程に乗るには、翻訳されることが必須の条件になる。発表を機に、文学と翻訳の関係について、文芸評論家の加藤典洋さんと翻訳家の鴻巣友季子さんに語り合ってもらった。
◇
■訳されて豊かになるのが世界文学
――今年のノーベル文学賞は、スウェーデンの８０歳の詩人、トーマス・トランストロンメルに決まりました。日本では、１９９９年に詩集『悲しみのゴンドラ』が訳されています。
鴻巣友季子 毎年のように候補にあがってきた人ですね。
加藤典洋 去年、マイケル・ハイムというミラン・クンデラの訳者でＵＣＬＡの教授の話を聞く機会があったんです。スウェーデン・アカデミーの人と会った際、「ノーベル賞をとるには何が一番大事ですか」と尋ねたら、たちどころに「いいスウェーデン語の翻訳があること」と言った。
ドストエフスキーが何度も訳され直す。そのうち訳者、読者の意識が変わってくる。その果てに、「このドストエフスキーはカフカに影響を受けているよね」ということが起きてくるとも言った。訳者がカフカの影響を受けているので、こういう逆転現象がおきるわけで、翻訳とは実に面白い「生の営み」なんですね。
世界文学って言うと大げさな感じがするけど、もっと小さな場面でいろんな言語の間で文学は、「生きている」。そういう場所から見たら、ノーベル文学賞なんて、ある意味ちっぽけで、でも使い勝手がよく、人が喜べたりもするもの。それぐらいに考えておいていいんじゃないかしら。
鴻巣 一つ言えるのは、ノーベル文学賞にからむ文学は、要は翻訳文学だということ。英語やスウェーデン語で書かれたか翻訳されたもの以外は、対象にもならない。デイヴィッド・ダムロッシュは『世界文学とは何か？』の中で、世界文学とは翻訳文学のことである、良い翻訳文学とは翻訳で失われるのではなくて豊かになるものという。それが世界文学だ。翻訳して通じなくなるものは、国民文学、ご当地文学だと（笑い）。
加藤 川端康成が訳者のサイデンステッカーに、ノーベル賞の賞金を半分受け取ってくれといったけど、そういうものですね。
■村上作品が翻訳と日本語を変えた
――それでは、今回も有力候補と言われた村上春樹の文学についてはどうお考えですか。
加藤 村上がデビューした時、僕は日本にいなかった。８２年に戻ってきて文学に詳しい友人に、おもしろい人が出てきたかと聞いたら、そのうちの１人が村上でした。ほどなく『羊をめぐる冒険』を読んで、やっとまともなものが出てきたな、世の中、変わったな、と思った。
僕は高校２年の時に大江健三郎の『日常生活の冒険』を読んで、うわあ、おもしろい、と大江の追っかけになった口です。村上を読んで、いままでにない、どきどきわくわくするものが大江の次にもう一回きている、という感じを受けた。村上春樹が大江の延長で出てきたこと、それははっきりしている。誰が見てもそうだと思う。
鴻巣 村上春樹の人気は知っていたけど、外国文学に携わる人間にとっては、村上の文体は警戒心を起こさせる。翻訳文体というものに似て非なるものだから。だから大学を卒業するぐらいまでは読んでいなかった。実際は翻訳文を漠然と想起させる文体で、日本文学の文体を高度に批評したものだったと、その後２０年かけてわかった。
私にとっては、作家より翻訳家として大きい。明治期に翻訳が日本語を作ったといわれるが、それをもっともわかりやすく現代的に体現している作家であり翻訳家である。私も同じ時期に翻訳をやってきたから分かるが、２０年以上前には書けない文章が、今は書ける。「彼女、彼」の連発は、読者にも受け入れられなかった。
加藤 翻訳の文体は、村上で変わった？
鴻巣 変わったと言いますか、翻訳文体が日本語に同化した。一方、今は若い作家の方が、人称代名詞抜きでは書けないとか、日本の作品の方が翻訳文体化している。翻訳文体のほうがいまやこなれた感じ。
加藤 谷崎潤一郎は初期の自分の文章を読み直してみて翻訳文調なのに驚いた。そこで「日本語って何なんだろう」と思って『文章読本』を書いた。そんな大きな流れの中でみると、面白い話。
■世界の翻訳事情
――村上以外の作家の翻訳事情は。
鴻巣 台湾とか韓国は日本のエンタメ小説が訳されている。東野圭吾とか。台湾だと自国の文学より翻訳文学の方が売れるくらいだとか。書評もたくさんでる。
――アメリカの場合はどうでしょうか？
鴻巣 アメリカは、０８年にスウェーデン・アカデミーの事務局長が怒ったじゃないですか。アメリカはろくに翻訳もしないから、文化的島国だと。孤立してるって。アメリカ人はノーベル賞をとれないと解釈されるくらいのことを言ってしまって大騒ぎになった。
昨年のアメリカの出版翻訳の比率って３％くらい。日本でも８〜１０％くらい。アメリカの翻訳出版って学術書と聖書関係とコミックがちょっと。娯楽小説を一般人が楽しみに読むために日本みたいにバンバン訳されてるのはあり得ない。ただ、最近アメリカは結構、小さな翻訳出版社ががんばっている。ロシアに「月刊外国文学」があるけど、次が日本大特集らしい。岡田利規とか石田衣良が入っているかと思うと内田百けん（けんは門構えに月）、横光利一がやたらと手厚く訳されていたり。なかなかこれは日本の現代に対応した目次でしたね。
加藤 ラインアップを聞くと、いい。内田から横光、岡田までで一冊。日本人が見ても結構おもしろいなと思うよね。ロシアの人との同時代性を感じる。円城塔とかも、入っていいかな。
鴻巣 そうそう、青木淳悟あたりも入ると面白いと思いますね。「月刊外国文学」の編集長は自身も翻訳家なのですが、彼が訳しているものは日本とあまり変わらない。ポール・オースターとか。音楽の世界と一緒で、すごく同時代性が強まっていると思う。
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ノーベル文学賞と海外翻訳文学なるものはいかなる違いをもっているのか。
ノーベル文学賞のためには、まずはよいスエーデン語訳が欠かせないというが、スエーデンは世界のなかでも周縁国のひとつに属するために大国中心の見方とは異なったものが出せると思うが、そのスエーデンという文化的にも優れた国においても翻訳といういわば＜運＞に左右されるものなのだろうか。
ならばいっそのこと、ノーベル翻訳文学賞とか名をかえたほうが、へたに普遍性なるものを標榜しなくなるだけよろしいのではないか。
そんなことを考えたけど、がたがたいうより、まずは対談を読んでみなくては。。。
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ノーベル文学賞が６日、発表された。例えば日本の文学が賞の選考過程に乗るには、翻訳されることが必須の条件になる。発表を機に、文学と翻訳の関係について、文芸評論家の加藤典洋さんと翻訳家の鴻巣友季子さんに語り合ってもらった。
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■訳されて豊かになるのが世界文学
――今年のノーベル文学賞は、スウェーデンの８０歳の詩人、トーマス・トランストロンメルに決まりました。日本では、１９９９年に詩集『悲しみのゴンドラ』が訳されています。
鴻巣友季子 毎年のように候補にあがってきた人ですね。
加藤典洋 去年、マイケル・ハイムというミラン・クンデラの訳者でＵＣＬＡの教授の話を聞く機会があったんです。スウェーデン・アカデミーの人と会った際、「ノーベル賞をとるには何が一番大事ですか」と尋ねたら、たちどころに「いいスウェーデン語の翻訳があること」と言った。
ドストエフスキーが何度も訳され直す。そのうち訳者、読者の意識が変わってくる。その果てに、「このドストエフスキーはカフカに影響を受けているよね」ということが起きてくるとも言った。訳者がカフカの影響を受けているので、こういう逆転現象がおきるわけで、翻訳とは実に面白い「生の営み」なんですね。
世界文学って言うと大げさな感じがするけど、もっと小さな場面でいろんな言語の間で文学は、「生きている」。そういう場所から見たら、ノーベル文学賞なんて、ある意味ちっぽけで、でも使い勝手がよく、人が喜べたりもするもの。それぐらいに考えておいていいんじゃないかしら。
鴻巣 一つ言えるのは、ノーベル文学賞にからむ文学は、要は翻訳文学だということ。英語やスウェーデン語で書かれたか翻訳されたもの以外は、対象にもならない。デイヴィッド・ダムロッシュは『世界文学とは何か？』の中で、世界文学とは翻訳文学のことである、良い翻訳文学とは翻訳で失われるのではなくて豊かになるものという。それが世界文学だ。翻訳して通じなくなるものは、国民文学、ご当地文学だと（笑い）。
加藤 川端康成が訳者のサイデンステッカーに、ノーベル賞の賞金を半分受け取ってくれといったけど、そういうものですね。
■村上作品が翻訳と日本語を変えた
――それでは、今回も有力候補と言われた村上春樹の文学についてはどうお考えですか。
加藤 村上がデビューした時、僕は日本にいなかった。８２年に戻ってきて文学に詳しい友人に、おもしろい人が出てきたかと聞いたら、そのうちの１人が村上でした。ほどなく『羊をめぐる冒険』を読んで、やっとまともなものが出てきたな、世の中、変わったな、と思った。
僕は高校２年の時に大江健三郎の『日常生活の冒険』を読んで、うわあ、おもしろい、と大江の追っかけになった口です。村上を読んで、いままでにない、どきどきわくわくするものが大江の次にもう一回きている、という感じを受けた。村上春樹が大江の延長で出てきたこと、それははっきりしている。誰が見てもそうだと思う。
鴻巣 村上春樹の人気は知っていたけど、外国文学に携わる人間にとっては、村上の文体は警戒心を起こさせる。翻訳文体というものに似て非なるものだから。だから大学を卒業するぐらいまでは読んでいなかった。実際は翻訳文を漠然と想起させる文体で、日本文学の文体を高度に批評したものだったと、その後２０年かけてわかった。
私にとっては、作家より翻訳家として大きい。明治期に翻訳が日本語を作ったといわれるが、それをもっともわかりやすく現代的に体現している作家であり翻訳家である。私も同じ時期に翻訳をやってきたから分かるが、２０年以上前には書けない文章が、今は書ける。「彼女、彼」の連発は、読者にも受け入れられなかった。
加藤 翻訳の文体は、村上で変わった？
鴻巣 変わったと言いますか、翻訳文体が日本語に同化した。一方、今は若い作家の方が、人称代名詞抜きでは書けないとか、日本の作品の方が翻訳文体化している。翻訳文体のほうがいまやこなれた感じ。
加藤 谷崎潤一郎は初期の自分の文章を読み直してみて翻訳文調なのに驚いた。そこで「日本語って何なんだろう」と思って『文章読本』を書いた。そんな大きな流れの中でみると、面白い話。
■世界の翻訳事情
――村上以外の作家の翻訳事情は。
鴻巣 台湾とか韓国は日本のエンタメ小説が訳されている。東野圭吾とか。台湾だと自国の文学より翻訳文学の方が売れるくらいだとか。書評もたくさんでる。
――アメリカの場合はどうでしょうか？
鴻巣 アメリカは、０８年にスウェーデン・アカデミーの事務局長が怒ったじゃないですか。アメリカはろくに翻訳もしないから、文化的島国だと。孤立してるって。アメリカ人はノーベル賞をとれないと解釈されるくらいのことを言ってしまって大騒ぎになった。
昨年のアメリカの出版翻訳の比率って３％くらい。日本でも８〜１０％くらい。アメリカの翻訳出版って学術書と聖書関係とコミックがちょっと。娯楽小説を一般人が楽しみに読むために日本みたいにバンバン訳されてるのはあり得ない。ただ、最近アメリカは結構、小さな翻訳出版社ががんばっている。ロシアに「月刊外国文学」があるけど、次が日本大特集らしい。岡田利規とか石田衣良が入っているかと思うと内田百けん（けんは門構えに月）、横光利一がやたらと手厚く訳されていたり。なかなかこれは日本の現代に対応した目次でしたね。
加藤 ラインアップを聞くと、いい。内田から横光、岡田までで一冊。日本人が見ても結構おもしろいなと思うよね。ロシアの人との同時代性を感じる。円城塔とかも、入っていいかな。
鴻巣 そうそう、青木淳悟あたりも入ると面白いと思いますね。「月刊外国文学」の編集長は自身も翻訳家なのですが、彼が訳しているものは日本とあまり変わらない。ポール・オースターとか。音楽の世界と一緒で、すごく同時代性が強まっていると思う。
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コメント(2)
心ある人はよく覚えていらっしゃることと思うが昨年、文科省は２００２年から始めた日本文学翻訳事業を廃止、よりによってこの時代のこの国にそういう選択がありえるものなのか。
しかし今日のメキシコの報道をみて驚かずにはいられなかった。メキシコ政府は文化局を通して、メキシコ文学の海外向けの翻訳公的援助資金を百万ペソから一千万ペソに増額するとのこと。これは単に海外からどんなイメージをもたれたいか、ということ以前に自国の文化への眼差しということにも関係してくると思う。
いったい、メキシコと日本、どちらが経済的に困窮しているのか、メキシコは産油国でありながら資金不足で石油精製所がつくれず、米国に原油を送って精製されたものを買い戻しているような国なのだけど。
というか、ニホンとメキシコ、どちらが文化的アイデンティティに富んでいる国なのか。はっきり言ってわたしはアイデンティティ・クライシスに陥っています。。。ああ、ため息が抑えられない！
http://eleconomista.com.mx/entretenimiento/2013/03/11/presentan-objetivos-programa-apoyo-traduccion
・・・・・・・・・・
上のトピックにもあるように、米国の外国向け翻訳はより少なく、より島国さがつよいとか。世間は、今回の１Ｑ８4とかにも見られるように、一部のニホン文学はすごい勢いで翻訳され、ビジネスとしても成り立つくらい。しかし目に見えるところだけにすべてを託してしまっていいものなのだろうか。例の大江健三郎賞は賞品が海外向け翻訳ということで、それなりにユニークさがあるものの、本来はだれの仕事であるべきものなのだろうか。
わたしたちは、翻訳されたおもしろい海外文学を見つけて、それを読んで愉しんでいるだけでいいのだろうか、ということを考えてしまう。
しかし今日のメキシコの報道をみて驚かずにはいられなかった。メキシコ政府は文化局を通して、メキシコ文学の海外向けの翻訳公的援助資金を百万ペソから一千万ペソに増額するとのこと。これは単に海外からどんなイメージをもたれたいか、ということ以前に自国の文化への眼差しということにも関係してくると思う。
いったい、メキシコと日本、どちらが経済的に困窮しているのか、メキシコは産油国でありながら資金不足で石油精製所がつくれず、米国に原油を送って精製されたものを買い戻しているような国なのだけど。
というか、ニホンとメキシコ、どちらが文化的アイデンティティに富んでいる国なのか。はっきり言ってわたしはアイデンティティ・クライシスに陥っています。。。ああ、ため息が抑えられない！
http://eleconomista.com.mx/entretenimiento/2013/03/11/presentan-objetivos-programa-apoyo-traduccion
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上のトピックにもあるように、米国の外国向け翻訳はより少なく、より島国さがつよいとか。世間は、今回の１Ｑ８4とかにも見られるように、一部のニホン文学はすごい勢いで翻訳され、ビジネスとしても成り立つくらい。しかし目に見えるところだけにすべてを託してしまっていいものなのだろうか。例の大江健三郎賞は賞品が海外向け翻訳ということで、それなりにユニークさがあるものの、本来はだれの仕事であるべきものなのだろうか。
わたしたちは、翻訳されたおもしろい海外文学を見つけて、それを読んで愉しんでいるだけでいいのだろうか、ということを考えてしまう。
今朝は八時のメキシコ大学ラジオのニュースが終わると映画関係者がトークをしていて、いきなりミランダ・ジュライの名とその作品が出てきてびっくりする。
ミランダは邦訳の訳者さんの巧さともあいまってニホンで人気が高く、わたしも読んでみたくてたまらない。
しかしメキシコではあまり人気がないように見えるし、言及されているのを見たことがない。
ミランダ・ジュライのような作家がいるかぎり、ニホンのマーケットでの海外文学は安泰だと思われる。
でもちょっと英文オリジナルのテキストのほうを覗いてみたがわりとやさしそう。
邦訳で読むか、英文で読むか、そのちがいはどこにあるのだろう（もちろん読む速さはぜんぜんちがうだろう）。
かつて柴田元幸さんが、ポールオースターの英文はやさしいから、英文で読んだほうがいい、とか言っていたが。
今日の朝日には、ノーベル文学賞をめぐって鴻巣友季子さんと辛島デイヴィッドさんとが対談。
http://book.asahi.com/booknews/interview/2014101700001.html?iref=comtop_fbox_u09
鴻巣さんが村上春樹についてこう語る。
「もはや現代文学のスタンダード。自身ではなし得ない新しい文体を、英訳で獲得したのが強み。」
つまり英訳によってあたらしい魅力が付加されているということ。
じっさい、ニホンでも春樹の英訳に注目するひとたちは少なくないようである。
これは文化比較論の立場からもおもしろいことが言えそうである。
文体は、翻訳を通してでも切磋琢磨されうるということ。
だからこそ、海外文学の邦訳を読むときも、だれの訳を選ぶかがおおきく問われるのだろうか。
ちなみにこの対談については、月並みな感想ですが、ニホンの作家は仲間内だけでなく、海外に出ていってもっとアピールするべきではないかと思う。
ミランダは邦訳の訳者さんの巧さともあいまってニホンで人気が高く、わたしも読んでみたくてたまらない。
しかしメキシコではあまり人気がないように見えるし、言及されているのを見たことがない。
ミランダ・ジュライのような作家がいるかぎり、ニホンのマーケットでの海外文学は安泰だと思われる。
でもちょっと英文オリジナルのテキストのほうを覗いてみたがわりとやさしそう。
邦訳で読むか、英文で読むか、そのちがいはどこにあるのだろう（もちろん読む速さはぜんぜんちがうだろう）。
かつて柴田元幸さんが、ポールオースターの英文はやさしいから、英文で読んだほうがいい、とか言っていたが。
今日の朝日には、ノーベル文学賞をめぐって鴻巣友季子さんと辛島デイヴィッドさんとが対談。
http://book.asahi.com/booknews/interview/2014101700001.html?iref=comtop_fbox_u09
鴻巣さんが村上春樹についてこう語る。
「もはや現代文学のスタンダード。自身ではなし得ない新しい文体を、英訳で獲得したのが強み。」
つまり英訳によってあたらしい魅力が付加されているということ。
じっさい、ニホンでも春樹の英訳に注目するひとたちは少なくないようである。
これは文化比較論の立場からもおもしろいことが言えそうである。
文体は、翻訳を通してでも切磋琢磨されうるということ。
だからこそ、海外文学の邦訳を読むときも、だれの訳を選ぶかがおおきく問われるのだろうか。
ちなみにこの対談については、月並みな感想ですが、ニホンの作家は仲間内だけでなく、海外に出ていってもっとアピールするべきではないかと思う。
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