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今夜はRead it!コミュの#03.『吾輩は猫なのか』(完)

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吾輩は猫なのか。  
名前はジェイムス・ブラウン。  
主人は吾輩を「ちび」だの「ぶち」だのと呼ぶが、大層不愉快な話である。

主人には死にかけていたところを拾ってもらった恩義があるので普段は黙って
呼ばせているが、いつかこれだけははっきりさせなければと思っている。

話がずれてしまったので戻そう。
そもそも、吾輩は、本当に猫なのであろうか。

コメント(9)

誰も彼もが吾輩を猫だと言う。
主人をはじめ、隣の飼い猫マイケルも、向かいの狂犬エリックも。

だが何を持って吾輩を猫としているのだ。
姿か?
はたまた素行か?

吾輩は犬を恐れぬ。
人に尻尾をふって生きる生涯に哀れみすら覚える。
吾輩は鼠を捕らぬ。
彼らとて必死で生きていることを知っている。
吾輩はねこじゃらしを好かぬ。
あんなもので心が掴めると本気で信じているのか。
「ちびー、どこだー。ごはんだよー。」
階下で主人が叫んでいる。
普通、猫であれば、ここで飛んでいくのであろう。
だが、吾輩は違う。
主人に恩義は感じているが、それは
プライドを捨てたこととイコールではない。
吾輩は窓辺に腰掛け、優雅に日光浴を始めた。
庭からの木漏れ日が心地よい。
吾輩は皿に注がれたロバートブラウンをひと舐めすると
うららかな陽気と睡魔に身を委ねる。

惰眠を欲する意識は、いつしか吾輩に
主人がかつて語ってくれた物語を思い出させていた。

それは、蝶になった男の話。
男は、自分が人間であると信じていた。
だが、ある日見た夢の中で男は一匹の蝶になっており、
夢の中の蝶は、自分がまぎれもなく蝶であると信じて疑わなかった。
すなわち男は自分が蝶の夢を見ている人間であるのか、
或いは人間である自分は、蝶の自分がみている夢なのか、
答えを出すことができなくなってしまった、というのだ。

実に興味深い。
今現在の吾輩は、この男と悩みを同じくしていると言えよう。
吾輩は、否、吾輩と吾輩を包み込むこの世界は
本当に実在するものなのであろうか。
あるいは吾輩は実はどこか別のところにあって、
この世界はもう一人の吾輩が夢見ているだけの
虚構の世界なのではないだろうか。

実在するという定義は何か。
虚構とは一体何か。

この世界が何者かの空想の産物でないと誰が言えよう。
この世界が吾輩の夢でないとどうして言えよう。
「ある」と認識することが実在するという定義であれば、
それは何と曖昧なものであろうか。

吾輩がいつか死を迎えるときに、
吾輩の意識が生み出したこの世界も同時に消えてしまうのではないか。
吾輩はそう感じる事が度々或る。

だがいずれにせよ吾輩は、この世界で吾輩として
生きるしか術を持たぬのだ。
「ぶちー、いないのかー。今日はお前の大好きなサンマだぞー。」
階下で主人が呼んでいる。
「にゃお〜ん。」
吾輩は意を決して返事をした。

この世界が別の吾輩が創りだした産物であろうとなかろうと、
吾輩はこの世界では吾輩でしかないのだ。

秋刀魚が好きだ。それは別の吾輩の空想した設定かも知れぬ。
猫なのかと自問する。それすら別の吾輩の設定かも知れぬ。

だが今はこれでいい。
自問したところで、もう一人の吾輩の空想を変えることは出来ぬのだ。
ならば今の自分を精一杯生きよう。
この世界を精一杯生きよう。

吾輩は階下へと駆け出した。短い手足で。だが、力強く。

そうだ。
吾輩は、猫なのだ。

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  完
一人で書いて終わってしまった…。
ちょっぴりさみしい。
           φ(TωT )

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