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こんな小説、書けましてん♪コミュのあかりと、31の物語

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「明日で、31になってしまう」

あの日、世界があんな風に決断しなければ。今更言っても、もうどうしようもない事だけど。



高齢化の時代を見据えていたボクが20代の時に世界の人口はただ増える一方の中で、高齢化を敬う考え方を世界中が何となくの意識で構えていたばかりに、こんな腐った世の中が台頭してしまった。

高齢者の多い国ばかりが平和を唱えるものの、武力行使を我が物顔で唱えて止まない国が仕掛けた世界大戦に、我が国は大きな痛手を負ってしまった。

我が国の世界トップの国と結んでいた不利益な平和たる条約は平然と破棄となり、大戦を勝ち得た国が掲げた、31の法律に世界全体が認める形となったのだ。

その31の法律とは、各国の国々の平和を維持するために、若者に対しての優遇を求めた高齢化を阻もうとする内容。
もっと言えば、31歳を人の寿命として定める事で人口の圧迫を制限し、国の繁栄を勤しんでもらおうという思惑でもあった。

31歳の命とは言え、大概は寿命でなく命を落とす事を余儀なくされる。
31歳の誕生日前日が自分の最期の日、と世界の法律がそう定めてしまったのだ。

31歳とは、人が退化していく折り返しの年齢でもあり、幸せに達する事の出来る平均年齢でもある。
人は身体を弱めてまで生きる必要はないと、高齢者を弱者としてでしか、世界が受け入れを拒んでしまったのだ。





「ボクは後、今日限りの人生だ」

人生がカウントダウンされる事で、人はやっとそこで生きる有り難みに気付き、大切さを知りより良く生きようとする。
それを人がそう定め、人がまたそれに従っている。
明日の誕生日が来るまでに、ボクはどうこの世からいなくなるのか。その答えを、ボク自身で出さないといけない。

一つの方法として、国が決まった場所に設置してくれているノアという宇宙行きのカプセル船を選べば、時間が経てば宇宙へと発射され、そのまま楽に天国へと行ける、というものがある。
それが、自殺を正当化した旅立ちという配慮なのかもしれないが、死ぬ事に何ら変わりはなかった。それを選ばないからといって、死なないという選択肢はないのだ。

あとは、彼女から聞いた話によると、誕生日前日の夜に殺し屋が家の近くを訪れ仕留められてしまう、という事らしいが実際に見た事がないので本当の所はよく判らない。

「ねえ、やっぱり皆と同じように、カプセルに行くの?」

愛しい彼女が、そうボクに尋ねた。

「ううん、ボクは死にたくない」

ボクがまだ20歳の頃が高齢化社会だったからか、今の風土を今でも疑って止まないでいる。
世の中はどうかしてる、と一部の民衆たちと共に、人の尊さを主張する団体同様の考えを糧に今の時代を真っ向から反対する思いで一杯だった。

「でも、殺されちゃうよ?」

「皆がどうかしてるんだ、自分の足で死にに行くだなんて、やっぱり馬鹿げてるよ」

人生は自分のペースで決めていいはず。それがどうして、国や法律という枠ごときに左右されなければいけないのだ。
彼女は現代に生まれた人だから、今が普通としか思わないのかもしれないけれど。

「ボクが死んでも、ボクの思いは死なないから」

そう彼女に告げて、手を振って別れを交わしていた。そしてそのまま、今日という日に何が待ち受けているのか、知りたくもなかった。



やがて、家路に着いてすぐ腕時計をちらりと見て、ソファーに腰を落として天井をぼんやり見上げていた。

「あと、20分、か」

深い眠りの手前で、今度はテレビの上の写真立てにぼんやり焦点を合わせていた。

そこに写る笑顔の彼女と笑顔のボクは、いつしか幸せという場所に辿り着いていたのだろうか。それがどうとか別にと判らないまま、夜は更けていった。










、バァンッ!!



銃声が辺りにこだまする頃には、ボクの耳は高音と衝撃で聞こえなくなっていた。

「!!」

ボクは窓の向こうから撃たれたのだと理解してすぐ、銃を向けていた人物を捕らえて驚愕した。

「あかり!?あかり、なのか?」

今も銃をこちらに向けている人物は、紛れもない愛する彼女、その人だった。

「どうして?キミは殺し屋だったの!?」

ボクは横に仰向けになりながら傷口から赤く染まりながら、そう呟いた。

「これが、今の時代の法律だから。決まり事だから」

ボクの口から赤いものが溢れても尚、彼女の言動を伺っていた。

「31の法律、それはね、自らで死を選びカプセルに入るか、愛する人から殺されるか、どちらなの。そして、愛する人のいない場合のみ、法律として対象外になるって」

「対象外??」

「そう、死なない、でいられるって事」

ボクは死にたくないと彼女に告げた時に、彼女が黙り込んでいた理由が今になって判った。
ボクの事を、実は嫌いなんだ、と。

「あなたと別れたくなかったの、好きだから、愛してたから!」

「それは、違う」

死なずに生きていられる事が、その人にとって幸せだったはず。
ボクをこれからも好きでいてくれるのなら、生きていて欲しいと普通は思うだろうに。

「違わない、例え私と別れてたとしても、あなたは幸せになれないから!生きる道を選んでも、あなたは幸せになれないどころか、周りから非難されてしまうの!」

幸せになれない?非難される?生きてる事が幸せなのに?
ボクには到底、彼女の言ってる事が理解出来なかった。

「人生はね、長ければいいってものじゃないよ?そう、教科書に書いてあったわ。それに、短い人生の中で、いかに幸せを見つけれるかどうかだって。だからあなたは、私と幸せになれた事で人生の幕を下ろす、それですべてが納得いくでしょ?」

納得??
やっぱり、意味が判らなかった。

「だから、私があなたを殺した、私も世間同様そう思ったから。法律は守らなきゃでしょ?」

法律?人が人を殺していい法律?
世の中はやっぱり、どうかしてるんだ。





31の法律。

ボクはその時代に生き、愛する人との幸せを勝ち取った。そして、愛する人にあやめられ、この世を去っていった。
それを最大なる幸せなのだと位置付けられたのが、可笑しくて可笑しくて。





来年、彼女もまた31を迎える。

ボクからキミへのプレゼントは、もう判ってるよね?

覚悟しておいてね♪

その日をボクも愉しみを待ってるからさ★



「ひと月が、どうして31日あるか知ってる?」

当時のボクが何も知らずに首を振っていたのを、今になってふと思い出した。

「節目であり変わり目なのよ、何事においてもね。だから幸せも人生も、31を以て終わらせるの、素敵でしょ?」

31。

どうして31なのか、昔彼女に聞いてみた事があった。

「素数という割り切れない数字でもあってね。あとは、無限というマークがあるでしょ?8を横にしたようなやつ。それを縦に切り裂いた風にも見えるって意味では、無限や永遠を否定するという考えもあるらしいよ。幸せも瞬間的が素敵だからこそ、人生も同様って事なんだろうね」

ボクらの未来は、もっと素敵なものになるって、心から信じていたのに。

それなのに。

「信じるものは救われないのよ。だって、信じてるだけでしょ?それって、何もしませんって見栄張ってるだけじゃない?」





人が生み出した、決まり事に。

人は皮肉にも、裁かれているんだ。



世界を、変えよう。

未来が明るいか、否か。
それすらどうか、判らないけれど。

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