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Bunker Music MeetingコミュのBunker #22 "Albert Ayler"

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10月のBunkerは「アルバート・アイラー」予定しています。詳細未定。

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アルバート・アイラーについて


アルバート・アイラーは1936年オハイオ州クリーブランドに生まれた。7才のころから父親にヴァイオリンとテナー・サックスを教そわり、10代はリズム&ブルースバンドで演奏、後に著名なブルース・ハープ奏者リトル・ウォルターのグループに参加することにもなる。1959年に軍隊に入り楽隊の一員としてヨーロッパ各地を訪れる。徐隊後もそこに留まり、1962年10月スウェーデンで録音を行い、地元のミュージシャンが運営するレーベルから小部数のレコードを発表する(2004年の未発表集『Holy Ghost』によれば、現存する最初のレコーディングはこの年の7月フィンランドでのもの)。その直後、アイラーはデンマークを訪れていたセシル・テイラーのライヴ演奏に参加する。

当時アメリカ本国ではテイラーやオーネット・コールマン、そしてジョン・コルトレーンがジャズの主流とは違った新しいタイプの音楽を目指し奮闘していた...それは「フリー・ジャズ」と呼ばれる。翌年録音された『My Name Is Albert Ayler』までは、ソニー・ロリンズのスタイルを彷彿させる演奏だったが、1964年にアメリカに戻り、テイラーのバンドにいたサニー・マレイ(ドラムス)を向かえて録音された『Spirits(別名Witches And Devils)』になると、アイラーのサウンドはまったくオリジナルなものへと変化する。伝統的なタイムキープのルーティンを捨て去り、シンバルの細やかなパルスと不意に轟く雷鳴のようなスネアによって構成されるマレイのドラミングに支えられて、これまで白人にとっては野蛮でエキゾチックな珍重品であり、黒人にとっては都会的で洗練された芸術としてあったジャズの引き裂かれたたアイデンティティそのものを無にしてしまうような「プリミティヴな咆哮」を、アイラーのテナーは奏で始める。

もちろんこの「咆哮」は、社会的な動静とどこかでつながりがあったといえるだろう。黒人の地位向上に端を発する公民権運動の盛り上がりは、ダイナミックなうねりとなってアメリカを取り巻いていた。キング牧師やマルコムXといった人々の活動もこのころのものだ。同年、アイラーは前衛的なジャズ、ロックをプロモートする伝説的なレーベル、ESPの第1作としてマレイ、ゲイリー・ピーコック(ベースの)とのトリオによる希代の傑作『Spiritual Unity』を、そしてオーネット・コールマンの『Free Jazz』以降、始めて真の意味での集団即興を問うた『New York Eye And Ear Control』を発表する(コルトレーンの『Ascension』は翌年)。これに続く(ESPからではなくデビューレーベルからの)『Ghost』までの1964年の諸作品でアイラーは、ジャズの感情に訴えるエネルギッシュでダイナミックな部分を赤裸々なまで露呈させ、その強度を信じられないようなレベルまで拡大させる。

1965年の『Bells』、『Spirits Rejoice』になると、アイラーの音楽にさらなる変化が起こる。それまでの作品ではもちろん即興演奏=ソロ演奏部は完全に無調的であり、ヴィヴラートや急速なレガート、張り裂けるような高音のアタックなどを多用したフリーキーで、破壊的なサウンドだった。しかし、(『New York Eye ・・・』を除き)曲全体の形式としては最初にタグとしてのテーマ提示の後に、バンドメンバーが順にソロをとるというモダンな(ビバップ的な)手続きを守っていたように見える。しかし、弟のドナルド(トランペット)を加えたこれらのアルバムでは、明快な輪郭をもったメロディーが何度も回帰してきたり、一定のスケールを素早く旋回して奏でる各々の即興演奏がオーケストレーションされる部分など、新奇なアンサンブルの形式に挑戦する。そして、このような形式の探究の中で、これまで破壊的なダイナミズムのためのスプリングボード的意味合いが強かった民謡調のメロディーが圧倒的な存在感をもって屹立するようになる。この試みはジャズという近代的な芸術形式ではないヴァナキュラー(土着的、日常的)な黒人音楽に着目する試みでもあった。

1967年にESPからインパルスに移りマレイがバンドから離れると、正統化されたジャズを無機的な純化の方向にではなく、土臭い世俗的なものを潜って突破しようとする傾向は顕著になる。アラン・シルヴァ(ベース)やマイケル・サンプソン(ヴァイオリン)らのストリング・セクションがこれまでになかったハーモニーの網の目を紡ぐグリニッジ・ヴィレッジでのライヴ演奏(『In Greenwitch Village』、『The Village Concert』)。テナーをアルトに持ち替え、"Universal Indian" という象徴的なタイトルをもつ楽曲を含み、マレイとは異なる方法でジャズドラムの別の地平を開いたミルフォード・グレイブスが参加した『Love Cry』(1968)。『New Grass』(1968)では大胆なエレクトリック・ギターによるロックビートを導入し、『Music Is The Healing Force Of The Universe』(1969)、『Last Album』(1969)ではアイラー自身歌い、バグパイプやオカリナを演奏する。アイラーはもはや「フリー・ジャズ」というジャンルにも留まらず、マイルス・ディヴィスが試みたものとは別の方法で「ワールド・ミージック」と呼ばれるにふさわしい音楽に突き進んで行くように見えた...。

アイラーの音楽をアメリカの詩人、ルロイ・ジョーンズ(アミリ・バラカ)は次のように述べている。「アルバート・アイラーは万物は万物であるという考え方をもっている。あらゆる平和。あらゆる運動。つまり、自分がエネルギーを放出され、放出する媒体ということである。かれの考えは、かれがこの場所にすらいないということである。われわれが本当に生物学的自我であることを除けば。この場所においてすら、かれをアルバートとして語ることは不十分なのである。分離したものなのだ。ときとして人間どうしの間でも感情の交流がみられないが、音楽はわれわれを結びつけてくれる。感情。芸術。生存のためにおたがいの交流するものをうみだす一切のもの。」アルバート・アイラーの音楽は「優しい」。それは一聴、耳障りな破壊的で否定的なものに聞こえるかもしれない。しかしそれは、悲痛な叫びや止めど無く訪れるカタストロフと共にしかありえない、私たちが存在すること自体の自由と希望を暗示する、全てを受け入れる歓喜の音楽なのだ。

1970年11月25日、厳寒のニュー・ヨークのイースト.リヴァーから頭に銃弾を受けた水死体が上がる。遺体は身元が突き止められず、モルグに安置された。数日後、その遺体はアルバート・アイラー、その人であることが親族によって確認された。


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昨年キャリア全体を通観したレア&未発表の9枚組みCD『Holy Ghost』が発売され、また菊地成孔、大谷能生両氏による東京大学での講義録のタイトルともなり、再びアルバート・アイラーの音楽が新しい耳によって聞かれる時期が来たのかもしれません。ぜひこの機会にアルバート・アイラーの音楽をチェックしてみてください。
実は来月の第四金曜日がアイラーの命日とされている日(11月25日)だということを後で気づきました・・。

「バンカー22」は10月の第四金曜日の28日にレジデンタルクラブにて開催します。当日はCDの販売もありますので興味のある方はどうぞ。
Bunker #22 "Alber Ayler" playlist


1. "I Remember April" from First Recordings
2. "Introduction by AA", "Summertime" from My Name Is Albert Ayler
3. "Spirits" from Spirits
4. "Goin' Home", "Nobody Knows The Trouble I've Seen" from Swing Low,
Sweet Spiritual
5. "Ghost second variation" from Spiritual Unity
6. "Don's Dawn", "AY" from New York Eye And Ear Control
7. "Ghost" from Ghost
8. "Bells" from Bells
9. "Truth Is Marching In" from In Greenwitch Village
10. "Ghost" from Love Cry
11. "Untitled Duets" from The Last Album
12. "Truth Is Marching In" from Nuit De La Fondation Maeght vol. 1
13. "Our Prayer" from Holy Ghost

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