『In A Silent Way』が録音された1969年の2月、マイルスはアコースティックな「至高のクインテット」を解体し、チック・コリア(el-p)、ジョー・ザビヌル(org)、ジョン・マクラフリン(el-g)らをフューチャーした、エレクトリック・バンドを編成する。『In A Silent Way』とそれに続く『Bitches Brew』は初めてジャズとロックの真の融合を達成し、後に「フュージョン」として知られるジャンルの嚆矢となった。『Bitches Brew』で、マイルスは始めてビルボードのアルバム・チャートにチャート・インする(1970年、4週間35位に)。また、『Bitches Brew』からマイルスのアルバムに以前にはなかったサイケデリック、もしくわブラック・パワー・ムーブメントを表象するような自身の手によるヴィジュアルを使用するようになる。
1970年、伝説的な黒人ヘヴィー級ボクサー、ジャック・ジョンソンのドキュメンタリーのサウンドトラックを手懸ける。ジャック・ジョンソンの物語は、彼を貶めようとする「Great White Hope」という秘密組織の空しい探索としての物語でもある。ボクシング愛好者で、彼にふさわしい名声を支配層に妨げられていると考えていたマイルスは、ジョンソンに彼自身の姿を見たのかもしれない。その完成作『A Tribute To Jack Johnson』は2つの20分を超える曲からなり、多くの優れたミュージシャンを起用した。発売当時レコードにはクレジットされていなかったそのメンバーにはソニー・シャーロック(el-g)が含まれた。様々なセッションからなるこのアルバムで自身サックス奏者であり、戦後のアカデミックな音楽界で主導されていた電子音楽の分野に精通し、あのエドガー・ヴァレーズの薫陶を受けたプロデューサー、テオ・マセロは『In A Silent Way』、『Bitches Brew』に引き続き、そのスタジオ編集の真価を遺憾なく発揮する。
その後も「帝王」はさらなる進化を遂げる...。
------------------------------------ "the first half of Electric Miles" Discography
「In A Silent Way」 - '69, Feb. 18.
「Bitches Brew」 - '69, Aug. 19-21.
「A Tribute To Jack Johnson」 - '70, Feb. 18, Apr. 7.
「Black Beauty / At Fillmore West (Live)」 - '70, Apr. 10.
「Miles Davis At Fillmore (Live)」 - '70, Jun. 17-20.
2. Miles Electric: Diffrent Kind Of Blue DVD
* Interviews (musicians from electric era)
* Isle Of Wight Music Festival 1970
3. "Shhh/Peaceful" from In A Silent Way
4. "All in Green" from Kind Of Blue
5. "Stuff" from Miles In The Sky
6. "The Hymn (Superman)" from Charlie Parker The Complete Dial Session
7. "Three Little Feelings" from Music For Brass