」
、ハットリくんの心意気次第ですね！
もちろん襲います
菊楽さんも頑張ってください
がある。
クラブのお姉さんには勝つのは難しいけど、素人同然のキャバ嬢には勝てますよ
お店出た後の一言で落とせます
★☆この回から初めて読まれる方へ★☆
連載形式になっていますので、お手数でもさかのぼってお話を読んでみてください。
諦める恋もある！合コンPart2に賭けるの巻
http://
やっぱり諦めない恋もある！好きなものを餌に誘惑するの巻
http://
＊＊＊
はじめに
激しいキスを交わしたハットリ石川くんへの想いを断ち切ろうとしたが諦めきれずに、ある作戦を思いつく菊楽恵。『好きなものを餌に誘う』作戦だ。ハットリ石川くんの好きなものはピアノ・バー。取材を理由に案内をお願いしようとメールを送る。なんと連れて行ってくれるという返事が。それも今夜だ！もじゃもじゃわけ毛のまま彼が待つミッドタウンの居酒屋に向かう菊楽恵。
＊＊＊
そこの角を曲がれば、ハットリ石川くんが待つ居酒屋『R』がある！
なんの事件もなくグラセンに到着し、待ち合わせ場所は目の前までという所まで辿り着いた。
すぐそこなのに足がすくむ。
曲がるに曲がれない。
ハットリ石川くんが私を待っていると思っている、つまりそうであると思い込んで行動しているのだが、お店に入って彼がいなかったら？
そして、待てども待てども姿を現さなかったら？
ここまで来てしまったのだ。その時はその時だ。
泣いても喚いても仕方がない。
カウンターで炙（あぶ）った大西洋のイカと塩からをさかなに、浴びる程酒を飲もう。
シングルの多いニューヨーク。ひとりでレストランで食事をしている風景は珍しくない。
女もだ。誰の目にも奇異には映らない。
しかし、ニューヨークの居酒屋で、女が一人、来ない男を待ちながら失恋酒を飲む。
はぁ〜。想像するだけで辛すぎるシチュエーションではないか！
それにしても私は全く成長していない。
その昔、新宿はゴールデン街でひとり失恋酒を飲んで大泣きして、しかも帰り道、哲学の道で転んで怪我してしまった。怪我と失恋のダブルパンチは本当に心身とも
に痛かった。
何、うだうだしているのだ！
失恋酒でもいいじゃないか！
過去は過去。東京とニューヨークで失恋酒。これこそ日本人が求める真の国際人
ではないか（か？）！
それに忘れてはいけない！男はハットリ石川だけじゃない！
え〜〜い！
角を曲がった。
見える居酒屋『R』の看板。
その下に立つスーツを着たアジア系の男性。
ブルーのサテンのネクタイにブルーのストライプのシャツ。
ジャ〜ン（シンバルの音）！
ハットリ石川くんだ！
ブルーもよく似合う！ 素敵！
この怒濤の展開は……、まるで恋愛ドラマじゃないか。
ドキドキしながら、角を曲がったら、彼が待っていた……というコテコテの展開
！
それが私の身の上に起こっている。奇跡がぁ〜！ あわわ〜。
失恋酒ではなかった。今夜のお酒は愛の喜び酒！ いえ、愛の悶（もだ）え酒になるに違いない！
ちょっと待てよ。
一瞬悩む。
ここは、「ハットリくぅ〜ん」と鼻にかかった甘い声で手を振りながら小走りし
て近寄るべきか？
でも、彼はぶりっ子が嫌いなはずだ。合コンで一緒だった十和子。男性陣は巻き毛くるくるのプリテンシャスの十和子に夢中だったが、ハットリくんはそうではなかった。
しかし、日本のアイドルは好きらしい。ハットリ石川という男、よく分らない。
むむむ〜。
じゃ、よくあるパターンだが、待っているのを知っているけど知らない振りして行く。そして目の前に着いたら、「あっ！」と白々しいのは承知で驚いてみせて、冷静を装い「待っていてくれたの？ あらぁ〜」なんて棒読みでも言ってみる。
これで行こう！と決意した時に、「メグミさぁ〜〜ん！」と腕を夜空にめいっぱい伸ばして120度の角度で何度も激しく振幅し、夜なのに朝露の如き、清らかで爽やかな笑顔でかつ私の方に向かって来るハットリく〜ん。
光っている革靴が眩しいぃ〜！
ピカピカ〜！
振ろうと思った手だが、先に相手が振ってくれる。それも激しく！
真のパートナーに出会った！そう思わずにはいられなかった瞬間であった。
例えこれからホステスのいるピアノ・バーに行くという特殊な状況であっても。
「もうそろそろ来るかなと思って待っていたんだ！」
直球の表現だ。格好いい。
へそ曲がりな私ならば「お店の中が暑くてちょっと涼んでいたのぉ〜」と本当は待っていたのにもそう言ってしまうに違いない。だから、ハットリくんの単刀直入な言葉は嬉しい。
私のミットにしっかり受け取った！
ここで再会のブチュ〜！を期待していないと嘘になる。来るか、来るかと待っていたが、
「じゃぁ、中に入ろう」とドアを開けてくれて私が先に入るように促してくれただけだった。
「なんでキスしてくれないのよぉ〜」とハットリ石川くんを責めることはできない。
居酒屋『R』の前はニューヨークでも新橋のガード下なのだ。
日本人リーマンが数人がタバコを吸っている。バーやレストランで喫煙することは法律で禁止されているので、外で吸わなければならない。
喫煙中の日本人リーマンの前でブチュ〜！は、気が引けるのも分る。
ハットリくんは日本人でありたいと思っている日本男児なのだ。
しかし、スタスタと自分から先に入ってしまう日本男児とは違う。レディーファーストの礼儀作法の環境で育っているアメリカ人でもあるハットリくん、普通にドアを開けてくれる。
あ〜あ、それにしても二回目のキスはいつできるのだろうか？
焦りは禁物。
夜はまだまだ長い。
＊＊＊
ハットリくんと偶然に再会した居酒屋『R』でテーブルを挟んで、お酒を一緒に飲む。
「高級なお店もあるけど、そうところは肩が凝るし、ボクには合わないんですよ。
堅苦しくなく、つまみがおいしいところがいいんです」と背後には＄＄＄マークをいっぱい背負っている御曹司にもかかわらず、庶民派！ 見栄を張っていないところがいいぃ〜。
こうしてハトッリくんと差しつ差されつお酒を酌み交わすことができるのも『好きなものを餌に誘う』作戦が成功したわけでだが、ハットリ石川くんは私のピアノ・バー・プロジェクトについて矢継ぎ早に質問してくる。
ニューヨークのホステス事情について取材したいというのは嘘ではない。
実際プロデュサーとも話し合っている。しかし、ハットリ石川くんとのデートするとが今夜の真実の目的（狙い）なのは事実。
そう、私は下心いっぱいの狼女なのだ。
姑息と罵られようがいい。欲しい物は欲しいのだ。
しかし、欲しいものは欲しくても「会ってください」なんて、そのままズバリを言うのはとっても恥ずかしいし、それに何よりも断られたらと思うと怖くて正直な気持ちは言えない。まして「先日はできませんでしたね。
だから、今度会ってセックスしましょう！」だなんて気軽に口に出しては言えない。
言えない女だから、世間が驚くくらいずっ〜〜〜とセックスしていないのだ。
＊＊＊
「合コンでも言ったと思うけど、ボクはアーティストをサポートしたいと思っているんだ。だからアイディアに賛同したら、お金を出すのは厭わないよ」。
と真摯な態度で言ってくれるハットリ石川くん。嘘ではないが確実ではない企画。胸が痛い。しかし、「嘘から出た実」という諺もある。
石川くんの援助によりドキュメンタリーが撮影されて、完成させることができる
かもしれない。
しかし、今の私には、出してくれるのならば、お金じゃなくて、アソコを玉ごとボロンとジッパーから出してくださぁ〜いなのだが。
もうぉ〜、いあやぁ〜ん。エッチィ〜！ 見たい！日本男児の……。うふふふ。
「メグミさん、顔赤いね？ もう酔ったの？」
「えっ？ 赤い？ あっそうなの。そうね、酔ったみたい」と
しどろもどろに答える私。
お酒を飲んでも顔は赤くならないタイプなのだが、ハットリ石川くんの一物を想像して赤面してしまいました！なんて言えはずがない。
心なしかハットリくんの顔がにやけているように見える。
私と一緒にいて楽しいからに違いない！
それに、私の胸の谷間をちらちらと見ているのがありありと分かる。
これこそ胸の谷間が見える服も着てきた甲斐があるというもの。
見て欲しくて着てきたのだ。
その下には高級勝負下着をつけていることをこの段階では知る由もないハットリくん。
お刺身を食べながら、目の前にはハットリ石川くんがいて、しかも同じお皿から同じものを食べているんだと感動しながら胸を熱くしつつも、さっきから気になることがあるのだ。
私たちの隣に座る男女。
女がハイトーンの甘えた声。男性は見るからにサラリーマンで彼の目は完全に瞳孔が開いている。カップルと呼ぶには変。女は驚くくらい厚化粧で、目の回りはキラキラしていて、居酒屋では輝き過ぎだ。
これからステージですか？のゴージャスなア
ップな髪型。彼女の着ている服は普通のスーツでちぐはぐな感じなのだ！
＊＊＊
一時間後、とうとうピアノ・バーに向けて出発することになった。
「日本じゃないから、ホステスはプロじゃないんだよ。学生がバイトでしているから、キャバクラのような感じだよ」と説明してくれる。
日本でも上司に連れられていわゆる「女の子」がいるスナックには何度か行ったことがある。
行き先はクラブ『Z』。
初めて行く店そうで、女の子がかわいいぃ〜と評判らしい。ニューヨーク在住の日本男性の間でだということだろう。
ピアノ・バーは居酒屋『R』から数ブロック先だ。
並んでストリートを歩く。
ハットリ石川くんが私の手を握ってきた。
それも握った後、指と指の間に指を入れてきた。
肉感的な指。指の関節と間接の間の指の肉がふくふくしている。ハットリくんも私が好きな、爪をきっちり切りそろえているタイプなので、さらに妄想が深まる。
ホステスのいるピアノ・バーに男と手をつなでいくという倒錯と呼べるまでには倒錯はしていないが、まぁちょっと変わった状況ではあるのは確かで、この不思議さ
に酔いつつ、二人で手をつないで歩いていった。
＊＊＊
目的のピアノ・バーに着いた。
ドアを開けると、二十歳そこそこの若い男性が迎えてくれた。
「いらっしゃいませ〜」。
スーツに着られてしまっている様子だ。
「お客様、テーブルかカウンターのどちらに致しましょうか？」
「テーブルにして」と答えるハットリくんの答えっぷりに“慣れ”を感じる。
「女の子はどういたしますか？」
「ここ、初めてだから……。特には」
「初めてのご来店ですか、それはありがとうございます。こちらのテーブルにどうぞ」とホスト風の男性に案内されて店内に入る。
ニューヨークのピアノ・バーだから、何か特別なこと、例えば、Go-Goガールが踊っているとか、強烈に破廉恥なことが起こっているのかと期待していたのだが、ひとことで表現するならば「そこは日本だった」。
暗くムーディーな照明で、ソファーがあり、テーブルがあり、天上には豪華なシャンデリアがあり、棚には高級そうなお酒が並び、クラブといえばの巨大な花瓶に花がてんこもりに生けられてあった。
スーツを着ている男性と「女の子」が隣に座って飲んでいる。
ベルベットのソファに座る。
隣にハットリくんが座ってくる。
さながらホストクラブかしら〜、なんて一人で喜んでいると、
「こんばんは〜。ありさでぇ〜す。失礼しまぁ〜す」
「こんばんは。マユでぇ〜す！失礼しまぁ〜す」と演歌歌手のようなきらびやかなドレスを着たホステスさんが登場！
香水の匂い、プンプンだ！
ふと隣に座る彼を見ると、目がキラキラ輝いている。
キラキラァ〜！
さっき居酒屋『R』で、私と一緒にいてにやけていると思っていた以上のにやけ顔。
認めたくはないが、論より証拠。
「あぁぁ〜！ハットリくん、あなたは本当にホステスが好きなのね？ 」と心の中だが叫ばずにはいられなかった。
ありさ嬢とマユ嬢、二人とも若いし、かわいい……。
お店に入ってまだ3分。胸の奥がもやもや。目もしばしばしてきた。
あっ！こ、これって嫉妬？
『やっぱり諦めない恋もある！好きなものを餌に誘惑するの巻その3』へつづく。
☆★☆★☆★☆★☆★
さらにDeeeepな“菊楽恵流 ”ニューヨークが楽しめるブログもどうぞ！
真のニューヨーカーになったと確信する出来事があったようです！
http://
☆★☆★☆★☆★☆★
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はじめに
激しいキスを交わしたハットリ石川くんへの想いを断ち切ろうとしたが諦めきれずに、ある作戦を思いつく菊楽恵。『好きなものを餌に誘う』作戦だ。ハットリ石川くんの好きなものはピアノ・バー。取材を理由に案内をお願いしようとメールを送る。なんと連れて行ってくれるという返事が。それも今夜だ！もじゃもじゃわけ毛のまま彼が待つミッドタウンの居酒屋に向かう菊楽恵。
＊＊＊
そこの角を曲がれば、ハットリ石川くんが待つ居酒屋『R』がある！
なんの事件もなくグラセンに到着し、待ち合わせ場所は目の前までという所まで辿り着いた。
すぐそこなのに足がすくむ。
曲がるに曲がれない。
ハットリ石川くんが私を待っていると思っている、つまりそうであると思い込んで行動しているのだが、お店に入って彼がいなかったら？
そして、待てども待てども姿を現さなかったら？
ここまで来てしまったのだ。その時はその時だ。
泣いても喚いても仕方がない。
カウンターで炙（あぶ）った大西洋のイカと塩からをさかなに、浴びる程酒を飲もう。
シングルの多いニューヨーク。ひとりでレストランで食事をしている風景は珍しくない。
女もだ。誰の目にも奇異には映らない。
しかし、ニューヨークの居酒屋で、女が一人、来ない男を待ちながら失恋酒を飲む。
はぁ〜。想像するだけで辛すぎるシチュエーションではないか！
それにしても私は全く成長していない。
その昔、新宿はゴールデン街でひとり失恋酒を飲んで大泣きして、しかも帰り道、哲学の道で転んで怪我してしまった。怪我と失恋のダブルパンチは本当に心身とも
に痛かった。
何、うだうだしているのだ！
失恋酒でもいいじゃないか！
過去は過去。東京とニューヨークで失恋酒。これこそ日本人が求める真の国際人
ではないか（か？）！
それに忘れてはいけない！男はハットリ石川だけじゃない！
え〜〜い！
角を曲がった。
見える居酒屋『R』の看板。
その下に立つスーツを着たアジア系の男性。
ブルーのサテンのネクタイにブルーのストライプのシャツ。
ジャ〜ン（シンバルの音）！
ハットリ石川くんだ！
ブルーもよく似合う！ 素敵！
この怒濤の展開は……、まるで恋愛ドラマじゃないか。
ドキドキしながら、角を曲がったら、彼が待っていた……というコテコテの展開
！
それが私の身の上に起こっている。奇跡がぁ〜！ あわわ〜。
失恋酒ではなかった。今夜のお酒は愛の喜び酒！ いえ、愛の悶（もだ）え酒になるに違いない！
ちょっと待てよ。
一瞬悩む。
ここは、「ハットリくぅ〜ん」と鼻にかかった甘い声で手を振りながら小走りし
て近寄るべきか？
でも、彼はぶりっ子が嫌いなはずだ。合コンで一緒だった十和子。男性陣は巻き毛くるくるのプリテンシャスの十和子に夢中だったが、ハットリくんはそうではなかった。
しかし、日本のアイドルは好きらしい。ハットリ石川という男、よく分らない。
むむむ〜。
じゃ、よくあるパターンだが、待っているのを知っているけど知らない振りして行く。そして目の前に着いたら、「あっ！」と白々しいのは承知で驚いてみせて、冷静を装い「待っていてくれたの？ あらぁ〜」なんて棒読みでも言ってみる。
これで行こう！と決意した時に、「メグミさぁ〜〜ん！」と腕を夜空にめいっぱい伸ばして120度の角度で何度も激しく振幅し、夜なのに朝露の如き、清らかで爽やかな笑顔でかつ私の方に向かって来るハットリく〜ん。
光っている革靴が眩しいぃ〜！
ピカピカ〜！
振ろうと思った手だが、先に相手が振ってくれる。それも激しく！
真のパートナーに出会った！そう思わずにはいられなかった瞬間であった。
例えこれからホステスのいるピアノ・バーに行くという特殊な状況であっても。
「もうそろそろ来るかなと思って待っていたんだ！」
直球の表現だ。格好いい。
へそ曲がりな私ならば「お店の中が暑くてちょっと涼んでいたのぉ〜」と本当は待っていたのにもそう言ってしまうに違いない。だから、ハットリくんの単刀直入な言葉は嬉しい。
私のミットにしっかり受け取った！
ここで再会のブチュ〜！を期待していないと嘘になる。来るか、来るかと待っていたが、
「じゃぁ、中に入ろう」とドアを開けてくれて私が先に入るように促してくれただけだった。
「なんでキスしてくれないのよぉ〜」とハットリ石川くんを責めることはできない。
居酒屋『R』の前はニューヨークでも新橋のガード下なのだ。
日本人リーマンが数人がタバコを吸っている。バーやレストランで喫煙することは法律で禁止されているので、外で吸わなければならない。
喫煙中の日本人リーマンの前でブチュ〜！は、気が引けるのも分る。
ハットリくんは日本人でありたいと思っている日本男児なのだ。
しかし、スタスタと自分から先に入ってしまう日本男児とは違う。レディーファーストの礼儀作法の環境で育っているアメリカ人でもあるハットリくん、普通にドアを開けてくれる。
あ〜あ、それにしても二回目のキスはいつできるのだろうか？
焦りは禁物。
夜はまだまだ長い。
＊＊＊
ハットリくんと偶然に再会した居酒屋『R』でテーブルを挟んで、お酒を一緒に飲む。
「高級なお店もあるけど、そうところは肩が凝るし、ボクには合わないんですよ。
堅苦しくなく、つまみがおいしいところがいいんです」と背後には＄＄＄マークをいっぱい背負っている御曹司にもかかわらず、庶民派！ 見栄を張っていないところがいいぃ〜。
こうしてハトッリくんと差しつ差されつお酒を酌み交わすことができるのも『好きなものを餌に誘う』作戦が成功したわけでだが、ハットリ石川くんは私のピアノ・バー・プロジェクトについて矢継ぎ早に質問してくる。
ニューヨークのホステス事情について取材したいというのは嘘ではない。
実際プロデュサーとも話し合っている。しかし、ハットリ石川くんとのデートするとが今夜の真実の目的（狙い）なのは事実。
そう、私は下心いっぱいの狼女なのだ。
姑息と罵られようがいい。欲しい物は欲しいのだ。
しかし、欲しいものは欲しくても「会ってください」なんて、そのままズバリを言うのはとっても恥ずかしいし、それに何よりも断られたらと思うと怖くて正直な気持ちは言えない。まして「先日はできませんでしたね。
だから、今度会ってセックスしましょう！」だなんて気軽に口に出しては言えない。
言えない女だから、世間が驚くくらいずっ〜〜〜とセックスしていないのだ。
＊＊＊
「合コンでも言ったと思うけど、ボクはアーティストをサポートしたいと思っているんだ。だからアイディアに賛同したら、お金を出すのは厭わないよ」。
と真摯な態度で言ってくれるハットリ石川くん。嘘ではないが確実ではない企画。胸が痛い。しかし、「嘘から出た実」という諺もある。
石川くんの援助によりドキュメンタリーが撮影されて、完成させることができる
かもしれない。
しかし、今の私には、出してくれるのならば、お金じゃなくて、アソコを玉ごとボロンとジッパーから出してくださぁ〜いなのだが。
もうぉ〜、いあやぁ〜ん。エッチィ〜！ 見たい！日本男児の……。うふふふ。
「メグミさん、顔赤いね？ もう酔ったの？」
「えっ？ 赤い？ あっそうなの。そうね、酔ったみたい」と
しどろもどろに答える私。
お酒を飲んでも顔は赤くならないタイプなのだが、ハットリ石川くんの一物を想像して赤面してしまいました！なんて言えはずがない。
心なしかハットリくんの顔がにやけているように見える。
私と一緒にいて楽しいからに違いない！
それに、私の胸の谷間をちらちらと見ているのがありありと分かる。
これこそ胸の谷間が見える服も着てきた甲斐があるというもの。
見て欲しくて着てきたのだ。
その下には高級勝負下着をつけていることをこの段階では知る由もないハットリくん。
お刺身を食べながら、目の前にはハットリ石川くんがいて、しかも同じお皿から同じものを食べているんだと感動しながら胸を熱くしつつも、さっきから気になることがあるのだ。
私たちの隣に座る男女。
女がハイトーンの甘えた声。男性は見るからにサラリーマンで彼の目は完全に瞳孔が開いている。カップルと呼ぶには変。女は驚くくらい厚化粧で、目の回りはキラキラしていて、居酒屋では輝き過ぎだ。
これからステージですか？のゴージャスなア
ップな髪型。彼女の着ている服は普通のスーツでちぐはぐな感じなのだ！
＊＊＊
一時間後、とうとうピアノ・バーに向けて出発することになった。
「日本じゃないから、ホステスはプロじゃないんだよ。学生がバイトでしているから、キャバクラのような感じだよ」と説明してくれる。
日本でも上司に連れられていわゆる「女の子」がいるスナックには何度か行ったことがある。
行き先はクラブ『Z』。
初めて行く店そうで、女の子がかわいいぃ〜と評判らしい。ニューヨーク在住の日本男性の間でだということだろう。
ピアノ・バーは居酒屋『R』から数ブロック先だ。
並んでストリートを歩く。
ハットリ石川くんが私の手を握ってきた。
それも握った後、指と指の間に指を入れてきた。
肉感的な指。指の関節と間接の間の指の肉がふくふくしている。ハットリくんも私が好きな、爪をきっちり切りそろえているタイプなので、さらに妄想が深まる。
ホステスのいるピアノ・バーに男と手をつなでいくという倒錯と呼べるまでには倒錯はしていないが、まぁちょっと変わった状況ではあるのは確かで、この不思議さ
に酔いつつ、二人で手をつないで歩いていった。
＊＊＊
目的のピアノ・バーに着いた。
ドアを開けると、二十歳そこそこの若い男性が迎えてくれた。
「いらっしゃいませ〜」。
スーツに着られてしまっている様子だ。
「お客様、テーブルかカウンターのどちらに致しましょうか？」
「テーブルにして」と答えるハットリくんの答えっぷりに“慣れ”を感じる。
「女の子はどういたしますか？」
「ここ、初めてだから……。特には」
「初めてのご来店ですか、それはありがとうございます。こちらのテーブルにどうぞ」とホスト風の男性に案内されて店内に入る。
ニューヨークのピアノ・バーだから、何か特別なこと、例えば、Go-Goガールが踊っているとか、強烈に破廉恥なことが起こっているのかと期待していたのだが、ひとことで表現するならば「そこは日本だった」。
暗くムーディーな照明で、ソファーがあり、テーブルがあり、天上には豪華なシャンデリアがあり、棚には高級そうなお酒が並び、クラブといえばの巨大な花瓶に花がてんこもりに生けられてあった。
スーツを着ている男性と「女の子」が隣に座って飲んでいる。
ベルベットのソファに座る。
隣にハットリくんが座ってくる。
さながらホストクラブかしら〜、なんて一人で喜んでいると、
「こんばんは〜。ありさでぇ〜す。失礼しまぁ〜す」
「こんばんは。マユでぇ〜す！失礼しまぁ〜す」と演歌歌手のようなきらびやかなドレスを着たホステスさんが登場！
香水の匂い、プンプンだ！
ふと隣に座る彼を見ると、目がキラキラ輝いている。
キラキラァ〜！
さっき居酒屋『R』で、私と一緒にいてにやけていると思っていた以上のにやけ顔。
認めたくはないが、論より証拠。
「あぁぁ〜！ハットリくん、あなたは本当にホステスが好きなのね？ 」と心の中だが叫ばずにはいられなかった。
ありさ嬢とマユ嬢、二人とも若いし、かわいい……。
お店に入ってまだ3分。胸の奥がもやもや。目もしばしばしてきた。
あっ！こ、これって嫉妬？
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