Deeeeep NY　女の夜遊びコミュのその4：開脚！愛のお餞別大作戦の巻

↑高級ランジェリーを扱う　　　　　
La Petite Coquette（ラ・プチ・コケット）


〜つづき

　開脚！V字！他で汗をかき、かなりクタクタの参加者。

「レッスン最後は、セクシー・ウォークです」
キンバリー先生が、見本をみせてくれる。
直線の上を歩くように、右、左と交互に見えない直線の上に足を出す。脚は長く見え、お尻は自然と左右に揺れるのでセクシーとなるわけだ。キャットウォークを歩くファッション・モデルのようだ。

（1）交互に足を出して歩いた後に
（2）半身を斜めにして
（3）右肩を落とし
（4）決めのセクシー・フェースをして
（5）首にスナップをかけながら
（6）後ろを向き
（7）交互に足を出す歩行で戻って行く。

　セックス・アンド・ザ・シティで、番組の最後に4人がブルックリン・ブリッジで歩くシーンを思い出していただきたい。
まさにキャリーが首（顔）にスナップをかけている、アレだ。

　セクシー・ウォークを一列になって全員でする。キンバリー先生はもちろんだが、生徒全員がセクシーに見えた。表情もポーズも自信に満ちあふれていた。
　私も鏡に写る自分を見て、このエクササイズを始めた1時間前と比べて、とってもセクシーになった（気がした）。

　翌日、緑子から「筋肉痛だよ〜」という電話があった。私も内股、お尻の下が筋肉痛で痛かったが、愛の成就のための痛み。嬉しい痛みだ。

＊＊＊

　京大ダーリンにデートのお誘いメールを送るも返事がない。
英語でいうところのSilent Rejection／サイレント・リジェクション（沈黙で拒否）かと不安で胸がいっぱいになる。
　不安にさいなまされながらも、いつでも決行日S-DAY　（ストリップの日)が来てもいいように、ストリップ・エクササイズの自己練は欠かさない。

　京大ダーリンが帰国する日が近づく。

　共通の友人から連絡が来て、ダーリンの送別会を某居酒屋でカジュアルに開催するとのこと。会えないと諦めていたから、友人の招待は本当に嬉しかった。

　当日。

　脇毛もすね毛も丹念に剃り、陰毛もきれいにトリムした。
胸の谷間を強調するブラウスに、タイトスカート。その下には以前取材し、セックス・アンド・ザ・シティで登場する下着を提供しているLa Petite Coquetteで購入した、イタリアのLA PERLA（ラ・ペルラ）のちょっとスケスケの黒のスリップを身に着けた。ブラとパンティは同店から購入したフランスのランジェリー・ブランド、Princess Tam-Tam。パンティはレース仕様で透けているが、ボーイズ・カットなのでセクシーの中にもお茶目な感じを出そうという私なりの演出だ。網タイツも穿いた。　

　自宅の姿見の前で最後の自己練。
　基本形からセクシー・ウォークまでひと通りこなす。
「私ってセクシーだわ！　はぁ〜」
　高級ランジェリーの威力も手伝い、ため息まで漏らし思いっきり自己陶酔する私。

　私はコンドームを２個バックにしのばぜ、いや2個で足りるだろうかと考え直して全部で10個を入れた。
　10個よ、ダーリン。頑張ってねっ！　

　私のアパート？　彼のアパート？　それともホテルかしらん？
場所はどうでもいい。密室なら。
準備万端！
　ストリップの枕詞でもある必須のハイヒールを履き、私は愛するダーリンのいるミッドタウンの居酒屋へ出陣した。

　誘うのは、送別会が終わった後だ！

　約10名が送別会に来ていた。
　何か話したいと思うが席が遠い。席が遠くても言える「お忙しい所、わざわざお越しくださってありがとう」の社交辞令もない。　乾杯しても、彼は私とは目も合わせない。

　時間はいたずらに過ぎるばかり。　
　
　みんなお酒もすすみ、ほろ酔い気分になった頃、
　京大ダーリンを紹介してくれた共通の友人が
「今度、講談社からメグミ君の本が出るんだよ」
とさりげなく私の書いたちょっとエッチで危ない旅のコラム
Deeeeep! New Yorkについて宣伝してくれる。
「どんな本なの？」と誰かが聞いた。
「講談社ということは、小説？　純文学とか？」と別の人も聞いてきた。

　私は根が正直で、素直な人間だ。
「下ネタです」
　　
　みんな一斉に笑う。
　私はダーリンを見る。
　目が合った。私を無視し続けたダーリンが私を見た。
恐ろしく冷たい目だった。軽蔑した目だった。彼だけが笑っていなかった……。

　あちゃ〜。

　直球じゃなく、もっと気を利かして言えなかったのか。
例えば『ニューヨークにおけるフロイト的リビトーがモンゴロイドの女性ホルモンに及ぼす実験的考察』とか。京大卒の秀才エリート・ダーリンから少しでも尊敬してもらえる様に、なんちゃってでもアカデミック風に言えなかったのか、と後悔する。

　しかし、気取ったところで、ニューヨークのSMクラブに行って女王様に会い、全裸（正真正銘の全裸でチンチン振り降り〜）で踊るゲイのショーを観て、Go Go ボーイに駅弁（体位）スタイルで股間を直撃された話を書いているのだ。

　自分が書いたことに自信を持てないでどうする　菊楽　恵よ！
　読者に失礼ではないか。
　だから、「下ネタ」と言ったことに自信を持って良いのだ（だよね〜？）

　私とダーリンの間だけに流れる雰囲気は気まずいまま送別会はお開きとなった。
　居酒屋の外で参加者それぞれお別れを言っている。私の番になった。

「この後、お時間ありますか？」

という何度も復唱したフレーズの代わりに私の口から出た言葉は「お元気で」だけだった。京大ダーリンは口をへの字にしたまま無言で下を向いてしまった。

　誘えなかった。
　胸が痛かった。
　そして内股も痛かった。


＊＊＊


　京大ダーリンが乗る日本行きの飛行機が出発する時刻、私は空を見上げた。ニューヨークの空は、秋の空で深い深い青色だった。（↑上記の右側写真です）

　未開封のコンドームはひっそりと私の机の中にある。

　開脚！愛のお餞別大作戦　悲しみのまま、次回へつづく