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a PIGO filmsコミュのみじかいみじかい物語 vol.17

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初夏。

裸になっても寝苦しい夜が続くこの時期。
皮膚まで剥がしたい気分だ。

毎年、七夕を基準に蝉が鳴くタイミングをみてビールの本数を決める。
七夕より前で鳴けばより多くの本数を買い込み、後ならその逆だ。
どうやら今年は他人に迷惑をかける回数がそう多くなさそうだ。
まぁ、それも気持ち次第なんだがね。

海を見たくなった。

車をレンタルしたのは早朝6時。
突然の申し出に心地いい対応で車を用意してもらったレンタル会社の方に感謝しよう。次回から使える割引券もくれた。今日はなんだかいい事ありそうだ。

何故海を見たくなったのか。

1984年公開のセルジオ・レオーネ 監督『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を観たからだ。
だが、公開当時はまだ幼稚園だった私は縄跳びを一生懸命飛ぶことしか頭になかったので、観たのは最近だ。
たまたま家に帰ってテレビを付けたらちょうどそのシーンだけがやけに印象的だったから見入ってしまった。

広大な海の景色が広がり、そこにぽつんとタキシード姿の男が立っている。そして哀愁漂うピアノの音楽。

一瞬だったのでよくわからなかったが、なぜか2歳か3歳の時に両親に抱えられ海へ行った思い出が頭をよぎったのだ。
そして再びその当時の重なった情景を思い出して無性に行きたいと思った。

朝の6時30分。
爆音でCDを聴く。
禁煙車だが、タバコを吸いながら運転をする。
本来ならばその映画音楽の入ったサウンドトラックCDを選ぶのがいいのだろうが、そんなのは関係ない。むしろ重要なのはその雰囲気だ。
音楽には疎い私だが、音楽好きの彼女から適当に焼いてもらったCD-Rの中で
それに近い適当なピアノ音楽を選んだ。
海を見るならやはり太平洋だと決めていた私の車は迷いなく首都高速道路を東へ。
千葉か茨城かで迷ったが、千葉に決めた。

がらがらの首都高速道路のお陰で予定よりも30分も早く着く事が出来た。
まぁ、早く着こうが遅く着こうが関係はないのだが。

適当に車を停めて、ゆっくりと砂浜を歩いてみる。
波風は穏やかで、人の影もない。
太陽に近づき過ぎたせいか、太陽の射す光がいつもより眩しい。
昨日から残っている足跡。
カップルが体と体を寄せ合い海を眺める跡。
子供がはしゃいだ後に転んで鳴きながらパパに抱きかかえてもらった跡。
ダイエット中の女性が走っている跡。
犬を散歩している跡。
鳥の足跡。

そして、ゆっくりと砂浜を歩く僕の足跡。
遠くに広がる海。

じーっと海を眺めた後、私は無言で車に乗り込む。
車内。まだしばらく海をただ、じーっと眺めている。
タバコに火を点ける。深い息を、1つする。
携帯電話を取り出し、彼女に電話を始める。

「あ、おはよう。寝てた? ふふふそうだよね。声がガラガラ蛇みたいだ。うん、いやぁ、久しぶりに早起きしたから、今日どこか行かないかなぁと思って。天気もいいしレンタカー借りてどっかいかない? そうだ、海とかどう? うん、そうそう。まぁ、突然見たくなる時ってない? …うん。うん。わかった。まだ寝てていいよ。車で迎いに行くからさ。うん、はーい…、じゃねー」

携帯電話を切った後、助手席に投げ捨てる。
エンジンを掛ける。
タバコを窓から投げ捨てる。
彼女が寝ている枕元まで車を寄せよう。
そう思いながら、車を走らせる。

彼女の家に向かう途中。
首都高速道路三宅坂JCTで付近で交通事故を起こし僕は死んだ。

***

彼女は寝息を立てていた。
カーテンの隙間から漏れる太陽の光がいつもより眩しかった。

***

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