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a PIGO filmsコミュのみじかいみじかい物語 vol.13

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***

健康のために毎朝ジョギングをし
ひとつ先の駅まで歩き
サラダも食べないとダメだよと誇らしげに語り
毎日2ℓの水を3回に分けて飲み
半身浴で汗を流し、紅茶で体を温めてゆっくり眠る。

そんな毎日を送っていた彼女は
1本のタバコを吸った一週間後に死んだ。

何故彼女がタバコを吸ったのかはわからない。
わかっていることは死ぬ間際、痰に血が混じっていたことだけだ。

彼女はタバコは嫌いだった。
でも、なぜ彼女はタバコを吸ったのか?
そんな予兆みたいなことは何一つ、僕が最後にあった日の一日は
心あたりが見当たらなかった。

*

社会の先生が風邪で休み
自習になって『リバー・ランズ・スルー・イット』を観ながら
欠伸をしながら過ごしていた。
映画の内容は物静か過ぎてブラット・ピットが格好良かった
ぐらいしか思い出せなかった。

午前中なのに真夏日を越える暑さと
負けず嫌いな蝉がお互いの声を張り合っていた。

入道雲は隣町の、さらに向こうの町の空を埋め尽くしていた。
左腕を枕代わりに机に寝そべっていた。

*

「ねぇ? 陸上やってみない?」
入学したての僕は校舎と体育館を結ぶ渡り廊下で
新入生を勧誘しようと必死に声を上げている部活動の先輩方の
バーゲンセールを抜けた、トイレの横の理科実験室準備室の前に
弾き飛ばされた僕の体を支えてくれたのが彼女だった。

「じゃあ、ダウンして、体操した人から帰っていいよ〜」
いつも以上に声を張り上げ、部員に声を掛ける彼女は
最後の高校総体県予選に向けて全身に血が巡っていた。
僕はもともと体力の或る方ではなかったので
練習にも付いていけず、早々に切り上げて脇の芝生の上で
彼女の姿を見ていた。彼女は部員が帰った後でも練習していた。

彼女は見事全国大会に出場したが予選で涙を呑んだ。

彼女は卒業した後、上京をして有名な大学にスカウトされ
引き続き陸上競技を続けていたが、大学入学後の彼女は
僕は何も知らなかった。

*

僕は彼女の後を追うように上京したが、三流の大学に進学し
三流の生活をして、一流ばかり叫ぶ教授の講義を聞いて過ごした。
大学入学の僕は陸上はしなかったが、新聞を見るときはスポーツ欄を必ず
チェックしていたし、月刊陸上競技を毎月欠かさず立ち読みをしていた。

或る晴れた日のお昼過ぎ、僕の携帯電話が名前も知らない電話番号と着信を
受けたのは学食で友人とくだらない話をしながらTVを見ていた時だった。
TVでは大学の放送部が作っている大学ニュースステーションなる報道番組が
去年の文化祭でグランプリを獲得したミスがにっこりと僕たちに明日の天気の
降水確率を彼女特有の擦れた声とえくぼの見える笑顔で語っていた。
毎日僕達に安らぎを与えていた。

僕は電話に出た。
「もしもし」
「わかる?」
僕はその言葉の意味がよくわからなかった。一瞬困惑した。

初めて出来た大学の友達といった風俗のおねえさんか
合コンで知り合った名前も知らない女の子か
僕の体は熱かった。誤魔化そうか、本当に誰かわからなかった。

「やっぱり、わからないよね。わたし、東。東今日子。覚えてる?」

僕はこの瞬間、心の奥が間違いなく熱くなったのを覚えている。


――その日の午後、僕と彼女は澁谷の駅前の喫茶店で出会った。




***

続

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