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蛍の唄が響き渡る三次元コミュの『アルビオンの香りを捜して』

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1 部屋 (深夜)

 部屋は、薄暗い青の影に抱かれている。時計が指すのは、午前一時過ぎ。薄荷の香りがする、その部屋で女性が一人ベッドの上に無造作に仰向けに倒れ、万華鏡を覗いている。しゃか、しゃか、と廻している音。
 青い影が、彼女を照らして、壁に何かを描いているよう。絵を描いている女性。壁が少しずつ、ゆっくり削れていく。
 ベッドに寄りかかって座り、手鏡を右手に持ち、自分の顔を覗く女性。先程の服は着ていない。以前の格好のまま。唇に、リップを塗っていく。手鏡の奥で、なにかに気付いたのか、目の向きがそちらへ向く。
 文庫本の山に手を伸ばし、体毎動かしてそちらに移り、ざっと簡単に読んでいるように見える仕草。一枚、一枚ページを切り離していく。バラバラに散らばったそれらのページたちを、まとめ、なにかの順番にしたのか、それを読み上げていく。


2 洗面所 (深夜)

 ぱち、と蛍光灯の白い光が、鏡の前にいる女性の姿を捉える。洗面所に俯いて、彼女は苦しそうにしている。彼女の目の前の蛇口からは、水道水が流れ続けていて、顔を洗ったのか、水で顔が濡れている。少し起き上がり、彼女は鏡の中にいるそれと、視線を共有する。親指を使い、唇に勢い良く押し当て、拭うようにリップを剥がしていく。口の周りに滲む、人口で作られた安い色味。シャワーに入る、女性。


3 部屋 (深夜)

 湯気で湿った、髪の毛は乾かしていない。風呂上りのまま、彼女は、机に向かい先程破いた文庫のページたちをちょくちょく覗きながら、なにかを書いている。それを便箋に詰める。時計は午前の三時を指している。


4 海辺 (午前中)

 郵便ポストに手紙が入っていく。
 枯れあがった空の下、堤防の上を女性が一人歩いている。両手を大きく広げて、くるくる、回りながら、前に、確かに前に進んでいく。右手には小さな万華鏡を持ち、左手には少し大きめの旅行カバン。時々、カバンを置き、その万華鏡を覗きながら、望遠鏡のように、海の彼方を観たりする。手に持っている万華鏡を勢い良く投げ捨てる。空から降ってくる熱気の精たちが、彼女の肩や胸をめがけて射し込んでくる。太陽が、この星を包んでいる。

女性(22) (N)「昔のことを思い出して、いつか笑い話にできることが出来たら、それはどんなに幸せなことなのだろうか。私はあの頃から、なにも変わっていない。変わっていってしまうことから私は逃げてきた。今度は私の番だと思うの。だから今日、東京へ行こうと思っているんです。」



                        終

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