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2020年01月23日10:01

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横浜遠征記3「神奈川県立音楽堂」

1/13の横浜遠征記の最後は神奈川県立音楽堂についてです。

桜木町駅から紅葉坂を登っていくと音楽堂が見えてきます。坂を見下ろすと、横浜みなとみらいの高層ビル群が見えます。私が聴いたエリソ・ヴィルサラーゼのピアノ・リサイタルが行われたこの音楽堂は、隣接する県立図書館とともに1954年に開館しました。設計は前川國男。彼はフランスの巨匠ル・コルビュジエに師事し、後に上野の東京文化会館を坂倉準三や吉阪隆正らとともに設計しました。この築65年の音楽堂は、クラシック音楽を主に聴くという点では、わが国でもっとも古いものと言えそうです。
私が横浜市鶴見区に住んでいた25年前は、時々、ここへ音楽を聴きに来ていましたが、今回はそれ以来の訪問となりました。

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外観はコンクリートとガラスのシンプルな構成。ひと昔前のモダニズム。全体のバランスがいいのは、ル・コルビュジエのモジュロールの考え方を採用したからかな。スケール感も悪くない。屋根部の手すりに穴開きの化粧コンクリートブロックを採用しているのも古風。コンリートはなかなかキレイに打設されていました。昔の職人さんが丹精こめて作った感があります。柱や梁の寸法が、今よりも1〜2サイズ小さい感があるのは時代差でしょうか。

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このホールは風除室を通るとすぐにチケットのもぎりがあります。だからエントランスホールがホワイエを兼ねるかたちになっています。モダニズムは基本的には素材の色を活かすのが通例ですが、ポイントになるところを着彩するのは師匠ル・コルビュジエに通じてますね。ラ・トゥーレットの修道院もそうだった。

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ホワイエの吹き抜けは斜めになっているのは、ホールの客席の形状がそのまま表れているからです。ホワイエはガラス張りなので、外部と一体化して開放的になっているのは、今では普通ですが竣工した65年前は画期的だったでしょうw。吹き抜けに設置された階段、今だったら鉄骨で軽快に設計するのが主流ですが、ここではわざわざ手間がかかる鉄筋コンクリートでつくられています。床材はテラゾー。これは、今ではほとんど使われなくなった人造石の研ぎだしです。

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ホールは木質系の材料。シンプルで清楚感があります。
ステージ最前列から最後尾まで傾斜になっています。

竣工当時は「東洋一の響き」と評したホールで、リヒテル、ギレリス、ルプー、ニコライエーワ、プレトニョフらロシア楽派のピアニストも多数、出演したそうです。バブル以降、わが国のコンサートホールは「残響2秒(満席時)」「2,000人収容」を目標に設計されてきましたが、必ずしもすべてのホールが成功しているとは言えません。
この神奈川県立音楽堂は、「残響1.4秒(空席時)」「1,100人収容」と、スペック的には前時代的なものはありますが、ピアノを聴くという点では私は非常に満足できました。残響が適当なのでピアノの音がクリアに聴こえるし、観客席はそれなりの傾斜があるため直接音がよく私の席まで届いていました。

老朽化したという理由で取り壊される建物は多いけれど、この音楽堂はわが国の建築史的にも音楽史的にも価値があります。永続的に使われてほしいと思いました。
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