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本屋をぶらぶら見て歩くのは楽しいもので、特に用もないのに本屋に入ってあれこれ見たりしているといろんな発見があったりする。

一昨日、大手町の丸ビルの中にある「ふたば書房」（元青山ブックセンター）で「山上たつひこ　漫画家生活50周年記念号」というムック本があり、パラパラと見ていたのだが、この中に山上たつひこのインタビューで鴨川つばめについて語ってる部分があって驚いた。小学生のころ熱心に漫画を描いてた僕にとって山上たつひこも鴨川つばめも神なのだ。

70年代半ばの週刊少年チャンピオン（というよりギャグ漫画界）は山上たつひこの「がきデカ」の天下で、絶対的エース級の漫画だったのだが、鴨川つばめの「マカロニほうれん荘」が彗星のごとく現れると、あっという間に「マカロニほうれん荘」の天下になってしまった。僕はこの時期ずっと少年チャンピオンを買い続けていたのでこの"事件"をリアルタイムで知っている。文字通りあっという間だった。僕は「がきデカ」が好きで単行本まで買ってたのに、「マカロニほうれん荘」が登場してからはすっかり「マカロニ」一辺倒になった。当時の小学生の多くはそんな感じだったのではないか。

ムック本のインタビューによると、山上たつひこは鴨川つばめが出てきたときにそのあまりの凄さに「勝てない」とこぼしてたそうだ。そしてあれだけの才能がありながら、あっという間に漫画界から姿を消したことを残念に思ったそうだ。当時の少年チャンピオンに「月とスッポン」を連載していた柳沢きみおも、とある本の中で、突然現れた「マカロニほうれん荘」がトップに君臨していた「がきデカ」をあっという間に抜き差っていく様に背筋が凍る思いがした、ということを書いていた。漫画家たちにとってもよっぽどインパクトがあったのだろう。このときのことが山上たつひこ本人によって語られるというのがなんか凄い。「マカロニほうれん荘」のリズムに関しても触れていて、さすがだなと思った。

そしてもっと凄いのが、このムック本にいろんな漫画家から山上たつひこへのメッセージ（1〜2ページ程度の短い文章）が掲載されているのだが、なんと鴨川つばめの文章も載っている。これがまた凄いもので、他の漫画家はみんな普通に活字で印刷されているのに、鴨川つばめだけ手書き文章！しかもイラスト付き。この文章部分を何故活字に起こさなかったのかはなんとなく分かるのだ。文章内容の飛び具合も凄いがこの手書きのインパクトが凄すぎる。そして、イラストが嬉しい。鴨川つばめがまだ絵を描けるということを知っただけでもかなり貴重なものだ。


山上たつひこ漫画家生活50周年記念号
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