１２月１５日（金）に今年２０２３年４月公開の外国映画「家からの手紙」を観る。
「家からの手紙」（シャンタル・アケルマン）
１９７０年代ニューヨークの延々たる長廻し記録映像に、当時ベルギーから映画修行中だったアケルマンの母からへの手紙をアケルマン自身の朗読で構成した異色ドキュメンタリー。断片映像をナレーションにより異化効果を狙う映画としては、「略称・連続射殺魔」とか「眠り姫」とかの前例があり、このテの「風景映画」は意欲的な映像作家の食指をそそるようだが、創り手が悦に入っている割に私はそれ程ノレないというのが正直なところだ。（まあまあ）
１２月１６日（土）に今年の令和５年３月公開の日本映画「妖怪の孫」を観る。
「妖怪の孫」（内山雄人）
歴代最長の安倍政権の功罪（というか映画としては罪しか描いていないが）を抉ったドキュメンタリー。私としてはここで初めて知ったエピソードもあり興味深い部分もあった。父の安倍晋太郎は夫人と共に全く家庭的なところの無い政治一筋、で、寂しい子供時代を過ごしそれが祖父の岸信介への憧れに通じていったことや、持病の潰瘍性大腸炎は世間が言う以上に重く幼少の頃から病弱であり、国会対応に大勢の医師団が対応していたこと、選挙に強かったのはネットを駆使して若者支持を集めていたことなどである。しかし、それ以外は、ひたすらの権力亡者であり、アベノミクスは結果などどうでもよく権力維持のためであるとか、官僚・マスコミを恐怖で支配し忖度体質を造り上げ、統一教会だろうが反社集団であろうが権力のためなら何でも利用するｅｔｃと、そうだったろうなとの我々の想像範疇を超える物は少ない。しかも、これが日本人体質の底流に通じるあたりの指摘も含め、現在の岸田政権の呪縛にも通底しており暗澹たるやりきれない思いに突き落される。これが現実かも知れないが、一点突破する光が見たかった。（まあまあ）
同日１６日（土）に今年の令和５年６月公開の日本映画「憧れを超えた侍たち 世界一への記録」を観る。
「憧れを超えた侍たち 世界一への記録」（三木慎太郎）
日本中を熱狂させた今春のＷＢＣにおける侍ジャパン世界一までのドキュメント。よく野球は筋書の無いドラマといわれるが、それ以上にドラマチックな見せ場タップリのシリーズだった。でも、こちらが日本人ということもあるが、良い試合は結果を知っていても、大谷翔平の珠玉の名言「今日だけは憧れるのはやめましょう」を筆頭として、繰り返し見て感動的なのは間違いない。（よかった）
１２月１７日（日）に今年２０２３年４月公開の外国映画「一晩中」を観る。
「一晩中」（シャンタル・アケルマン）
ブリュッセルの熱い一夜、夜で顔も定かでない微かな暗闇の中に、街へ繰り出し恋人の腕に飛び込んだり仲違いしたり、バーでダンスを踊りつつとりとめのない会話を交わしたり、静かに夫婦で語り合う等の描写が、アケルマンらしいフィックス長回しであまり意味のないポツリとした会話が、断片的に羅列されていく。いつかそれらが有機的に結び付くのかと期待していたが、９０分の間そんなこともなく、イライラ退屈していたら、夜明けが来て明るくなり街の騒音が戻ってくる変化に、ホッとさせられる。私は、アケルマン長編デビュー作の前半でアンディ・ウォーホルの「スリープ」「エンパイア」に近いものを感じたが、アケルマンの断片描写に何の触発もなくイライラさせられた上に、夜明けでホッとさせられてもネェ…この独りよがりには付き合いきれなかった。（あまりよくなかった）
同日１７日（日）に作年の令和４年３月公開の日本映画「ベイビーわるきゅーれ ２ベイビー」を観る。
「ベイビーわるきゅーれ ２ベイビー」（阪元裕吾）
高石あかりと伊澤彩織のズレた会話の殺し屋コンビが帰って来た。相変わらず現代の女の子らしいチグハグでスッとぼけた会話がユニークで、前作でイマイチ乗れなかった私もこのヘンな感覚に慣れてきた。死体処理係なるものがいて完全証拠隠滅するので決して殺しが表沙汰にならないとの、要はナンセンスお馬鹿映画なのだが、今回の仇役は世間の為にならないヤクザではなく、闇バイトで殺し屋をしている若者二人。協会所属でないので稼ぎがあがらず、ポジションを奪うためにヒロイン二人の抹殺を図るとの相変わらずのナンセンスぶり。坂元裕吾の一番の狙いはガンと格闘のアクションにあり、そこは今度もキレキレだ。ただ、今回は闇バイトで安易に一攫千金を目論む現代一部若者を反映しており、悲劇的結末も自業自得としか思えないし、爽快感にも乏しい。（まあまあ）
１２月２１日（木）に作年の令和４年５月公開の日本映画「流浪の月」を観る。
「流浪の月」（李相日）
ロリコン大学生と、両親を亡くし叔母一家に面倒を見てもらっていて同居息子の性的虐待に耐えていた小５の少女とが、心地良い二人の生活を過ごすも、当然未成年誘拐として処理され、二人は１５年後にふとした再会を果たした結果の波紋が描かれる。主人公以外のサブキャラも心の裏に地獄を抱えており、そのヒリヒリした男女関係が、李相日の圧倒的描写力で活写される。広瀬すず・松坂桃李・横浜琉星・多部未華子・三浦貴大などの若手オールスターオーラを完全に消し去ったその凄みある演出は観るべきものはあるも、私のあまり観たくない世界だけに敢えて…（あまりよくなかった）
全回日記から２１日（木）までに観た映画は次の１２本。
「家からの手紙」「妖怪の孫」「憧れを超えた侍たち 世界一への記録」「一晩中」
「スパイ・ミッション シリアの陰謀」「ゴールデン・エイティーズ」
「難波金融伝 ミナミの帝王 劇場版�将掘．螢好肇蕕梁綵�」
「劇場版 ほんとうにあった怖い話」
「アメリカン・ストーリーズ／食事・家族・哲学」
「ベイビーわるきゅーれ ２ベイビー」「ワンライン／５人の詐欺師たち」
「流浪の月」
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