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2022年07月30日02:06

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台湾発、100%元気なゾンビホラー!「哭悲(こくひ)/The Sadness」

ホラー好き界隈では結構前から話題になっていて、日本でも公開されるのだ!と思っていたら、なんと静岡でも遅れて公開が開始!
ちなみに予告では「ブラックフォン」も来月には公開されるようで、静岡東宝には感謝カンゲキ雨嵐(歌:嵐)です。

グロい、キモい、ヒドいと評判の本作ですが、まあそういう場面は多いですが、そういう描写に頼ったただの見世物映画ではありません。
始まってしばらく観ていれば分かるのですが、非常に映画として良く出来ているのです。
こちらの感情をコントロールし、サスペンスをきっちり盛り上げ、シンプルな面白さで引っ張っていく。
まず、娯楽作品としてとても優秀なのです。

主人公となる1組のカップルの日常、つまりイチャイチャや些細な(でも間違いなく揉める理由による)ケンカ。
隣人との会話。
テレビのニュース。
窓から一瞬見えた、異様な光景。
日常から徐々に異常事態への布石を、短い時間で過不足なく描きます。

映画化もされた日本の漫画「アイアムアヒーロー」を思い出しました。
あの漫画の一番面白かった序盤の部分。
あっという間に、異常で暴力に満ちた世界へ変貌していく恐怖!
あのパニック描写を、実に見事に映像化しているのです。

正確には「死んだ人間が蘇り、人肉を貪る」というゾンビではなく、「突然変異したウィルスにより凶暴になった人間が、そのウィルスを感染していく」という設定ですが、この作品は「正当なゾンビ映画」として位置付けても良いと思います。
最後まで観ると、あのゾンビ映画のオリジナル「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」に共通する部分が非常に多いからです。
また、様々なホラー映画のオマージュシーンも含まれています。

とはいえ、この映画ならではの設定にオリジナリティがあります。
これまでのウィルス系ゾンビと違うのは、感染者は凶暴性や残虐性が抑えられなくなるだけで、感情自体は残っているのです。
人を襲いながら涙を流すのは、その行為に罪悪感があるからなのだそう。
だからこのタイトルというわけですが、なんとも恐ろしい設定を考えたものです・・・。

まずは、この映画というジェットコースターに乗って、グルングルン振り回されてみてください。
難しい事など考える余裕も無く、危機また危機また危機!
なにより襲ってくる感染者たちの顔の素晴らしさです。
「そうか、この映画に出演するために生まれてきたのだ」と誰もが納得する顔と演技。
「凄い特殊メイクでしたね!」と伝えると「いえ、素顔ですよ」とさわやかに応えてくれるのでしょう。
彼らの笑顔と100%元気なハイテンションぶりに、久々に勢いのある映画を観たな!という清々しい気持ちになりました。

笑顔と言えば、この映画は随所にユーモアが散りばめてあります。
特に電車の中で登場するウザオヤジ!
女性にとってはゲロ吐くほど最悪なシーンかもしれません。
彼が、実に純粋な気持ちでセクハラをしているのが分かるところがまた、意地悪いのです。
ツイッターでクソリプをアイドルとかに送っている人が、遂に地上に舞い降りた感じです。

そういう人間らしさを交えつつ血塗れの修羅場を描くから、常に臨場感があります。
今自分がこの状況だったらどうする?
思わずそんな風に考えてしまいます。
優秀なホラーである証拠です。

最初は「イチャイチャしやがって、死ね!」と思った方もいるかもしれない2人の主人公ですが、どちらも人助けをしようとする正義感溢れる好人物であるために、応援せずにはいられません。
「後ろに気を付けろ!」「ちゃんと頭を破壊して!」「バイクよ、もっと走れ!」そんな声を何度も上げたくなるでしょう。
劇場内ではお控えいただき、我慢できない時はトイレまで走ってから叫んでください。

表現はかなり過激ではあるものの、基本的には正統派娯楽パニック・ホラーの傑作ですが、ゾンビ映画の多くがそうであるように、そこには現代の問題がたっぷりと含まれています。
まず、この感染状況は完全に新型コロナを模倣しています。
「あんなものはただの風邪だ!」と冷笑されている場面も描かれます。
まったく役に立たない政府も描かれます。
事態をある程度理解しているはずの科学者は、ではどうか。
急に現実を思い出し、ため息をつく人もいるでしょう。

それにしても、この映画は今後ゾンビホラーを語る上(そういう人もいるのです)、避けて通れない必須科目となるはずです。
一つの到達点であり、新たな出発点でもあります。
とにかく元気なこのパワー!

台湾のホラーは「返校」も「怪怪怪怪物!」も、躊躇や配慮といった言葉を知らない作品でした。
また、未見ですがNetflixの「呪詛」も評判です。
遂に台湾ホラーの時代がやって来たのです!

ホラーというジャンルでは、今年この作品を超えるのは至難の技ではないでしょうか?
ところが、今年はまだ「哭声/コクソン」の監督による「女神の継承」もある。
ジョーダン・ピールの「NOPE/ノープ」もある。
A24からは個人的に気になる「LAMB/ラム」もあるのです。
ホラーファンにはまだまだ忙しい年になりそうです。

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