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2022年03月19日20:03

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声劇台本を作成しました!「相生傘(あい おい がさ)。」

「相生傘(あい おい がさ)。」



※ 金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※

※ 2023.8.31 友人の門叶蓮(@Tokanai_Len)さんが、当台本の登場人物、相生宇鏡(あいおい うきょう)さんと葉ノ下景重(はのもと けいちょう)君のイラストを描いてくださりました。
宇鏡さんは落ち着きとミステリアスさのある魅力を、景重君は宇鏡さんに対し心配な思いを抱えている姿を、それぞれ絵で表現してくださって、とても嬉しく思っています。
当然の事ながら、無断転載や自作発言等は厳禁です。




【想定人数】

男:女→1:1



【キャラクター紹介】

相生 宇鏡(あいおい うきょう):社会人十年目。女性。葉ノ下 景重とは同い年だが職場は異なる。手芸サークル代表。

葉ノ下 景重(はのもと けいちょう):社会人六年目。男性。。手芸サークル副代表。



【想定時間】

22分程度



※ この作品は声劇台本「二方美人。」のシリーズ作です。
単独のお話としても楽しんでいただけるよう作っていますが、
もし良ければ「二方美人。」はじめ、シリーズ内の他作品にも目を通してくださるとさいわいです。

※「二方美人。」へのリンク。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1958862956&owner_id=24167653



※「二方美人。」シリーズ及び関連作品のみをまとめたリンク。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964303733&owner_id=24167653


※当シリーズの中でも次の二つが特に関連性の深いものとなっています。
「珠玉の真面目(しゅぎょくのしんめんもく。)。」
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964552701&owner_id=24167653

「相思相生(そうしそうじょう)。」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1980080752&owner_id=24167653









【本編】

宇鏡「げ、これもしかして降ってきてる?」

景重「本当だ、少しくらいの雨なら……」

宇鏡「いや、まず、これ、結構強い!急に何この雨!」

景重「っ、相生(あいおい)!向こうに大きな木がある、あそこなら大丈夫のはずだ!」

宇鏡「え、ああ、あれ!分かった!」





宇鏡「ひゃあ、天気予報は晴れって言ってたのよ…?」

景重「通り雨だとは思うが……雨が去るまではここに居るしかないな。」

宇鏡「全くよ。あーあ、べたべたするぅ。」

景重「この鞄の中にタオルが入ってるから使うと良い。俺は今手が塞がってる。」

宇鏡「あら、ありがと。用意が良いのね。」

景重「……。」

宇鏡「……ん、まあこんなもんで良いでしょ。動かないでね、キミも拭いたげる。」

景重「っああ、悪い。」

宇鏡「……これで良し。タオル、鞄に戻しておくわね。あと買い物袋分けてよ。ちょっとくらい持つ。」

景重「頼む。」

宇鏡「んっ……。……ねえ、葉ノ下(はのもと)君。」

景重「どうした。」

宇鏡「今日、楽しかった。」

景重「それは良かった。」

宇鏡「今日さ、買い物付き合ってって言ってきたじゃん?」

景重「そうだな。」

宇鏡「この前、雪那(せつな)さんのお見舞いの品買うの途中であんな事になっちゃったから。それで改めてみんなで集まって買いに行くみたいな話かなって思ってたのに。それとは別件で?何買うか決めても無いでしかも二人きりって言うからすんごい驚いたわよ。」

景重「俺自身も自分がそんな心境になった事に驚いた。」

宇鏡「二人っきりで出かけるなんて何年振りよ。……もしかしてあの事、気にした?気の毒に思ってくれたの?」

景重「傘の事か。」

宇鏡「そう。……壊れちゃったじゃない。」

景重「気の毒、と言うのは違う。お前のお陰でみんな助かって、凄い奴だと思った。」

宇鏡「……私ってほら、血の気が多い方だと思うから。蛇行運転しながら私達に突っ込んでくる車を見て咄嗟に傘投げつけてぶつけたの、我ながら喧嘩っ早い性格だなって思うわ。全く、雪那さんのお見舞いに行こうって事でみんなでお土産買おうとしてたのに、更にサークルから入院患者を増やしてたら洒落にならないわよ。」

景重「それで居眠りしていた運転手が目を覚まして、結果誰も怪我せずに済んだ。ただ、お前の傘はもう二度と使えなくなった。」

宇鏡「フロントガラス弁償しろとか言われなくて良かったわぁ。」

景重「そんな理不尽があって良いわけがないからな。……お前、あの傘、特別な物だったんだろ。」

宇鏡「……気づいてたんだ。」

景重「柄の部分に少し、青色のペンキが着いていたからな。あれから5年以上も経ってるってのに、お前は時々俺の想像を超えてくる。」

宇鏡「……ああ、だよね。あの青色、なんであんなとこに着いてたの。……うん、あれ。初めて会った時、ずぶ濡れの私に、見ず知らずのキミが差してくれた傘。一緒に入った傘。……その後お店でちょっと良い傘買って、お礼にそれあげるからキミの傘帰りに使わせてって言って交換した。あれ、あの傘。ずっと持ってた。……違うのよ。今ならもう色々大丈夫だし、キミも今は彼女居ないし、今だからこそ使っても良いのかなって思って。ほら、色々気にしないでその傘使えてたら、その方が本当に大丈夫っていうか清い友情っていうか。」

景重「清い、なあ。」

宇鏡「自分が歪んでる事くらい自覚してる。」

景重「……ああ、俺もだ。歪んでいる自覚はある。」

宇鏡「励まそうとしてくれたんでしょ?ありがとうね、楽しかったっていうのは本当よ。まあ、あれよ。何か一つの事を切っ掛けに全部気持ちが吹っ切れて明るくなるとか、そういう簡単な話にはならないけど、ちょっとずつ立ち直る。少なくとも今日、キミのお陰で立ち直る欠片を少しだけ手に入れられた。本当にありがとう。」

景重「そいつは良かった。」

宇鏡「ええ、良かった。今日という日があって良かった。」

景重「相生(あいおい)。」

宇鏡「なあに?」

景重「俺と付き合ってくれないか。」

宇鏡「っ!?え、買い物に、とか?そういう紛らわしいあれ……?」

景重「いや。はっきりと言うと、恋人として交際してほしい。」

宇鏡「ばっか!そういうの一番だめ!キミは私とはそういうの望んでないんでしょ!?だからキミ、ずっと断ってきてて、その、私が思い出の傘壊しちゃって落ち込んでるからって、そうやって可哀想だからって!そんなの望んでない!」

景重「そうじゃない。俺がお前が悲しんでるからってそれに同情して付き合うなんて言い出す人間じゃないの、お前が一番よく知ってるはずだろ。」

宇鏡「っま、あ、確かに、そうだけど。」

景重「……気の毒に思う気持ちは確かにあったが、それで慰めたくてこんな事言ってるわけじゃない。ずっとあの傘大事にしてて、そんな大事な物を失ってまでみんなを守って。その姿を見てただ無性に、相生(あいおい)と付き合いたいと思った。一緒に暮らしたいと思った。だからその気持ちを今こうして伝えている。それだけだ。」

宇鏡「……ははぁん。つまるところ、私の格好良いとこ見て惚れたと。」

景重「そうだな。」

宇鏡「その先で結婚したいって思ってる?」

景重「それは勿論、お前と結婚したい。そのためにも可能ならすぐにでも同棲したい。」

宇鏡「……そっか、それは…うん。本当…なのよね。嘘吐くわけないし。」

景重「ああ、そうだ。嘘な訳がない。」

宇鏡「そうよね……。だってキミ、同情でそんな事言い出すのなら私がキミに振られてからずっと苦しんでたの、ずっと見続けてなんてなかったでしょうからね。ああ、でも、それならさぁ……。」

景重「……。」

宇鏡「あああ、もう!それならそれで!なんでもっと!私もう……!もう!自分の年なんて言いたくないっての!私はね!私は!私……なんていうか、結婚できないでずっと一人で暮らす事になってもそれはそれで良いかなーなんて思うようになってきてたのよ。だってサークルの運営はたとえ一人になってもずっとやっていくし、別に家に帰って一人でも、この世に一人ってわけじゃないし。……キミだってきっといつかは他に良い人見つけて、また誰かと付き合う事になって、それで今度はちゃんと上手くいって結婚して、そしたらなんていうか、忙しくなるだろうし……私がほら、今はどうでも一度でもキミの事好きになって付き合ってほしいなんて言い出した女だし、そんな女が近くに居たら相手の人も嫌だろうし……やっぱりいつかキミはサークル運営からは抜けていくだろうって。でもね、それでも良いって思うようになってきてた。だってキミがくれた気持ちや時間は現実に存在したわけで、それは変わらないから。キミが今後私の前から居なくなって、段々疎遠になっていって、もう一生姿を見る事も声を聞く事もなくなったとしても、私がキミからもらったものを忘れない限り、私がキミのお陰で変わった私である限り、私の中にずっとキミは居て、私は孤独にはならないって。そんな風に思えるようになってきてて……ああ、もう!私の中でやっとのこと、話が綺麗にまとまりつつあったのよ!清く美しい?感情にたどり着きつつあったのに!惚れるならもっと早く惚れなさいよ!」

景重「そんな気持ちに、というか。そんな発想に至れる奴は中々居ないだろうよ。やっぱりお前は凄い奴だ。」

宇鏡「ああっ!はぁ…………はぁ……、うぅぅぅん、んんんんんっ……!」

景重「お前も、自分の気持ちに素直な返事をくれたら良い。」

宇鏡「頭が追い付かない、だけで!嬉しい……嬉しいに決まってんでしょ、嬉しいわよ、それが素直な気持ち!……その、私の事、好き?」

景重「ああ、好きだ。」

宇鏡「……私も、好き。……別に、こうね。ずっと一緒に居る事だけが全てじゃないって思ってたし、さっき言ったみたいに、キミといつか一生の別れを迎える事になっても私はそれでも……良かった?っていうか、それでも私にとっては最高のハッピーエンドだった。それはそれで最高のハッピーエンドだって事にしてみせるってつもりで居た。でもね、せっかくキミが私を選んでくれるなら、やっぱりずっと一緒に居て?」

景重「……ありがとう。これからは恋人として、よろしく頼む。宇鏡(うきょう)。」

宇鏡「年っ、考えなさいって……。大体キミね、ほんと。最初会った時からそうだった。っていうか、今だから言うけど。いくら私がずぶ濡れだったからって、初対面の女にいきなり相合傘し出す男なんて映画の中でしか見た事なかったっての。このかっこつけ。」

景重「冷静に考えたらな……俺もそこは正直思った。」

宇鏡「……っふふふ、やっぱり?流石に自分でも思ったんだ。……キミ、良かったわね。私がそこにときめいてくれる女で。なにこのかっこつけ、不審者って思われてそそくさと立ち去られてたら結構きつかったでしょ?」

景重「そうだな、そんな事になったら落ち込む。こっちは純粋な善意でやってたってのに。」

宇鏡「けーいちょう。」

景重「なんだ、宇鏡。」

宇鏡「あっはっは、あは、あはっはっは。けーいちょう!」

景重「なんだぁ、宇鏡。」

宇鏡「えへへへへへ。あーあー、でもなんだかねえ、不平等じゃない?」

景重「今度は何を言い出すんだよ。」

宇鏡「だってぇ、私は振られて何年も何年も経って今やっとこうして付き合えるんでしょ?なのにキミは好きになったからって言って私に振られないですぐに付き合えるんだから、不公平よ。」

景重「それは……そうなのか?」

宇鏡「そ、不公平。あーあ、失敗しちゃったぁ。一回返事を保留にして一週間くらい焦らしてやれば良かったかしら。」

景重「悪趣味はやめろ、俺だって今まで別に意地悪で振ってたわけじゃない。あくまで真剣に振ってたんだ。」

宇鏡「ふぅーん。そーいやさ、キミって私の事は……まあ、その。昔、私のこと、自分から周りに都合良く利用されに行くのが気に入らないって言ってたけど、それ以前の問題で誰が相手でも付き合う気はない、みたいな事言ってたじゃない。あれって何か理由あったの?」

景重「……そんな改まって言うような事でも無いが。俺は良い奴が嫌な目に遭うのが嫌だってのをずっと思っていた。でもってこれまで何度か色恋沙汰で失敗してきて。せっかく好きになった、幸せになってほしいと思う良い奴が、俺と付き合った事で嫌な目に遭って傷ついていくのが嫌になった。だからだろうな、相手が良い奴なら良い奴な程、そういう関係になりたい気持ちが湧かなくなっていった。」

宇鏡「でも今回は違ったんだ。」

景重「そうだな、不思議だ。傷つけたくないのは当たり前だけどな。」

宇鏡「あー……ごめん、あのね、自分で訊いておいてちょっと焼きもち。」

景重「なんでだよ。」

宇鏡「あーっ、もう。うん!あーあ、それにしても?雨、中々止まないわね!?この木の下から出らんないじゃないの。」

景重「……仕方ない、この傘使うか。」

宇鏡「え、傘?持ってたの?」

景重「ああ、二人で入るには小さいがな。」

宇鏡「あー、その。ずっと邪魔そうだなあって思ってた、そのなんか竹刀入ってそうなの。中身傘だったんだ。」

景重「そうだな……あの牛丼屋の隣のビルに避難するぞ。そこまでの少しの間くらいなら気休めにはなるだろ。……これ、見覚えないか?」

宇鏡「え…?……あ、ああ!それってあの時の…。」

景重「交換って言ってお前が買ってきた傘だ。捨てるのも忍びなくてずっと仕舞っておいてあった。」

宇鏡「っわぁ、いっけないんだぁ!」

景重「お前が壊した傘、あれはもう戻って来なくても。これを返す。俺にとってはあの傘と同じくらい、特別な傘だ。」

宇鏡「……そっか、特別。」

景重「ああ、特別だ。」

宇鏡「ありがとう、大事にする。」

景重「頼む。あの傘と同じくらい、大事にしてくれ。」

宇鏡「うん。…………ほら、傘持ったげるから、これとこれ預かって。速足(はやあし)で行くよ、濡れちゃう。」

景重「この、あんまり先行くな。ただでさえ狭い傘なんだ。」

宇鏡「人があげた傘を狭いとかゆーな、ばーっか。」











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