「赤ひげ」

「午前１０時の映画祭」にて。
恥ずかしながら、この名作を観たことが無かった。
まさに名作の名が相応しい。

美食で肥満する殿様が一方で、その日の食事にも困る庶民達。
貧困の極みの彼らが病気になっても医者は診てくれない。
唯一の頼みの綱は小石川養生所。
金持ち、殿様からは高い診療費を取り、奉行を脅迫して金を巻き上げる等、時には悪徳医師を演ずる赤ひげの元に派遣された、長崎帰りを鼻にかける若き医師。
反発しながらも次第に赤ひげの人間性に惹かれて行く。
「政治が貧困や無知をどうにかしようとしたことがあるか！」赤ひげの怒りは現代にも通じる。
庶民の頼りの綱の養生所の予算をバッサリ削減しようとする幕府は、今の政府のようだ。

香川京子、山崎努、二木てるみの鬼気迫る演技。帝王クロサワの辣腕の賜物か。
計算されつくした照明、光の効果が凄い。
大部屋女優と思われる「賄いのオバサン達」、不幸の塊のような六助とその娘達の演技も凄い。
大物杉村春子の強欲遣り手婆も凄い！
「触ると手が腐るぞ！」赤ひげの名言だ。

おまさ役の内藤洋子の可憐さよ。今なら多部未華子の役だな。

加山雄三はそんなに好きではない俺だが、この作品と「独立愚連隊西へ」の演技には最高の賛辞を送りたい。