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2020年09月16日13:37

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ガム 3場

人道所長 そうだ、こいつは宇宙のハナシでもなければ太古の物語でもない。ただのドブ川の話だ。
南里 ドブ川に捨てるような話ですか。
人道所長 いや、アポロ11号が宇宙に向かった同日、草の船にのってハイエルダールという男が、大西洋の荒波を越えて太古へと向かった。その時を同じくして、このほど近いドブ川に一本の電信柱が、アキカンやワラクズにまみれながら、ぷかりぷかりとただよっていた。その電信柱の上には、一匹の兎と一匹の少年がおりかさなるように死んでいた。ドブ川に捨てられた者の話だ。



十二単衣の君 お前にオレの景色が見えるか。宇宙の果てと、なにひとつ変らないこの景色が。宇宙と違うところといえば、星がみえないということくらいだ。それを除けば宇宙と同じだ。風が吹かない。蝿のように風は止っている。音もきこえない。ロバのようだ。けれどもそいつを除けば、宇宙と少しも変りはしない。なにも見えないことを除けば、青い地球が見えないということを除けば、紫の色をしたリベリアの夕べが見えないことを除けば、くがねの如く輝いたオリュンポスの見えないことを除けば、けしの花に染まったパレスチナの死海のあけぼのの、赤銅色のイタリアの、たおやかなボルドーの乳房のそのなにもかもが見えないことを除けば、・・・これでも宇宙と似ているのか、このひるこの里が。しかし俺は覚えているぞ。この瞳から無理矢理地球を、ボロッボロッと剥ぎとられた日の、あの青い地球を。百億年も前の日の光を。頭の上を、ようやくすぎていった百億年の光を越えて、ようやく返ってきたつもりの俺と兎が、また続いていく。百億年の黒い光の中へ放り出された、その俺の景色がお前に見えるか。
サラリと衣脱ぎ捨てて、畸形の運河をさかのぼり、名にしおうコジキは草の船をのりついで、ひるこの里から、たれに語らん、十二単衣の衣をば、まずは一枚脱ぎ捨てて・・・。
ハラリと九(ここのつ)単衣も脱ぎ捨ててやがて七つが、六つ、五つ、身の切れるとも三単衣。
やがて、二単衣の下から現れしはヒトエ。
ひるこから人へ。
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