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2021年02月14日10:21

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詐称も矛盾も眠気も、人間だもの「聖なる犯罪者」

全然悪い映画ではないし、お話自体は面白い実話を元にしただけあって十分面白いし、結末の呆気にとられる感じも好きなのですが、基本的に眠くなる映画で困りました。
これは自分の責任もあります。
家でも劇場でも、とにかく眠くなってしまう事が多いのです。
年齢もあるのかもしれませんが、でも2回目に観た「ヘレディタリー」とか、アニメの「メイドインアビス」なんかは少しも眠くならないので、よっぽど面白ければ大丈夫みたいです。

実話を元にした映画って最近は多くて、賞なんかをたくさん獲ったりする名作も少なくありません。
そりゃ面白い話を拾ってきて映画化しているのだから、面白いのは当たり前だし、なんかずるくないか、自分で思いつけよ!と思う人もいるでしょう。
でも、案外面白い実話を元にしたのに、ちっとも面白くならなかった映画は少なくないのではないかと思います。

実際にあった話をそのまま淡々とやるくらいなら、ドキュメンタリーとして見せた方が絶対に面白いはずです。
テレビの再現VTRみたいなのはあくまで部品ですから、映画として再構成するにはまずどこを中心にするか、そのためにはどういうジャンルでやるのが効果的か、何を足して何を引くか、色々考えなくてはならないのです。
成功している作品を思い返すと、コメディーが多い気がしますが、感動話でもサスペンスでも色々あります。
そして、ジャンルによってそれぞれ「足し引き」するものが変わっていくわけです。
結末だって、どこで終わらせるかは変わってくるでしょう。

「聖なる犯罪者」は、少年院から出たばかりの男がニセ神父として活躍するお話です。
刑務所から出た男がその足で人を殺しに行くのが「アングスト」でしたが、こちらは偽物とは言え神父ですから穏やかなものです。
ちなみに、舞台となったポーランドではニセ神父事件は頻繁に起きているそうです・・・。

そんなニセ神父が、6人の死者が出た交通事故について、同様に亡くなった加害者とされている男が葬儀もされず、その妻も迫害を受けている状況を打破しようとするのが、話の中心となっていきます。
罪と許しをテーマにしている事は、キリスト教に疎い僕にも分かります。
偽物であっても正しい事をしようとする主人公と、彼によって救われる人々。
しかし、彼は偽物ですから当然危機がやってくるわけです。

別に実話ベースじゃなくても、こういう創作話は多くあります。
偽物なのにみんなの人気者になって、結局最後はバレてしまうけどみんなの後押しにより、本物の存在となる・・・。
創作ならではの能天気でベタな展開ですが、間違いなく面白くはなります。
もちろん、この作品はそうしたありがちな流れには反する様な、厳しい展開となります。

ただ、この映画は全体として非常に淡々とし過ぎていて、楽しい感じや怖い感じといった感情を揺さぶる演出を意図的に避けているため、かなり退屈なのです。
終盤まではこちらの想定を超える展開も登場しません。
少年院仲間のルックスが非常に凶悪で、これは恐ろしい事になるぞ!と期待しても、まあそうでもないのです。
ラストの展開だけ、「おい、一体どうした」と思わせる唐突さでギョッとしますが、そういうのがもっと随所にあって欲しかったです。

コメディーにしたらシンプルに面白かったと思いますし、サスペンスにするならもっと怖くして欲しい。
ヒューマンドラマにするなら、もう少し人々との心の交流と、何より主人公の心を描かないと響きません。
罪とは?許しとは?
おそらくそう考えさせる内容にしたかったと思うのですが、ちょっと突き放し過ぎの様な気がします。

脚本を書いた人のインタビューがネット上にあったので読みましたが、ラストの案はたくさんあって、最終的に監督が選んだものが採用されたとの事でした。
このテーマ性なら、ラストは最初からキッパリと決まっていないとおかしくないですか?
明確なゴールに向けて作られていないから、こんなに中途半端な印象を(そしてラストは唐突感を)受けてしまうのでしょう。

個人的にこの映画から感じた事は、多くの人を救う言葉を持つ人が、必ずしも自分自身を救えるわけではないという事です。
こう考えれば人生は楽になる、こんな風な考え方は自分自身を追い詰めるだけだ、そんなアドバイスが丁寧にでき、自分でもきちんと理解出来ているのに、自分にはそれが出来ない人は少なくないのではないでしょうか。

誰もが納得する素晴らしい教えを説き、それで人々が救われる事を心の底から願っている人間が、一方では家族を虐待したり、自殺未遂をしたり、犯罪に手を染めたりする事は、決して不可解な事ではないと思います。
また、犯罪をしたから、矛盾している行動をしているからと言って、その人が語った言葉がまるで間違っているというわけでもないのです。
それで救われる人もいるのです。

まあ、これは映画が終わり、眠気が覚めてから無理やり考えた事なので、的外れな可能性もあります。
「前科者でも神父になれるようにしてやれよ」というシンプルな訴えだったかもしれませんが、それならもっとベタな人情モノにした方が良いでしょうね。
「ちゃんとした状態で観てからグズグズ言えや!まさに寝言だろ!」と言われたら、何も言えません。
いつか赦される事を祈るばかりです。
とりあえず、ウトウトしてすみませんでした!

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