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2019年12月01日14:38

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もぐる

[あらすじ] 老母がショートステイの間に、亡父の書斎を片付ける。
滑り止めワックスを掛けて、老犬ジーロが落ち着いて過ごせる場所を作るのだ。


85歳の爺さんが40年ほど過ごした部屋だ。
生きてきた時を示す物が山ほど詰まっている。
写真、手紙、ノート、原稿用紙の束、日記帳。
死んだ息子の記録、その子を産んだ前妻の物。
以前の仕事のノート、卒業証書いろいろ。

こういった、亡夫の品々を、母は捨てたがらない。
それで、私は亡父の物の手前やら上やらに自分の物を置いて、過ごしていた。
しかし、それではスペースは使いづらい。

だから、今、母の目に付かないように、留守の間に片付けをしている。
写真と日記以外は、ほとんど捨てる。
壁面を埋めている本も、古い洋書が多い。
どんどん束ねて、捨てる。
出版社からの大きな封書も捨てる。
原稿も捨てる。



思えば、兄が死んだ後も同様だった。
私は小学2年生だった。
兄のいなくなった部屋は、いつまでも物がそのままにしてあって、
ただ、埃がかぶらないように、机や棚にシーツが被せてあった。
陰気な部屋だった。東南側なのに。

私が兄の部屋を使えるようになったのは、いつのことだったろうか。
東側の部屋は早起きの私にとって、楽しかった。
夏の夜明け前には窓から流星群が見えた。



どんどん物を捨て、積み上がっている本箱を拭いては部屋の外に出した。
床が広くなった。
拭き掃除して、乾かして、ワックスを掛けて、乾かして。

気分が良い。



亡父の物の上層の、私の物の層に、私の卒業証書も有る。
10年前に卒業した、鍼灸専門学校のものだ。

専門学校の時の同級生が、富士山麓の町に住んでいる。
年に1〜2回、一緒に山を歩く。
普段はラインでやりとりしている。

「私たち卒業して、今度の春で丸十年になりますよ。
早いもんですね。
十年も経てば一人前になると思ってたけど、まだまだだなー。」
ほんに、まったく。

「免許証、私は治療院の壁に掛けてますよ。
時々見ては初心にかえっています。って、まだまだなんだからまだ初心か。」
ははは。
そうだな、部屋が片付いたら、私も免許証は額に入れて壁に掛けようかな。
免許証って、卒業証書みたいに筒に入ってたよね。
「いえいえ、封筒で送られてきましたよ。」

すると筒は卒業証書の記憶か。
筒ではなく、封筒に入っているのか。
えっ、だとしたらあの引き出しに
あっ………
違う。
やった。
捨てた。



思い違いであれば良いと願いながら、
心当たりの引き出しや、心当たりの紙の束や、
念のために卒業証書の筒の中も探してみた。
しかし、無い。

丈夫な封筒を見た憶えが有る。
でも、中身をいちいち確認していたら片付かない。
ばんばん捨てる。
という作業の中の一つが、はり師きゅう師免許証だった、
に違いない。

部屋の中に見つからないということは、
無いのだ。
この手で自分で捨てちまったのだ。



関連法規の授業の中で、教わった記憶が有る。
教科書はどこに有るかすぐに分かる。
片付けをしたばっかりだから。

(3) 免許証(免許証明書)再交付申請
免許証(免許証明書)を破ったり、汚したり又は失ったときは、
免許証(免許証明書)の再交付を申請することができます。

破ってない、汚してない。けど、失った。はい捨てました。
再交付には3,300円かかるという。

自動車運転免許証と違って、仕事をする際に携帯せねばならないなどということは無い。
表彰状のような免状である。
提示せねばならないのは、例えば施術所を開院する時とか、どこかに就職する時くらいである。
私はどちらもする気は無いし、出張で仕事をする許可はとっくに取得してあって期限は無い。

つまり、わざわざ再交付するでもないのだ。

東洋療法研修試験財団のホームページを見てみる。
申請書を請求して、返信用の封筒を同封せよ、ということだ。
そうだ、それに私は、はり師きゅう師と2種類の免許を持っているから、
合わせて6,600円かかる。

めんどくさい上に今後必要になりそうもない紙にしては高い。



ダメモトで、週明けの明日、市役所のごみ対策課に電話してみるか…
いや、見つかるわけ無いか。

黙ってりゃバレやしないのだ。
紛失したら再交付しなければいけない、というのも、届け出や手続きに必要だからだ。
なんの届け出もしないつもりなのだから、いいじゃないか。
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