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2019年03月31日22:27

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ニセモノ野郎の痛快サクセスストーリー!「ちいさな独裁者」


ジブリ、ディズニーと並んで、今でも根強い人気のナチスもの映画です。
今回は、ドイツの脱走兵がたまたま発見した大尉の制服を着てなりすまし、そのまま極悪非道のナチ野郎として大活躍してしまうというお話。
設定としては完全にコメディなわけですが、これがなんと実話という衝撃作です。
しかも、このモデルとなった人物についてウィキで調べると、映画の概要がそのまま書いてほど、そのまんまなのです。

エンドロールまで観ると、完全にコメディとして作ってあったんだな〜と分かる(一番笑えるのがこのエンドロールなので、必見です)のですが、なにしろやる事が虐殺ですから、どんな気分で観て良いものか、困る人が多いでしょう。
僕もサスペンスものだと思っていたのですが、途中で少し様子がおかしいと思ってからはコメデイとして切り替えて楽しむことにしました。

こういう、なりすましもの映画というのは昔からあるのですが、なんでもない人間が偉い身分になったりして、どうにかこうにか誤魔化しながらも最終的には良い事を行って、めでたし、めでたしとなるのが常套です。
ところが、こちらは実話ですからタチが悪いのです。
ハリウッドとかだと、事実を捻じ曲げてイイ話風にしたりしますが、この映画では実際の話が面白いんだからそのままやろうぜ!という英断をしました。

実話を元にした映画を観た後で、調べてみたら映画より実際の話の方がよっぽど面白かった、というのが少なくありません。
事実を脚色するのは構わないのですが、結果映画がつまらなかったら何の意味も無いのです。

この映画をコメディと言いましたが、笑える場面がたっぷり用意されている、というわけではありません。
事実をそのままやっているだけで十分笑える、という点を生かして、映画的な分かりやすいギャグを入れたりはしていないのです。
でも、ドリフの様におばちゃんの笑い声を足してみたら、随分分かりやすくなると思います。
一度、とんでもない悲惨なシーンで毎回おばちゃんの笑い声が入る映画を作ってみて欲しいです。
物凄く気味悪い映画になるのか、案外普通にコメディになってしまうのか、興味があります。

また、この映画の厄介なのは、本当に酷いヤツの主人公ヘロルトの活躍がちょっと痛快だったり頼もしく感じてしまう事です。
ただ服を盗んだだけなのに、自信満々の表情でいかにも偉いヤツがしそうな言動を迷いなくとっていく主人公は、天性の素質があったとしか思えません。
制服と演技力だけで本物のナチスのお偉方とやり合い、認められていく。
最終的には「ヘロルト即決裁判所」と書かれた軍用車に乗って、「お前は死刑な!」と適当に人を殺し、女とパーティーを繰り返す。
痛快サクセスストーリーというのは、あながち冗談では無いのです。

確かに彼のやる事は極悪非道。
でも、彼はおそらく散々見てきた事をコピーしているに違いありません。
たくさん殺してたくさん奪う奴、無情で女子供も容赦しない人非人こそがスーパースターと崇められる、鬼畜野郎のチャンスタイム、それが戦争です。
後になってヒデェと言われるのは仕方無いかもしれませんが、その当時は求められていた事を頑張っただけなのでしょう。
高齢者をジャンジャンバリバリ騙して、保険の営業成績を上げて賞賛されてきた郵便局員とかと同じです。

なにより痛快なのは、彼が何もリスペクトしていないところです。
ナチスの行いについて、別に正しいとも素晴らしいとも思っているわけでなく、その場しのぎでデマカセをやっているだけなのに、ドンドン評価されて仲間が増えて権力を増していくのです。
やっぱり、政府とか上司とか教祖とかカリスマとかに心酔して従うだけのヤツは、一生家畜ですよ。
もちろん家畜としての人生にも素晴らしさや楽しさがあると思いますが、いずれ刈り取られてお役御免となるのがお決まりです。
偉い人に「ホントにそうですよね!さすがっスね!」とイエスマンを演じても、心の中では「うるせえ、地獄かドブに落ちろ!」と思っているくらいが、健康的なちょうど良いバランスなのです。

悪意タップリで、唐突なショックシーンもあって、コンプライアンス的にも超問題がある内容なのに「ナチス最低ですもんね!」という言い訳で平然としている。
簡単に言うと、僕のすごく好きなタイプの映画でした。
「ヘロルト即決裁判所」カーが現代に登場するエンドロールは本当に最高!

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