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2016年08月26日20:37

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世界観が崩壊する時、人は・・

アシュラム図書館所蔵の日本語書籍の中の、柳田文献のテキスト化作業を開始した。

ラマナ協会機関誌に掲載された文章では、昨年・一昨年の滞在時におけるテキスト化作業で対象化してなかったものも2点あるのだが、これの掲載号は鴻巣の自宅にも所蔵があるので、先ずはナチュラル・スピリット発刊の季刊誌「Star People」第4号(01年10月31日刊行)の掲載された「インタビュー記事」から始めている。

(この号には大野純一氏による「ジッドウ・クリシュナムルティについての記事」も掲載されているので、そちらも順次テキスト化する予定・・これは「臨在」サイトに使うわけではなく、個人的に参考文献として保管したいので。)


先日記したように「ご長男さんの自殺」というのが先生の信仰への転回点ではあるが、もうひとつそれと並んで「これまで信奉してきた世界観の崩壊」というのも、先生がラマナ信奉者になった大きな要因である。

特に印象的だったのは、スカンダ・アシュラムに飾られていたラマナの写真だったそうで、この写真は1917年撮影(ラマナがスカンダ・アシュラムに住んでいた38歳の頃である)という記録が残っているのだが、「マルキスト」であった先生にとってはそれ自体が大変な衝撃でもあったそうだ。

(先生のこちらの住居の瞑想室にも同じ写真が安置されていた。)


というのはこの1917年というのは「ロシア革命」の起きた年であり、つまりそれは「世界史上初の『共産主義革命』」だったわけで、マルキストにとっては、その年から共産主義による「人類の束縛からの解放」が始まった・・という絶対的な意味を持つ年号として強固に刷り込まれてきたのですな。

マルキストにとっては「世界史上・人類史上最も重要」だと教え込まれてきた「激動の時代」にあって、片や英国植民地であった南インドの山の中の洞窟の中で、そんな世界情勢とは全く無関係に瞑想に浸る聖者がいたのだ・・・ということが、先生にとっては驚天動地の驚きだったらしい(ここら辺は我々の世代になるとあまりピンとはこないが・・)。


おりしも先生がアルナーチャラに来始めた頃に、東欧諸国の共産主義体制は雪崩をうって崩壊し、東西冷戦の象徴であったベルリンの壁は打ち壊され、なんと親玉だるソ連まで解体されてしまった・・・こともあって(当時20代後半だった私もこれらには随分驚いたものだ)、

マルキストだった先生にとってはこれまで「金科玉条としてきた世界観」自体が、その「始まり」から僅か70数年で崩壊してしまった(確か「永久革命」とか喧伝されていたねえ・・)のですな。


そして同時にその一方で、まさしく「永遠の臨在」であるラマナ=アルナーチャラに深く感動して帰依していく・・ことになったわけでもある。


かくして「生死の理」への真摯な懐疑や体験と、アイデンティティを支えてきた世界観の崩壊が重なった時、宗教やスピリチュアリティに目覚めるきっかけとなった・・・というのはよくあるケースなのだ。



というわけでお待たせしました!!(笑)・・・元極道の坊さんの出家のきっかけも同じようなケースなのである。


さあ、これから「殺し合い」に行くという切迫した状況下で、彼は母親に「今生の別れ」の挨拶とこれまでに積み重ねた不孝の数々を詫びるために電話をかけた。


その時電話に出た母親から、彼は何を告げられたのか?・・・


「お前にはこれまでさんざん苦労させられたが、何がどうあろうともお前は私の子供なのだ。たとえ世界中の人間がお前の敵になろうとも、私は母親として最後までお前の味方だよ・・・」

・・・・というような意味合いの言葉を母親は彼に伝えたそうである。


渡世人としての「命のやりとり」を前にして、彼は母親の「無償の愛」というものをその時初めて体験した・・・のである。


まあ、ここまでは案外よくある話かもしれない。

任侠映画ならそれでも最後には戦いへと赴く「男のロマン?(泣いてくれるな、おっかさん・・背中で吼えてる唐獅子牡丹〜♪)」が描かれる、のが典型的なストリー・パターンだろうし。


・・だが彼の場合は違っていた。

電話を切ったその直後に、これまで思ってもみなかった知見が突如として去来したそうである。


「これから俺が殺しに行こうとしている相手にも母親がいることだろう・・・そしてその母親もそいつに全く同じ愛情を注いでいるに違いない・・。」


そこに思い至ったとき、彼は一気にやる気が消失してしまっただけでなく、「俺は何という馬鹿馬鹿しい人生を送ってきたことだろう・・・」と心底痛切に感じてしまったのだそうだ。


ヤクザ・渡世人という「アイデンティティを支えてきた世界観(価値体系)」が、突如一瞬にして崩壊してしまった・・のですな。



・・・・ということで、その後の展開はこれまた次回に続くざんす。





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