11月23日が「いい兄さんの日」であることに気付いて、何か書こうと思って思いついたネタがこれ。即席で粗製乱造であまり出来のよくない短編である。11月25日の「いい双子の日」にエロい話につなげようかと思ったが、妄想力が働かなかった…orz
(「いい双子の日」に、アケローオス×カノン×サガで、アケロ「…どこが『いい双子』なんだ?」カノン「『いい双子』だろ。二人がかりでお前を楽しませてる」アケロ「飯と酒をたかられて、精力と体力を吸い取られてるだけの気もするが…」というのも考えたけど、話がまとまらなくて…)
双子の関係を健全方向にするか、パラレルのエロ方向にするか迷って、結局エロ方向に。なので『例えばこんな愛の形』『執着と愛の境界線』『常識についての一考察』『時には愛の言葉を』と同系列の話になる。
アケローオスについては『ハルモニアの首飾り』『ドナウの白波 黄金の酒』『セクアナの泉』を参照。
『いい兄さんの日』
11月23日。
その日もいつものように教皇の間の執務室で勤務していたサガは、昼休憩の合間にアイオロスと二人で紅茶をすすっていた。
その時、廊下にトタトタと人の足音がして、警備の雑兵たちの騒ぎ声が響いた。
「今、取り次ぎを…」
「構わん。まだるっこい!」
雑兵を振り切り、執務室の扉を開いて姿を見せたのは、サガの双子の弟、カノンだった。
「カノン」
驚き、サガが顔を上げる。カノンは普段は海将軍筆頭として海界に住んでいる。それがわざわざ聖域にまで来るのは珍しい。
「どうした、何か緊急の用件でも…」
「いや。お前に私用だ」
「ならばせめて取り次ぎくらい頼め。アイオロスにも無礼だろう」
「いいじゃないか。おれも双子座の黄金聖闘士なのだし、弟が兄に会うのに何の遠慮がいる。だいたい、取り次ぎを頼む時間が惜しい。おれだって忙しいんだ」
はあ、と、サガはため息をついた。相変わらず、この弟は傍若無人、わがまま放題であった。
「…それで何の用だ、カノン」
「うむ。実は昨日、ソロ邸に顔を出したのだ」
カノンはこうして聖域に顔を出すだけではなく、時おり、ジュリアン・ソロの元も訪ねている。カノンなりにジュリアンのことは可愛がっており、彼を気にかけてはいるのだ。それに、沙織が聖域にいる時にはご機嫌伺いで顔を出しているのに、ジュリアンの方を無視していると、ポセイドンが機嫌を損ねて(というよりすねて)、カノンいわく「ろくでもないこと」をカノンにやらかしたりするからだ。
「ジュリアンがアテナに片思いしているのは知っているな。で、奴はアテナが住まわれる日本の文化にも色々興味をもって調べているのだが…、それによると日本では今日は『いい兄さんの日』だそうだ」
「ほう」
「というわけだ。サガ、いい兄としておれに何かくれ」
そう言って差し出されたカノンの掌を、サガは呆然と見つめた。
「…は?」
ややたって間の抜けた返事をした兄に、カノンが催促する。
「だから、何かくれ。お前はおれの兄だろう?いい兄として、弟に何かくれ」
「………」
ぱちぱちとサガは目をまたたかせた。やがて肩を落とし、大きなため息をつく。
「お前にとって『兄』とは何なのだ…?」
「くれないのか?」
「いきなり来られて、何かくれと言われても、あるわけがなかろう!私は欲しい物を何でも出すランプの精ではない!」
「ふ〜ん」
「ああ、もう、まったくお前は…」
説教モードに移行しかけたサガの肩を、カノンは引き寄せた。
「では、これをもらう」
言うなり、カノンはサガの唇を自分の唇でふさいだ。
「…ぶっ!」
傍らで双子のやり取りを見ていたアイオロスが飲んでいた紅茶を噴き出すが、カノンは一向に気にしなかった。唇を舐め、舌を差し入れ、絡ませる。
「…ん、ん、んんっ…!」
カノンの舌技に一方的に翻弄されていたサガだが、両腕を突っ張らせ、ようやく弟の体を引き離した。
「カ、カノン…やめないか!」
「ふふふ…」
ぺろりとサガの唇を舐め、カノンは口づけを終えた。
「…もう!お前は本当に…!」
顔を真っ赤にしたサガが、ごしごしと手で自分の唇をぬぐう。
「カノン…!お前、サガに何を…!」
怒りのあまり立ち上がったアイオロスに、カノンが目を向ける。表情が「ザマーミロ」と言っている。
「いいだろ、これくらい」
「いいわけあるか!」
「なら、お前はアイオリアとキスをすればいいだろ。お前はあいつの兄なんだし」
「アイオリアとそんなディープなキスをしてたまるかーっ!」
「相手がアイオリアなら、別にしたってサガは怒らないと思うけどなぁ」
そう言ってカノンはサガの体を抱きしめた。目の前でサガ相手にいちゃつけば、心底大嫌いなアイオロスへの打撃になると知っているからだ。
「なぁ、サガ、今晩、空いてる?」
「特に予定はないが」
「じゃあ二人でアケローオスのところに行こうぜ。それで酒と食事をたかる。あいつも『いい兄』だしな」
「だからお前は『兄』を何だと…」
「決まり。今晩、迎えに来るな」
それと、と言い、カノンは言葉を続けた。
「明後日は『いい双子の日』なんだそうだ」
「だから?」
「その日の夜も二人で過ごそう。海界に来いよ。今度はおれが夕飯と酒をお前におごってやる。それで…」
そうしてカノンはサガの耳元にささやいた。
「その夜は一緒に寝よう、兄さん、子供の時みたいに…」
弟の誘いに、サガが戸惑うような表情になる。
「一緒に…寝る?」
「そうだ」
「…強引に私を抱こうとかは…」
「しないよ。アテナに誓う」
「……」
「だめか?」
「…それなら、まあ…」
「なら、約束だ」
じゃあな、と、カノンはサガの頬に今度は軽いキスをすると、用件を終えたとばかりに身をひるがえして教皇の間の執務室を後にした。
「まったくあいつは…こんなことのためにわざわざ来たのか?すまない、アイオロス。無茶苦茶な弟で…」
「………」
疾風のようにやって来ては去っていった弟を見送ると、サガは呆れたように息をついた。そんなサガを、アイオロスはじとーっと粘着質な目で見つめていた。
「…で?」
「え?」
「今夜は泊りになるのか?」
「多分…、そうなる、かな…?」
「明後日も?」
「う…ん…」
はあ、と、アイオロスは肩を落とした。
アケローオスとは、相変わらず常軌を逸した「兄弟愛の確認」行為をするに違いなく、明後日のカノンとの夜だって、カノンは「抱く」以外のことはサガに色々と仕掛けそうな予感がする。
「…まあいい。だがお前が帰るのは、おれの元だぞ」
そうしてアイオロスはサガに口づけ、カノンとのキスを上書きしたのだった。
<FIN>
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