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2015年06月23日17:08

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「東欧アニメーションの世界」展

福岡天神イムズ8F三菱地所アルティアムにて開催。6月20日(土)に鑑賞。
http://artium.jp/exhibition/2015/15-03-eeanimation/
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昨年、神奈川県立近代美術館葉山館で「東欧アニメをめぐる旅」と題して開催されたポーランド・チェコ・クロアチア三国のアニメーションに関する展覧会の流れを汲むもの。

美術館を丸ごと使った葉山展と、ビル内のほぼ一室が会場のこちらでは規模において比べるべくもないが、アルティアムの他の展示会の時よりもかっちりした印象を受ける展示がされている。
素材の点数の多さとアーティスティックな内容ゆえの印象か。
葉山で圧巻だった新発見の作品ストーリーボードが長い長いガラスケースにずらりと並ぶ光景は残念ながらここでは見られない。会場が狭いのだ。

しかし、こうした展示はやってくれただけで有難い。
壁面にモニターを設えての作品上映もあるし、会場の一部を暗幕で区切っての集中上映もある。
葉山で「おお!」と思ったトルンカの人形二体(「チェコの古代伝説」のリブシェと「バヤヤ」の道化師)も来ている。
葉山は去年の秋だったから、その後どこか巡回していたのか、一旦本国へ戻ったのか。
道化師の人形は、葉山で見た時も思ったけれどオリジナルではなく、後の機会に作られたものではなかろうか。
そういえば葉山展の時、「バヤヤ」のあらすじで「王妃を守って云々」と書かれていたのを、これは王女の間違いと館員さんに伝えておいた(メモを取って聞いて下さった)けれど、やはり直ってはいなかった。仕方ないことではあるが。
展示の半分くらいは作品セルだが、状態がとてもいい。大きさも大小様々で、これも興味深い。
絵コンテやストーリーボードの類も大きさも素材も様々で、このあたりも作業の実際を想起させて興味深い。

この日は土曜日で、通常は会場内のモニター等で分散上映されている三国の諸作品を「イッキ見上映会」と題して、2時間ほどのプログラムで連続上映してくれる日。
客席の一番後ろにソファ、その前に小さなスツールが並ぶ。
上映開始時には満席で立ち見も。土曜日とあってか子供連れも。
満席は正直予想外で、潜在的な需要があるのだろうか。

クロアチア作品は葉山でもじっくり見たし以前の日記にも書いたので、ここではスルー。
上映は「エアザッツ」「ブーメラン」「トン・トン」「アルバム」。

ポーランド作品は葉山ではよく見られなかったので、ここでじっくり。壁面モニターの上映と比べて画角がちょっとおかしい気がするが、どれもとても面白い。
ポーランドはアカデミー賞を受けた「ピーターと狼」もある人形アニメの盛んな国。
上映は4本。

「チェンジング・ザ・ガード(衛兵の交代)」ヴウォジミェシュ・ハウベ&ハリーナ・ビェリンスカ作。58年。人形アニメ。
衛兵に見立てたマッチ箱と針金状の美術(建物)による軽妙な人形アニメ。
衛兵たちの寝込んだ深夜。見張りに立つ兵士を女が誘惑。文字通りの火遊びとなって隊は全焼。火気厳禁の張り紙がされる。
赤い唇をつけたマッチ箱の色っぽいキャラクターが、解説を読むと王女とあって驚き。
マッチ箱の開閉で寝息を表わすのが面白い。

「袋」タデウシュ・ヴィルコシュ作。67年。人形アニメ。
赤い袋が次々と辺りの物を呑み込んで膨張していく。物たちは一斉に立ち向かい、鋏が袋を切り裂き、一枚の黄色い布が襤褸となった赤い袋を包み込んで抑える。万事解決と思いきや、黄色い布は袋となり、鋏をはじめ物たちを呑み込み始める。
袋は独裁者の暗喩。権力は腐敗するという見方はかの「動物農場」を思わせ、同時に東欧の深い歴史をも思わせる。
アニメートは達者。動きでその性格も描写して見事。切り裂かれた袋が、皮をむいたミカンのような形になって反撃するあたり、実に面白く、テーマだけでなくアニメーションとしていい。

「龍のバルナバ」タデウシュ・ヴィルコシュ作。77年。人形アニメ。
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おとぎ話的な、王女をさらった龍と戦う鍛冶屋の若者の話。
色彩鮮やかで造型も的確。かなりのハイレベル。ちょうど家の屋根に乗るくらいの手頃な大きさの、ちょっととぼけた龍がいい。退治せずに龍の吐き出す炎を生かして鍛冶屋の手伝いをさせる結末もいい。
人間の動きがとても優雅で、どこかポヤルのアニメートを思わせるのだが、どこかで指導を受けたということはないのだろうか。

「ディエス・イレ」ヨアンナ・ヤシンスカ=コロンキェーヴィチ作。2006年。
クラシック音楽に乗って一頭の馬が駆けるドローイング(と思われる)アニメーション。
動きも色彩も小気味よくアニメ本来の楽しさに満ちた2分15秒の作品。

ポーランドアニメはとても気に入った。葉山では途中で先のフロアへ進んでしまったのが今更悔やまれる。

チェコの3作品も再見。
「アリのフェルダ」ヘルミーナ・ティールロヴァー&ラディスラフ・ザースチェラ作。44年。人形アニメ。
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葉山でも何回も繰り返し見たお気に入り。勿論ティールロヴァーは昔から好きだけれど、この作品は特に気に入っている。おおらかさが何とも言えない。
アリや悪党のクモ、キャタピラ式のカタツムリ等、どれも魅力的。
これが最初の人形アニメとは思えない技術的充実にも驚く。

「クリスマスの夢」カレル・ゼマン&ボジヴォイ・ゼマン作。45年。人形&実写。
ゼマンの短編なら「水玉の幻想」でもいいかと思うが、この作品の温かさや子供への善意もかけがえがない。
夢の中で人形が動き出し…という定番の物語だが、ゼマン的なトリック映画の味わいが素敵だ。

「贈り物」イジー・トゥルンカ&イジー・クレイチーク作。46分。セル。
トゥルンカ(表記のまま)初期のセル短編。美人で誘惑に弱い妻、間男と決闘する夫、という大人のアニメ。
真っ赤な唇の端にホクロというマリリン・モンローを思わせる妻が映画好きなトゥルンカを偲ばせて妙。
妻への贈り物に注文した巨大な彫刻が彫られるカットで、彫刻家がノミを振るうと中から彫像が現れる描写が後の「手」のそれを思わせる。時を経ても変わらぬ作家の描写方法の原点を見る思いがして感慨深い。

最後は「対話の可能性」。ティールロヴァー、ゼマン、トゥルンカの後にシュヴァンクマイエルは好まずでパス。

入り口横のショップコーナーでは関連書籍、DVD(パル方式等)、グッズ等を販売。
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トゥルンカのレターセットを見つけてしまったので悩みつつ購入。元の絵本は持っている上、ポストカードならともかくレターセットは嵩張るので悩ましいのだが美しい。
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