8月19〜21日の三日間、奈良博物館夏季講座に出席するために奈良文化会館に日参。
夏季講座は、現在開催中の特別展「醍醐寺のすべて ―密教のほとけと聖教―」に関連して開催されたもので、そのメインテーマは「醍醐寺と南都の密教」。
（朝9時から夕方4時過ぎまで（ただし、最終日の午後は特別展自由参観）、醍醐寺座主の基調講演を皮きりに、各分野の研究者計8人の演者による各80分の発表が続いた。大きなホールがほぼ満員の盛況だった）
各発表は、昨年に一括して国宝に指定された約９万点に及ぶ醍醐寺文書聖業（しょうぎょう。開山以来歴代僧の真言修法(しゅほう)の記録や研究の成果）や、醍醐寺に伝わる権力者との遣り取りを記す古文書を駆使した研究結果 、或いは醍醐寺に伝わる仏画・仏像の研究結果の報告だ。
それぞれ深くハイレベルな内容の話で、発表要旨集と配布された演者ごとの参照資料類を交互に目を通しながら聴講は、ド素人たる私奴などにとってはヒタスラ内容を追いかけるのに忙しく、大変ハードなものであった。
発表テーマと発表者は以下の通り。(私奴には、とりわけ＊印を付けたものが面白く興味深かった）
「聖宝理源大師の祈り−南都への思い」 仲田 順和師（醍醐寺座主）
＊ 「醍醐寺・南都の仏教建築と両界曼荼羅」 冨島 義幸氏（京大大学院工学研究科）
「醍醐寺の仏画」 有賀 祥隆氏（東京藝術大学）
「国宝醍醐寺文書聖教の史料的価値について」 永村 眞氏（日本女子大）
「醍醐寺の仏像―国宝薬師三尊像と弥勒堂弥勒菩薩像を中心に」 副島弘道氏（大正大学） ＊ 「中世の醍醐寺と修験道」 関口 真規子氏（埼玉県立文書館）
「醍醐寺の舎利信仰と南都」 内藤 栄（奈良国立博物館）
「中世における醍醐寺」 藤井 雅子氏（醍醐寺霊宝館）
「醍醐寺のすべて―展覧会紹介―」 斎木 涼子（奈良国立博物館）
特に面白く興味深かった報告についての感想。
「醍醐寺・南都の仏教建築と両界曼荼羅」 冨島 義幸氏
「聖業」には堂塔における本尊や荘厳の構成・法会の様子をあらわした指図が含まれており、
建築やその空間の意味を知る上で貴重。建築工学が専門の氏は、それら指図をもとに�‖�
醐寺五重塔の密教曼陀羅空間、潅頂・長日両界供養法などが行われた中世三宝院の空間
に触れ、��後白河のもとで再建された東大寺大仏殿の空間について論じている。（本尊毘盧
遮那仏を大日如来とみなした法会のために両界堂を供えた大仏殿の指図が残っていたので
す）
私奴らは、「奈良期の南都仏教、そして平安仏教（最澄・空海の密教や源信の阿弥陀経）、
やがて鎌倉期の新仏教へ」などと単純な経路を、高校歴史などで教わったが、どうやら、
そんな単純な図式では表せない流れがありそうに思えた。「南都仏教」に関する再評価が
必要なのかも。
「中世の醍醐寺と修験道」関口 真規子氏
「聖業」の中の修験道にまつわる史料を整理・分析し、あまり知ることのなかった中世醍醐寺で
の修験道の位置づけと、近世における三宝院門跡を棟梁とする当山派の確立（家康・秀忠に
よる修験道法度。以降、江戸期の修験道統制につながる）についての報告。
（聖宝さんを開祖する醍醐寺でも、学問を専らにする僧に較べて、山林斗藪を専らにする僧は
下に見られていたというのは面白い。学生仲間でも体育会系は、単純で頭がカラッポというよ
うな迷信と同じような感じかな？）
初日の夕方、近鉄奈良駅からチョット足を伸ばして、餅飯殿（もちいどの）町に行き、聖宝理源大師堂を訪れてきた。商店街の中に会ってなかなか見つからず老舗らしきお店で訊いてみたら、女将さんらしき人が堂までご一緒してくれた上に、いろいろと地元の人達の信仰ぶりについて話をしてくださった。聖宝理源大師堂と弁財天社（こちらは空海さんと関係が深いらしい）は、小型マーケットのような建物の一角に鎮座ましましていた。
最終日の午後、再度、仕入れたばかりの知識を背負って特別展をジックリと観てまわった。前回に見落としていたことも多くあり、シッカリと見た。
写真左：餅飯殿町の聖宝理源大師堂と弁財天社
写真： 三笠山遠望と名物の巨大な三笠饅頭
ログインしてコメントを確認・投稿する