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2023年07月14日12:08

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NHKワイルドライフ「世界遺産の知床半島 エゾシカの一年」昆虫ヒラズゲンセイ

7/14(金)
近年西日本を中心に、かつては幻の昆虫といわれたヒラズゲンセイの目撃情報が多くなっている。活動期は5月下旬から8月、体調2cmから3cm、外見上根元から2つに分かれた顎の形からクワガタを彷彿とさせるものの、全く違う仲間である。好奇心旺盛な子供は、物珍しさから、見るけると、つい触りたくなる。専門家は素手で採取する危険性を説く。なぜなら、体や足の関節部分から滲出する黄色い体液が、害を及ぼすからである。人の皮膚に付着すると、水ぶくれやかぶれなどやけどに似た症状を引き起こす。応急措置として、流水で患部を洗い流すことが必須だ。野外で水道がない場合、ウェイトティッシュで患部の周囲を拭き取り、消毒作業が欠かせない。専門家は、虫取りに夢中になる子供たちに向けて、そっと観察するように呼びかけている。https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=220&from=diary&id=7487835

 本題 奈良県のシカの行動について NHKワイルドライブ 2012年放送「エゾシカの一年」

 5月29日(月)付 奈良女子大学と北海道大学の研究チームは、新型ウィルスの感染拡大防止策の緩和により、観光客が戻ってきた奈良県でニホンジカの生態を注意深く観察し、記録をとった。調査地点は、東大寺南門を中心に、3箇所になる。コロナ禍前の2019年以前の観察データーと、2020年7月のデーターをつきあわせ、仕草に変化があったことを明らかにした。調査対象になったシカは、合計1200頭にのぼった。2019年以前、観光客から餌をもらう際、我々人に倣った「おじぎ」をしていた。コロナ感染拡大後、入国規制により、海外からの観光客は全くいなくなった。日本国内でも政府や自治体の長からの自粛要請により、遠方へ足を運びにくくなるにつれ、奈良県の観光地は、閑散としていた。

写真=春日大社のニホンジカ 掲載元 ご朱印たび.co, 2019年9月8日付け https://goshuintabi.com/archives/3375.html
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2022年10月に、外国人観光客の入国制限の撤廃により、観光地はコロナ前の状態に戻った。シカについては、感染拡大が深刻化した2020年を中心に、観光客から餌をもらう頻度が減るにつれて、「おじぎ」の回数が減っていたのである。3箇所で観察されるシカの数も変わっていた。2019年は1日の調査において、167頭を数えたものの、2020年は1日平均65頭まで減少した。おじぎをする回数は、16年9月〜17年1月は、1頭当たり平均10.2回だった。2020年6月〜21年6月の1年間、6,4回まで下がった。1回目の緊急事態宣言があけて、梅雨時感染者が再び多くなった2020年7月、お辞儀の回数はさらに減り、2回にとどまっていた。研究結果は29日までに米科学誌プロスワンに掲載された。

 JlJl.com 2023年5月29日付 奈良県のシカ、お辞儀の回数についてhttps://www.jiji.com/jc/article?k=2023052900114&g=soc

 奈良のシカに関する日記

 動物関連ニュース!(2023年2月19日付け)シャンシャンが中国へ帰る日 奈良のシカに若葉を寄付 画像作成AIにウミネコを描かせる 中高生が就きたい職業ランキング 新型コロナとインフル情報
 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984426048&owner_id=32437106

 直近の動物関連日記
 
 2023年5月3日付け ミズクラゲについて
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984971562&owner_id=32437106

 2023年4月26日付け  動物関連ニュース! レッサーパンダの風太 飼育下と野生下でのラッコ、スヌーピーにそっくりな犬 他人気のピカチュウヘルメット
 https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1984917973&owner_id=32437106


  今回の主役は、北海道の固有種エゾシカである。シカといえば、本州に生息するニホンジカを一般的に思い浮かべる。奈良県では、餌付けの影響により、野生のニホンジカと身近に触れ合うことができた。

新型コロナ感染拡大防止による外国人観光客入国制限が解除された2022年秋以降、奈良県の観光地では例年になく、人出が急増した。観光客が与えるせんべいを含めお菓子を求めるシカとの距離も近づいているという。

 紹介する北海道の固有種エゾシカは、奈良県のホンドジカに比べて、体は一回り大きい。

 今回NHKワイルドライフ、2012年2月放送分から、世界遺産知床半島で生きるエゾシカの一年を見つめた。全三章構成である。

 写真=北海道の野付半島のエゾシカ 掲載元 https://cooljapan-videos.com/jp/articles/p4dj22bn
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 <知床のエゾシカ 角はオスの命>
                       
 舞台の北海道は、日本国土の22%にのぼる。人の生活圏のすぐそばの森に暮らすエゾシカは、身近に触れることができる動物として知られている。オスに生える2つの角は、繁殖期に仲間同士で力を競い合うために役立つ。角は毎年生えかわり、春には食事の最中や移動中に抜け落ちる。角のないオスを見ると、どこかひ弱なイメージを抱く。年を重ねたオスの角は、長くて頑丈になり、ライバルと戦い、縄張りを手に入れ、異性と出会いの場が大きく広がる。大きな角を生やすオスは、子孫を残す権利を得る一方で、大きな宿命を背負っていた。丈夫な角ほど早く抜け落ちて無防備となり、春先には、歳若いオスに食事場所を譲るようになる。角の大きさによって順位が入れ替わるエゾシカの行動を一年に渡って追っていく。
 

        第1章 巨大なツノは力の証し

 北海道の西北部からオホーツク海に細長く伸びる知床半島は、高さ100mを越す断崖に囲まれている。知床岬の先端部は、海風によって塩分が運ばれ、木々は育たず、小さな草が崖地にしがみつくように生えていた。岬から少し離れると、豊かな原生林が広がり、四季の移ろいを感じることが出来る。樹齢200年を越すミズナラやトドマツには、天然記念物の全長70cmになるシマフクロウが留まっている。
秋が深まる10月、木の葉が色づき始めた。冬篭りに備えるシマリスは、木の実を貯蔵する準備に入る。エゾヒグマは、冬ごもりを迎えるため、木の実を沢山食べて栄養を付けていた。

   写真=エゾヒグマ      写真=シマフクロウ
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 今日の主人公、北海道の固有種エゾシカは、本州で暮らすホンドシカより体が一回り大きい。日照時間が少ない影響で、ビタミンが不足し、体は幾分黒く染まっていた。秋は、年に一度の繁殖期を迎え、行動範囲が一段と広くなる。オスは、大きい個体だと体重は150kg、主食の葉っぱを食べながら移動を繰り返し、森の泉にたびたび訪れる。体を横倒しにし、泥の中に突っ込んだ。体が真っ黒になるまで、何度も泥をこすりつけた。多くの動物は寄生虫を退治するために、定期的に水浴びをする。エゾシカのオスは、体を黒く染めることで、メスを誘うことが出来るという。大きな体をしているオスほど気性が荒く、たびたび争いが勃発する。体の大きさが互角だった場合、順位を競い合う。2本の角をつき合わせると、乾いた音が鳴る。オスの成熟度合いを知るには、角の大きさを測れば明らかになる。縄張りを巡って争う大きな体をしたオスの角は、枝が4つに分かれていた。メスの方は、角が生えず、体も一回り小さい。

 写真=エゾシカのメス
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角の成長は、一歳から始まる。ヤギのように短い2本の角が生え始め、2歳から3歳になると、3つに枝分かれしていく。4歳になると枝分かれが4つに達する。角が立派であるほど、オスの順位が高いことを示す。7歳から8歳のオスは、角が大きくて、頑丈であり、周囲の若いオスを追っ払う。勇気のある若いオスが、角が大きいオスに度々勝負に挑む。若いオスが角を突きつけても、大きなオスは全く動じることなく、振り払った。若者を遠ざけ、群れで暮らすメスのそばに近づく。メスは平均4匹から5匹の集団を作り、縄張りを持つ。オスは、メスの縄張りの境界線を移動し、発情しているメスに求愛を申し込む。若いオスは、大きな角を生やすオスの目を盗んで、メスに接近しようと試みる。大きな角を持つオスは、若いオスの企に気づき、首を反らせ、威圧感を与える。若いオスは、大きい角を持つオスの剣幕に負けて、森の中に消えていった。秋が深まるにつれ、アブラムシの仲間ユキムシが、大発生した。寿命はわずか1週間ほど、限られた時間でオスとメスが出会い、次世代に命を繋ぐ。

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 エゾシカのオスも、冬を前にパートナーを手に入れようと、ますます気合が入る。大きな角を生やすオスは、縄張りを宣言するべく、鳴き声を上げた。オオカミの遠吠えのように、透き通った空に反響し、森の奥まで声が響き渡る。縄張り宣言をしたオスの前に、森の奥から同じ歳のオスが現れた。両者は、一定の距離を取りながらも、互いに近づいていく。にらみ合いになると、縄張りを巡る激しい戦いが勃発する。まず角を見せつけて牽制することから始まる。一歩も引かないと、角をぶつけ合う。角を絡ませ、体重をかけて相手を突き飛ばす。力が互角だった場合は、角を絡ませたまま、じっと動かずに我慢する。

 写真=互いに警戒するオス
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拮抗状態が続くと、突然お互い角を引き、戦いを中断した。森の中からヒグマが現れたのである。2頭は、ヒグマに対して、警戒音を発した。ヒグマは、体の大きいエゾシカを襲う素振りはなく、再び森の中に帰った。
 大きな角を生やしたオスは、同じ歳のオスに対してライバル心を抱くが、危険が迫れば、身の安全を考え、戦いを中止せざるを得ない。メスを巡る攻防で大人のオスは、熾烈な争いになるが、怪我をするリスクは少ないという。お互いの角と角がぶつかると、挟まって動けない仕組みになっている。角を引き抜いて再び打ちあっても絡まりあうのだった。エゾシカは、若い頃から仲間と角を押し合う訓練を始め、成熟した8歳から9歳頃にようやく成果が現れるのである。

 2月、知床は冬のまっただ中になった。氷点下10度に達し、オホーツク海から季節風が吹き、流氷が漂ってくる。海は真っ白い氷に覆われ、太陽の光を跳ね返し、平均気温が極度に下がる。陸地の積雪は1m以上、空気中の水蒸気は凍りつき、「霧氷」となった。

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植物の葉に降りる霜を吹き飛ばしながらエゾリスが動き回っている。寒さに強いトドマツの実を取り出し、前歯で表皮をかじり、柔らかい実を口の中に入れた。

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エゾシカは、冬でも活発に動く。メスの群れは斜面を登り、雪の下に埋もれる枯れ草にありついた。オスは、森の奥に消え、角を木の幹に突き刺して、皮を剥いだ。繊維質の高い木の皮を食べて、飢えを凌ぐ。
 栄養価の乏しい木を巡って、オス同士の間で緊張が走る。体の大きなオスは、雪の中に体が埋もれながら、前に進んでいく。先客の若いオスは、角の大きさで勝るオスに怖気づき、その場から離れた。大きな角のオスは、突き出た小枝をかじりつくが、お腹を満たせず、移動を続ける。冬を乗り越え、春を迎えても、再び困難な事態が待ち受ける。

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                アイヌを支えたエゾシカ
 先住民族のアイヌ人は、全ての野生動物は、神様の化身と考え、崇め祀っていた。エゾヒグマは、キムンカムイ(山の神)の名前が付けられた。天然記念物のタンチョウは、湿原の神を意味するサロルンカムイと呼ばれる。同じく知床に住むシマフクロウは、コタンコロカムイ(村の守護神)と言う。
 今回の主人公のエゾシカは、太古の昔からアイヌ人の狩猟の対象となり、獲物を意味するユクと呼ばれた。今はシカを狩ることは全面的に禁止された。エゾシカは、観光客から餌を貰い、人との距離が近くなり、愛されるようになった。
 
第2章 角に異変!突然の下積み生活
厳しい冬を越え、3月下旬に春の日差しが降り注ぐと、流氷が去り、木の根元から雪が溶けていく。エゾシカのメスの群れは、暖かい海岸線に向かい、雪に埋もれた乾いた草を採取する。森の中ではところどころ、食糧不足に陥った子鹿や年老いた鹿が地面に横たわっていた。冬の間力尽きたエゾシカの肉をカラスが突っついて食べる。森の奥から匂いをかぎつけたキタキツネが現れると、カラスを蹴散らし、食べ物を独占した。

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エゾシカのオスも危険に陥っていた。冬篭りから目覚めたばかりのヒグマが、体力の回復に努めるべく、体重のあるオスのエゾシカを付けねらう。ヒグマから逃げるには、冬の間の食料によって決まる。空腹を抱えていると、エネルギーが持続できず、体力の消耗が激しく、ヒグマに捕まってしまう。ヒグマは、春先にエゾシカの肉を手にすると、一段と行動が活発になる。冬の間出産した母グマの場合、子供に優先的に餌を与える。母乳で育った子供は、初めて肉の味を覚えた。本格的に春が訪れるまで、死肉や枯れ草が中心の食生活である。栄養価が高い果物が実るまで、もう少しの辛抱である。

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気温が上昇の一途をたどり、小川に雪解け水が流れ、海へと下った。菖蒲の仲間ミズバショウは、雪解け水を吸い込んで、花を咲かせた。キツツキの仲間アカゲラは、木の根元から小さな昆虫を探していた。エゾシカのオスは、地面から伸びる笹の葉っぱを貪るように食べ始める。背中の毛を幹にこすって、寄生中を落としていく。周りの様子を見るため、首を90度回転させると、角の先端部分が背中に辺り、衝撃で片方の角が抜け落ちた。驚いて走り出すと、もう片方の角もはらりと抜け落ちた。毎年春に角が生え代わり、落ちた跡は血が滲み出す。すぐに固まるため、出血の恐れはないが、立派な角を持ったオスの威厳はどこにもない。大きな角を生やしていたオスは、秋から冬の間に、縄張りから外に追い出した若いオスとしばしば出くわす。若いオスは、冬の間大きな角を生やしていたオスと向き合っても、一歩も引かず、邪魔だというように追っ払う。角を失ったオスは、若いオスの言うことを聞き、諦めて退散する。大きい角を持つオスほど、ホルモンの分泌が早く、春のはじめに抜け落ちる。3歳から4歳の若いオスは、角を維持でき、立場が逆転する。冬の間に大きな角を生やしたオスは、若いオスに追われるようにひっそりと暮らさなければならい。
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 生まれて3年から4年のオスも、夏には角が抜け落ち、大きな角を生やしたオスと力関係は変わらなくなる。夏まで角を維持できるのは、生後1年の年若いオスのみである。夏には、独り立ちしたばかりのオスが、大人のオスより順位が上回り、優先的に食べ物を得られるようになるのだった。季節によって順位が入れ替わる動物は、日本でエゾシカ以外に例がない。
 6月、初夏を迎え、新緑の季節になった。世界最大のキツツキの仲間クマゲラは、ミズナラの朽木に巣を作り、子育てにいそしむ。キタキツネは、岩壁を慎重に降りて、餌を探す。母親の背後から生後1ヶ月の子ギツネが見られた。親が一跨ぎする岩を、子ギツネは爪を立てて這うように登った。

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茂みの中に1頭のエゾシカのメスの姿があった。きょろきょろと辺りを見回し、一端座っては、すぐに立ち上がる。ヒグマに見つかってしまうと、親子共倒れになる。敵の気配がなく、安心して、出産の準備に入った。臀部に痛みが走ると。体のバランスを失い、足に大きな負担がかかる。膝が曲がりながら、必死に耐えた。体力の限界により、母親は膝を折り曲げて、一端姿勢を崩した。臀部から子供が顔をのぞかせた。まず手足が抜け、すぐに顔も現れる。母親は、もう一度踏ん張った。子供も必死に力を入れて、母親のお腹から這い出す。手足は抜けているが、胴体が産道にひっかかった。母親の体に激痛が走り、地面に横たわり、子供の手が地に届きそうになる。母親は、一時的に痛みから解放されたが、再び起き上がり、子供を地面に産み落とした。体全体が粘液に包まれた子供は、衝撃から守られる。手足を引っ込め、うずくまっていた。母親は、産みの親だと知らせるため、体重6kgの子供の毛を盛んになめた。子供は、くすぐったいというように、顔を左右に振る。母親は、地面に体を預け、子供に乳を与えた。子供は、初めて立ち上がり、毛をまさぐり、乳房を探った。密生した毛の中から母乳にありつき、栄養を蓄える。

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冬の間最も大きな角を生やしたオスは、長さ30cmの角が生え始めた。薄い皮膚が角を覆い、産毛が生える。角の先に血管が集まり、ハエなどの害虫が付着していた。春先角が落ちると、すぐに伸び始め、2週間で長さが3cmになる。角の先が別れ、二ヶ月で二又になり、三ヶ月で角が枝分かれする。角を早く生やすには、栄養を取らなければならない。若いオスは、カルシウムやタンパク質が含まれる若葉を一日に5kg以上食べる。
 オスは、角が抜け落ちる分、体に栄養を蓄えることが可能になった。春から夏に、草を食べて、ビタミンを補給し、健康状態が良くなると、頭蓋骨から角が伸び始める。余った栄養を角に回すため、食料の確保が必須である。栄養状態が悪いと、角も延びなくなる。知床は、手付かずの自然が残され、エゾシカを養うだけの草が豊富にあり、繁殖の秋には角の大きさが最大限に達する。角には神経が無く、相手と角を突き合わせても、痛みがなく、傷一つつかない。繁殖の秋が過ぎ、冬を越えて、食べ盛りの春を迎えると、栄養不足を補うべく、角を落とす必要があった。
 オスは繁殖に専念し、子育てをメスが引き受ける。母親は、子供を連れ添い、斜面を登った。天敵を警戒し注意深く辺りを見回した。子供は、足腰が丈夫になり、少しずつ歩いて移動するようになった。母親は、子供を見失わないように後を振り返った。小さな子供は坂道の移動が負担になり、足が止まって動けなくなった。母親は倒木に子供を隠し、斜面に生える草を食んだ。春から夏の季節、植物が最盛期を迎える。母ジカは乳を出すために、広い縄張りを確保し、下草や若葉をたくさん食べる。森の奥から、辺りを徘徊するキタキツネが現れた。子鹿は、天敵の気配を感じ取り、身を伏せた。茶色い毛に混じった黒の斑点は、地面に溶け込んでいる。母親の方は、キツネの行方に神経を尖らせながらも、子供の姿を隠すため、草を食べ続けていた。

写真=キタキツネ 掲載元 山川自然研究所  https://jnol.jp/hokkaido-mamal/
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キツネは、視覚を頼りに狩りをするため、子供を見つけられずに、去っていった。母親は、成長するまで子供と行動することを避けて、授乳のため一日に平均3度顔を合わす。生後3ヶ月がたつと、母親と顔を合わせる機会が多くなり、食事の仕方を覚えていく。母シカは、キツネが去ったことを確認すると、子供に乳を与え、川へ誘導する。水深は浅いが、流れは至って早い。母親が前足を川の中に入れると、子供は両足で飛び込んだ。肩の当りまで水に浸かり、小石を踏み台にして渡ろうとする。子鹿の力では、川の流れに逆らえず、飲み込まれてしまう。母親は、子鹿がおぼれるリスクを避けて、水深が浅い場所を選んでいた。川に押し流された子鹿はすぐ近くの岩にぶつかった。子鹿は母親の方を見る。母親は鼻先で子鹿の臀部を突っついた。子鹿は、川岸に上がり、ブルっと身震いした。母親から離れて一人歩きをし、川に踏み込めば、溺れる危険をはらんでいた。自然で生きることがいかに難しいか、子鹿は日々の生活を通して、学んでいく。


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 森の中の湖は、ハスや睡蓮が見ごろを迎える。メスの鹿が水の中に体をどっぷりと浸かり、前足をフル回転させて、睡蓮の葉のところまで泳いだ。後から他のメス鹿も水の中に入り、ハスの葉に向かう。2匹は触れ合うこともなく、安心して食事をした。
渓流に場所を移すと、岩の上にカワガラスがとまり、たびたび水中に潜っては昆虫を捕まえていた。子連れの鹿が、移動の最中渓流に姿を現した。

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母親は、岸辺に積み重なった石を跨ぎ、対岸へと渡っていく。子供は、激流に流された経験があるのか、一瞬躊躇した。体重は生まれたときの3倍になる20kgに達した。母親に遅れまいと、勇を鼓して、跳ぶように川を横切った。
対岸の森で、他の親子連れの仲間と合流した。子供は母乳から離れ、ビタミンが豊富な緑の草を食んだ。足腰が丈夫になり、好奇心を示して近づくカラスのそばに寄り、前足で地面を蹴って、追い払った。

   第3章 大ヅノに最後のひと手間
9月、夏が過ぎ、短い秋を迎えた。知床の森に雨が降り、植物に恵みをもたらす。気温は10度を下回り、朝晩は気温が0度近くまで下がる。オスは、角が成長し、長さ70cmになっていた。血液が固まって、硬くなり、トドマツの葉に角を擦り付けて、皮膚をはがした。

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袋角が大きくなったオスのそばに、若いオスが現れた。2匹は互いにじっと見つめる。大きな体をしたオスの角は、柔らかく、喧嘩になれば折れてしまう可能性がある。袋角を生やした体の大きなオスは、神経質になり、戦いを避けて、去った。若いオスは、餌場を乗っ取り、食事にありついた。体の大きなオスは、泥の池にやってきた。泥の中に踏み込み、態勢を低くしながら角を差し込んで、磨き上げる。角に泥をたっぷりつけて、黒く染めた。池から外に出て、最後の仕上げを迎える。小さな木を前にしながら角の先端を葉っぱに擦り付け、皮をこすってはがす。角が痛まないように慎重に作業を行った。角の先端の白い部分が、くっきりと浮かび上がり、堂々と森の中を歩き回る。若いオスも、もはや大きな角を生やしたオスに対抗できない。夏の間年若いオスに屈従したオスは、縄張りを手に入れ、繁殖準備に入る。


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 エゾシカは、北海道で最も生息数が多い哺乳類にあげられる。一年で生え変わる角の大きさによって、力関係が変ることは一般の人々に知られていない。秋から冬には、8歳のオスが優位な立場に立つ一方、大きな角ほど早く抜け落ちる宿命があり、春先には失ってしまう。生後3歳から4歳のオスが、冬の間縄張りを独占した8歳のオスから居場所を奪い、思う存分草を食んだ。この若オスも初夏には角が抜け落ち、生後1年のヤギのような角を生やした小さなオスが、頂点に上る。若いオスも年上のオスも、季節によって順位が変り、一年を通して平等に餌を確保することができた。

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 メスは、1頭の子鹿を連れ添い、草を求めて森へ移動する過程で川を越え、斜面を登り、危険と出くわしながらも、暮らしを営んでいる。子供は、厳しい冬を前に、母親から離れ、独り立ちする。秋にたっぷり食料をとることができれば、雪解けの春を迎える。エゾシカは、古くから人の身近に住む生き物だった。今では、観光客の餌付けによって、人にすっかり慣れて、警戒心を示さなくなった。開発に伴い、森に車が行きかう道路が敷かれ、交通事故も後を絶たない。ここ知床では、自然遺産に登録され、人の立ち入りが禁止された。土壌汚染もなく、木々も手入れされ、野生動物にすみよい環境が守られた。エゾシカは、長い間食糧不足の冬を耐え、花園へと変わる春を謳歌している。


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