クルマ0374 アルゼンチンの国民車(IKA/RENAULT TORINO)

多くの人が 世界最高のレーサーと認めるJuan Manuel Fangio(ファン・マニュエル・ファンジオ、F1優勝回数24回・ワールドチャンピオン5回。本稿0345参照)を生んだ国アルゼンチン。
この国を走っているのはほとんどが輸入車ですが、アメリカ・ドイツ・フランス・日本などの大手メーカーのクルマをライセンス生産した現地製も走っています。

ライセンス生産とは、製品を開発した企業からライセンス(製造許可)を取得し、ロイヤリティ(特許・著作権・商標などの使用料)を支払って生産することです。開発した企業による部品の供給は行われず、全てライセンスを取得した会社が自力で調達します。
これに対して、製品を開発した企業から部品を供給してもらって生産(組立)することをノックダウン生産と言います。

1956年、コルドバ州サンタ・イザベルにIndustrias Kaiser Argentina S.A.(カイザー・アルゼンティーナ工業)が設立されました。アメリカのKaiser Motors Corporation(カイザー自動車株式会社)の合弁会社として設立されたこのメーカーは、社名が長いのでIKAと略して表記されます。

IKAは多数の車種を生産していますが、最も知られているのはトリノでしょう。
このクルマの元になったのはAmerican Motors Corporation(AMC)のランブラーで、同社からライセンスを取得し1966年に生産を開始しました。
しかしランブラーをそのまま生産したのではなく、IKA独自デザインのボディ(アルゼンチン製)が一部に組み合わされていました。

その後IKAは1975年にフランスのルノーに買収されてRenault Argentina S.A.(ルノー・アルゼンティーナ株式会社)に改名しますが、「アルゼンチンの国民車」として人気を博したトリノは細部を変更しながら1981年まで生産が継続されています。

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アメリカ人工業デザイナーのRichard Arthur Teague(リチャード・ティーグ)による基本デザインをピニンファリーナがブラシアップしたトリノは、ホイールベース2723・全長4580・全幅1680・全高1300mm、車重1060kgの4ドアセダンでした。

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車体は上述のように、IKA独自デザインのボディを部分的にあしらったAMCランブラーのライセンス生産でしたが、カイザー製の水冷直列6気筒OHC3.77リットル(142馬力)エンジンはノックダウン生産されていました。
これはフロントに搭載され4速ギヤボックスを介してリヤを駆動、最高速度は160km/hと発表されています。

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翌1967年には2ドア・クーペがラインナップに加わりました。全長は4492mmに若干短縮されています。

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クーペに搭載されていたエンジンはセダンと同じながら、ウェーバー3連キャブレターを装着して出力188馬力・最高速度200km/hとされていました。
さらに380Wなる高性能版が用意されていました。エンジンは同じ3.77リットルながら215馬力にまでチューニングされており、ZF製4速ギヤボックスを介した最高速度は205km/hに引き上げられていました。

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1968年には、水冷直列6気筒OHC3リットル・エンジン(122馬力)を積む廉価版が追加されています。このモデルの最高速度は150km/hと発表されています。380Wと大きな差があります。

さて、トリノはコンペティション活動にも積極的に使われました。白眉は1969年のニュルブルクリンク 84時間耐久レースでしょう。Eduardo Copello(エデュアルド・コペロ)/Alberto Rodriguez-Larreta(アルベルト・ロドリゲス-ラレータ)/Oscar Mauricio Franco(オスカー・マウリシオ・フランコ)の3人が組んで乗車した、3950ccに排気量アップされた白いマシン(ゼッケン3)が4位になっています。

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ところで、車名の"TORINO(トリノ)"は、ラジエターに付けられたバッジの意匠に端的に表れていました。

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イタリア・トリノ市の紋章(後脚で立ち上がる牡牛)が元になっています。トリノ市内の至るところで目にします。これはアーケードの床に施されたモザイクタイル。

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