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2022年09月26日23:32

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今回も怖いが、それだけじゃない!「LOVE LIFE」

深田晃司監督の作品「淵に立つ」は本当にショッキングかつ恐ろしい映画だったし、続く「よこがお」もずっと怖い映画でした。
ジャンルとしてはホラーやスリラーにならないかもしれませんが、そういうジャンル映画には無い恐ろしさのある映画で、僕は彼の事をホラー映画監督だと思っています。

コメディ映画というのは笑わせる事が主題のジャンルですが、彼の映画(すべてではありませんが、上記2本については)はその逆、非常に気まずいシーンや、こんな場には絶対に居合わせたくないと思える場面こそが見せ場となっているのです。
本当にこちらの想像を上回る最悪な展開が描かれるので、以降ずっと「次はどんな恐ろしい事が起こるのか?」と身構えてしまい、何気ないシーンでもヒヤヒヤし続けてしまう・・・。
「もう何も酷い事が起きないで欲しい!」と本気で願ってしまうほど、ガチで怖い映画だと思っています。

今回の「LOVE LIFE」は、予告で観た限りでは普段絶対観ないタイプの映画です。
登場人物達が大声で怒鳴り合う、感動を顔にベッタリと押し付けてくるタイプの映画に見えるからです。
でも、深田晃司監督の映画ですから、これは気になってしまいます。
どんな嫌な映画なのか・・・。
前作の「本気のしるし」は劇場で見逃してしまったので、どうにか観たいと思いました。

上映していたと知ったのが遅く、すでに1日1回のみ、しかも聴覚障害者のために字幕が付くというバリアフリー上映という形式でした。
音楽や効果音の説明まであるので少々わずらわしい場合もありますが、セリフがすべて確認できるのはなかなか良かったと思います。
誰が話しているか分かるように名前も出てくるのが新鮮で、「こいつそんな名前なんだ」と感心しました。

日本映画でも、誰が何を言っているのか分からない事多いですからね。
ヤクザ映画とかでこれをやってもらうと有り難いです。
「仁義なき戦い」とか、半分くらい聞きとれなかった気がします。

やっぱり、今作も面白かったです。
とにかく最後まで目が離せない。
イヤ〜なシーンや重苦しいシーンは、もちろん盛りだくさん。
こういうシーンになると、妙に映画がイキイキしてくるのです。
最悪なシーンほど、アイデアに満ちている!
映画の中心となる悲劇のシーンの演出とか、ノリノリじゃねえか・・・と思いました。
お葬式のシーンでの修羅場なんか、もう悲惨すぎて笑ってしまったほどです。
こんな葬式は絶対嫌だ!
参列者たちの気まずさよ・・・。

そんないつもの深田晃司映画ですが、しかし今回は突き放すばかりではないのです。
一体どんな結末になるのかは、最後の最後まで分かりません。
もうここで終わりか、そういう映画だったのか・・・と思うと、終わらない。
エッ、そんな展開?と、更に困惑をさせてくれます。

この映画は、矢野顕子さんの曲「LOVE LIFE」から着想を得た作品なのだそうです。
僕は聴いた事がありませんでしたが、最後に流れます。
映画が終わっても、一体どういう映画なのか分からないと困惑するかもしれませんが、曲の歌詞を読むと「なるほどな」と感じる事が出来ます。
多くの苦痛の果てに辿り着く境地、それがこの歌詞なのだと思いました。
映画を観た後読むと、なかなかジーンときます。

主演の木村文乃さんは、もちろん美しい方ですが、無邪気で可愛らしい部分と同時に、何か影を感じさせる部分を持っていると思います。
本作では笑顔のシーンは少なく、無表情で何を考えているのか分からず、行動も突飛だったりするので、この影の部分が非常に色濃く出ています。
煙草を吸うシーンも格好よく、彼女のプライベートもこうなのでは?と思わせるほどのハマリ役でした。

外国人、障害者、路上生活者、生活保護等、現代日本における様々な問題をちりばめてはありますが、社会問題を告発する内容では無く、あくまでも普遍的な家族、そして男女の物語です。
しかし、恋愛映画と呼ぶのはかなり抵抗がある、それらの闇の部分を中心に描いた作品なのです。

登場するのは問題のある人間ばかり。
人間だから当然問題があるのです。
しかし人間だから、問題ばかりではない。
まずそこからスタートし、そこに終着する物語なのだと思いました。

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