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2022年10月01日11:25

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昨年の公開映画のよかった作品に続々と出遭い、9月が終わる。

 9月20日(火)に昨年2021年1月公開の外国映画「キング・オブ・シーヴズ」を観る。

「キング・オブ・シーヴズ」(ジェームズ・マーシュ)
英国史上で最も高額で高齢の金庫破りとして話題となった実在の事件の映画化。実話だから、それ程ド派手ではなく、高齢者犯罪集団が主役陣だから、スピーディーでダイナミックという事には行かない。でも、イギリス映画らしくマイケル・ケイン、トム・コートネイ、マイケル・ガンボン等、高齢名優の揃い踏みでそれなりに楽しく魅せてくれる。(まあまあ)

 9月22日(木)に昨年の令和3年8月公開の日本映画「ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。」を観る。

「ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。」(島田陽磨)
1960年の帰国事業で、日本人妻として北朝鮮に渡った20歳上の姉に、58年後に会いに赴いた妹を追うドキュメンタリー。当初は家族を捨て異国に去った姉に対し悪感情しか持っていなかったが、年を経て愛しさもつのってくる。変遷するのは個人の心情だけではなく、日本と朝鮮半島との関係も大きく変化した。この頃の日本のかなりの風潮は、韓国は軍事独裁の圧政の国、北朝鮮は労働者の天国の理想の国だった。時の政府は、先の大戦で日本の重荷であった在日一掃の目論見で、自由な国を国際PRしたい北朝鮮政策にこれ幸いと乗っかっての、盛大な帰国事業支援だった。そして、今の日朝関係は、肉親も自由に会いに行き来できぬ程に悪化し、国は手を差し延べようともしない。そこに、国家の勝手な恣意で翻弄される庶民の悲哀が浮かび上がる。しかし、それはよくある話でもあり、私が深く感じ入ったのは、それに伴うマスコミ論調の変化と、それに一方的にワルノリする世論の動向である。とりわけ、北朝鮮に対する変化の激しさはどうか。かつて労働者の天国と称えた国が、今や親族が北朝鮮にいることすら口に出来かねる位の、悪魔の国の如くに至っている。マスコミとそれに踊らされる一方的世論、もっと恐ろしいのは、そういう過去を無かったのごとく、ケロリと皆が忘れ去っていることだ。これが、戦前の「一億火の玉」から敗戦後の「騙されていました」に変化した日本人の、愚かで極端なブレに通じていなければ幸いである。(よかった)

 9月27日(火)に昨年2021年3月公開の外国映画「ミナリ」を観る。

「ミナリ」(リー・アイザック・チョン)
アメリカンドリームを夢見て、レーガン政権下の1980年代に韓国系移民となった一家の悲喜こもごもの情景が、淡々と綴られていく。夫婦仲が悪いわけではないが、何とか質素に生きていければ良いと考える妻に対し、雇われ人では駄目だと資金を投じても農家として自立を目指す夫との間で、細かい口論は絶えない。共働きは厳しいので、韓国から妻方の祖母を子供の面倒をみてもらうために呼び寄せる。二人の子のうち、幼い男の子の弟は姉のようには祖母になかなかなつかないが、段々と仲良くなっていき、地下水を発見して軌道に乗ったかに見えた野菜収穫は、水脈が枯れて水道補給が必要になり、断水に至ったりで文字どおりの悲喜こもごもだ。男の子は成長の一時期に手術が必要な、生まれながらの心臓病を抱えていたが、奇跡的に回復する。だが、それに前後して今度は祖母が脳梗塞で倒れる。野菜の出荷先から突如キャンセルがあったりするが、その後によいお得意先が救世主的に現れたりする。その出荷野菜が手か不自由になった祖母のアクシデントによる火事で全焼と、文字通りの悲喜こもごもがない交ぜに繰り返される。すべての好事も悲劇も決着があいまいなまま、淡々と生活は続いていく事でエンドを迎える余韻が味わい深い。人生ってこうだよなと、シミジミと感じさせる。そして、祖母がささやかに植えた河辺のミナリ(セリ)の青々とした群生に、なぜか安らぎを覚える。かつての日本映画を彷彿させる良さだが、アメリカンドリームを夢見ての移民という題材は韓国映画ならではだろう。(よかった。ベストテン級)

 脳梗塞によるアクシデントは、今の私にとって他人事ではない。祖母が落とした些細な火種が手が不自由のため、消し止め損ないアッという間に枯草に燃え広がる光景に、障碍者の私の身としてはかなりゾッとした。俺もホントに慎重に行動しないとなあ。

 1980年代にアメリカンドリームを目指す韓国に対して、この時代の日本はバブル前夜の好景気真っ只中。現在住んでいる住宅を私はこの時代に購入したが、1年遅かったらバブルによる地価大暴騰で、サラリーマンには手の届かないお値段になっていた。映画と関係なくそんな映画と同時代の私の事が頭をかすめた。

 同日9月27日(火)に昨年2021年2月公開の外国映画「私は確信する」
を観る。

「私は確信する」(アントワーヌ・ランボー)
妻が失踪し、殺人容疑をかけられた男が陪審で無罪となるが、疑いを捨てられない警察・検察は、8年後に再控訴する。妻に愛人がおり、その愛人も含めて疑惑は闇の中に突入していく。実話が基なので、ミステリーとしてストンと腑に落ちる結末とはならず、その観点からの面白さには乏しいが、「疑わしきは罰せず」「推定無罪」の原則が全編に貫かれているので、報道などで感情に流される危険性について、啓蒙された効果があった。(よかった)

 9月28日(水)に昨年2021年4月公開の外国映画「AVA/エヴァ」を観る。

「AVA/エヴァ」(テイト・テイラー)
「ゼロ・ダーク・サーティ」「女神の見えざる手」etcで、私の御贔屓クールビューティーになったジェシカ・チャステイン主演作だ。今度のキャラは暗殺者で、今までの静的魅力に加えて、アクションも見せる。これがキレッキレの素晴らしさ(シャリ子ことシャリーズ・セロンに引けを取らない)。時に血みどろになり、返り血を拭うポーズが何ともセクシー。セクシー度倍増である。所属組織に牙を剥かれての組織との闘争劇に特段の新味は無く、ジェシカ・チャステインのクールビューティーだけを堪能すればよろしい。エンディングから鑑みて、このキャラならPART2以降も引っ張れそうで、もっと見たい思いもあるが、主要キャストのジョン・マルコビッチやコリン・ファレルも消えてるし、そう思わせるだけで幕引きにするのが案外いいのかもしれない。ジーナ・デイビスがチャステインの母親役で登場するが、あまり見せ場が無いのが残念と感じるのは、昔のジーナの豪快さを知る人間の僻目か。(まあまあ)

 9月29日(木)にピンク映画「わいせつステージ 何度もつっこんで」を観る。

「わいせつステージ 何度もつっこんで」(後藤大輔)
メジャーでないこじんまりとした寄席(ロケ場所は木馬亭みたいでリアリティにはやや問題あり)に立つあまり売れない腹話術師(小滝正大)とその弟子(川瀬陽太)に、盲目の若い女(向夏)がファンとして花束を届ける。小滝は電話で向夏と話すが、弟子の川瀬がチャッカリと手を出す。かくして腹話術もどきに声は小滝で体は川瀬という二人一組の盲目ならでは成立するおつきあいが始まるが、この3人のアンサンブルが魅せる。かなり無理無理な設定だが一種のファンタジーとして(木馬亭ロケも含めて)楽しむところだろう。ワキを彩る喧嘩しつつもコンビを続ける漫才師のアクセントも含め、下積み芸人の悲哀がシミジミと多彩に浮き上がる後藤大輔監督・脚本作らしい変化球ピンクである。(よかった)

 前回日記から9月末までに観た映画は次の16本。

「キング・オブ・シーヴズ」「ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。」「陪審員」
「沈黙の粛清」「ジェクシー!スマホを変えただけなのに」「大頭脳」
「ホット・スポット」「アサインメント」「フリーランサー NY捜査線」「ミナリ」
「私は確信する」「AVA/エヴァ」「残雪」
「劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ」
「わいせつステージ 何度もつっこんで」「夕笛」

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