この映画はオリジナルの韓国映画「ブラインド」、その後に中国資本で同じ監督によってリメイクされた「見えない目撃者」の、日本におけるリメイク作品です。
つまり、同じ内容のものが3バージョンあるわけです。
日本版が中国版と同タイトルなのは、ややこしいですね。
通常、ハズレを引きたくない場合はオリジナルバージョンを観るのが間違いないわけですが、今回はせっかく日本版が劇場で観られるタイミングなのでこちらを最初に観てみました。
調べてみたら、基本の流れは同じでも犯人の設定等、違う部分も結構あるようなので、いずれ他のバージョンも観てみたいです。
こういう、バージョン違いを楽しむのは、音楽でも映画でも結構好きです。
よく、オリジナルを知っている人はリメイク版も「あれがダメだ、これがダメだ」と批判しがちですが、僕は結構リメイク版も好きな作品が多いのです。
今年も「サスペリア」と「チャイルドプレイ」のリメイクが公開されましたが、どちらも大傑作でした。
「屋敷女」のリメイク「インサイド」は、評判どおりにイマイチでしたね〜。
そういえば、屋敷女のDVD、早く再発して欲しいのですが・・・。
・・・なんかホラーばっかだな!
まあ、この作品も限りなくホラーテイストの強い作品です。
途中まではミステリーなのですが、事件の猟奇性が浮き彫りになると陰惨さが増していき、終盤は完全にホラーです。
グロテスクな描写については、日本版はパワーアップしているほどです。
序盤で、主人公が盲目になるまでを一気にテンポ良く見せます。
これがダイジェスト感満点で、「これまでのあらすじ」を見ているよう。
本当に悲惨な経緯なのですが、すぐにまた本題の事件に巻き込まれるのです。
「あなたは映画の主人公なんだから!」と周りで一生懸命に励まさないと、とてもじゃないけどやっていられない状況過ぎます。
主役を演じるのはどん兵衛のCMで、けものフレンズみたいな格好をしてファッション童貞の星野源とイチャイチャしていた吉岡里帆さん。
耳やしっぽがありませんが、間違いありません。
普段は童貞をムラムラさせるスキルを遺憾なく発揮していますが、今回はずっと暗い顔をしています。
SNSで女性から過酷なバッシングを受けた結果では無く、事故で弟を失った上に盲目になってしまったという役を演じているからなのです。
彼女がたまたま誘拐事件を目撃(見たのではなく聞いたわけですが)して警察に行ったものの、「メクラが目撃者?忙しくて優秀な日本の警察を動かしたかったら、その盲導犬に手首でも咥えさせてこいや!」と相手にされず、独自に捜査するというお話です。
現場に居合わせた少年と協力し、被害者の特定から徐々に連続少女失踪事件が浮かび上がり・・・と、軽快なテンポで緊迫感を持続しながら事件の真相に迫る部分は本当に面白い!
調べたら、オリジナルも中国版も犯人は序盤から明かされているため、ミステリー要素は薄めなのだそうです。
そう考えるとこの作品は犯人が終盤まで明かされず、その真相も驚きのものなので、ここはうまい改変がされているようです。
本当に、終盤までは興味をグイグイと引っ張る展開で素晴らしいのです。
問題は、犯人が明かされ、遂に主人公達と対決するクライマックスです。
よくホラー映画の感想で、「登場人物が馬鹿な行動ばかりとって殺されるので、イライラする」というものを見ます。
僕はこの辺に寛容で、「そのおかげで楽しい殺され方をたくさん見れるわけじゃんか!分かってねーな!」と思う方なのです。
ところが、この映画はこれが酷すぎて、全員のすべての行動が明らかにすべて間違っているので、「優先順位!」とスクリーンに叫びたくなるほどです。
応援上映というものが最近流行っていますが、この映画は「ツッコミ上映」をやったら盛り上がること間違い無し!
殺人鬼の見せ場のために被害者達が協力しているみたいで、「もう殺人なんて僕には無理だよ」と自信を無くした殺人鬼を励まそうと、みんなで一芝居打っているのかと思うほどです。
これまでの緊迫感も一気に冷め、何度も笑ってしまいましたよ!
この見事な「台無し感」が残念ですが、全体としては確実に面白いと言えます。
やっぱり、何度もリメイクされる映画というのは面白さがある程度保証されているものですが、この作品も同様です。
上記のクライマックスと、エンディングのJポップに目を瞑れば、スリルとサスペンスをたっぷり味わえると思います。
主人公の全盲を考えれば、そのぐらい何でもありませんよ。
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