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2019年05月15日17:11

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ナイトメアハンターの、なんというか心理学的だったり

あるいは社会学的な、
デリケートでアカデミックなところに、

ある種無自覚な高校生キャラたちが
しかし対悪夢のプロとしてだけはどう挑んでいくのよみたいなのは
結構テーマとして重いのかもしれない。
カルくキレイな話にするんじゃもったいないという感じさえある。
人の心の形成の話なんだから「普通の重さ」は普通にあるよねみたいな。

土曜日はナイトメアハンターD,悪太郎氏GM。あーそうかこれ鬱Pの曲かなるほどの巻。



お久しぶりのナイトメアハンター、
直近でGMが
汁うどんさんメインアートの「3rd eye」なんてやってらしたから

その辺に触発されたのかなと思ったけど
一部描写のほかはそんなでもなかった。



NHDというのは
「精神に取り付いて暴走を促し、その心象風景を破壊的に現実化させる」、ナイトメアという敵対存在が
基本的に犠牲者となるもの一人に取り付いて、
様々な障害を発生させるので
「だれが取り付かれているのか」「どこを暴走させられているのか」を
被害者に寄り添って読み解いていき、
ナイトメアとの戦闘時に使える「弱点」を探していく、
みたいなゲームになっているのですが


「NPCに寄り添う」という行為自体への特化、
精神を制御できない犠牲者NPCの、ナイトメアの取り付きやすい「精神的な弱点」のようなものへのアプローチ、

という意味でみるだに、
かなりデリケートな臨み方ができるゲームです。


ここ数年でこそ、
周りの人による鬱への対処だとか、
ある種の反応障害に対する一般的な応急の態度群みたいなものが
ネットで広がってはいますが、

そうしたもののいくらかはやはり神経・脳内物質の暴走によって施行に制御が利かなくなっていたり、
と非常によく似た……


いや、
「そこの部分を怪物のせいにすることで解決しやすくする」
という部分に限ってファンタジックにしてあると言ってしまってもいいのかもしれない。
そんなゲームではありますが、



当然、「普通の」精神疾患、行動障害が、
ナイトメアと関係なく普通に存在しているという可能性は存在し、


それは精神に寄り添いナイトメアに対処する
ナイトメアハンターたちにとって、
どういう事柄になるだろうなんてのは
ほんとうにデリケートながら大変興味深いアプローチ。


今回は振り返ってみると結構そういうお話でした。



現れるナイトメアが、現実世界で行う悪さは、
「多数の人間から個性を奪っていく」行為。
その姿は、ゴスロリ衣装に身を包んだ、乱杭歯の少女。


登場するNPCは、
まず、


非常に上背の高い男子高校生。

事故にあって片目を失ったばかりか、
物理的な脳障害によって、トラウマを刺激する事案に対する感情の沸点が異常に低くなってしまい、攻撃衝動が抑えられない。
また、免疫系の異常によって色素体に「抜け」がおき、肌が白くなっていってしまうという症状を持つ。

自分を事故に合わせた人間を想起させる人、
もとより大きく目を引くのに加え、障害の関係で彼に注目する、揶揄するもの、特別助けようとするものなどといった「特別なもの」を見てくる第三者の目に強力なストレスを感じてしまい、攻撃衝動のほか、異食症などの摂食障害が出るレベルであるため、
そうした症状への対処が可能な病院のあるこの町に越してきた、
というもの。


次いで、
特徴に乏しい女子高校生。

どういうわけだか、顔中にピアスを付けた他校の生徒と付き合っている。
転校してきた巨大な男子生徒の眼帯が、体育の授業の表紙に外れたのを目撃し、
肉の盛り上がった眼窩を目の当たりにして卒倒してしまう。



顔中にピアスを付けた男。

花巻パリピ(名前。”仏人”と書いてパリピと読む。おしゃれなパリ(フランス)のヒト、と読み解く)
ピアスは自作であり、単なるファッション以上にクリエイターの道を歩みつつある。
付き合っている少女にピアスを進めているがなかなかつけてもらえない。



巨大な男子高校生の姉。

ビスクドールのデザインが生業。
通院のために越してきた弟の下宿先。
仕事のほかのことにあまり頓着がなさそうだ。



こんな構成。


結論から言うと、
ナイトメアに取り付かれているのは、卒倒した地味な女子高生。

巨大な男子高生は、シナリオ的にはミスディレクションというか、
精神的、脳外科的に
「本当に闘病している人」であり。

取り付かれた犠牲者の、「心のスキマの核になる人物」。



なので、
彼を「異変を起こしているナイトメア罹患者」としてかかわろうとすると、
外れるどころか
先の「注目、特別扱い」に対する強烈なストレスを与えてしまうことになる。

こうなると、解決に向かえないどころか
「普通の精神疾患に対する対処ミス」をおこし、事件と関係なく彼の症状を悪化させかねない。



そんな彼がなぜ、地味女子高生の心のスキマの核になるのかというと、



二人は、もともと幼馴染なのだけれど、
親の仕事の都合で、少年だけが一時この町を離れた。
離れる前は、よく二人で遊んでいたのだ、
という調べがついてくる。


彼女は、
「特別なもの」にあこがれている。

小さなころから、
ビスクドールを作っているお姉さんからお人形を一つもらい、
それを、一部破壊し、眼球を取り出し、口腔にガラス片を埋め込んで光る乱杭歯を据え付けて、、
腕の長さをちぐはぐにし、
「特別な形」にするのが楽しかった。


そうして、”欠損”でできる安易で危険な「特別」を、
例えば彼女の親などはいさめなかった。
当時から、たいして、誰も彼女のほうを見ていなかった。
幼馴染の彼も、特に何も言わないまま引っ越してしまった。
「特別」の種類とか、見え方、作り方、あこがれ方、
そうしたものを、彼女は子供らしい残酷さで実現し、小さな世界を守って自己肯定するだけで、
熟成されてしまった。
「普通」を排斥し、「特別」を愛でる。
「欠損」は、すごく簡単に、彼女を満足させた。

自分でそこに踏み込む勇気はないけれど、
大好きな幼馴染との、二人の特別な「子供」を、彼女は今でもいじってやまない。
あの日のお人形を、今でも何より「特別」な姿に保っている。

そして、あの時からずっと特別だった幼馴染は、
何年もたって、
誰よりも「特別」な姿で帰ってきた!
肌は白いし異食症だし目は片方ないし!
(卒倒したのは尊くてらしい)

さあ、「特別」じゃない奴らめ、お前たちには「特別」を名乗れそうな個性などに合わない。
普通な連中よ、普通な己を恥じながら、誰より特別な彼をたたえろ!




とこう来る。


というわけで、人々は「個性」を奪われ、
口々に「幼馴染の彼」をほめたたえるようになっていきます。


これはもうもちろん、
事故のせいでナイトメアなんぞいなくても
「特別扱いされたくない」という思いが病理的に暴走している「彼」にとって
明らかに症状を後退させる危険な現象を起こしていくことになります。


また、
この「特別」へのあこがれは、
形としては漠然と「普通」への嫌悪、という形で露出しているので、
「普通」な人々、「普通」な社会(例えば学校という組織など)は、
どんどん輪郭を失い、意味がなくなっていきます。
一番大きな実害はこっちになっていく。



というわけで、
こっち側は潜在的ネグレクトによる情操教育の不十分さが起こす、
自己形成の極端な過渡期をナイトメアに狙われた、というところであって、

「特別にあこがれるあまり欠損を作成さえしたがる」という思考・嗜好そのものは、
ナイトメアなんぞいなくても彼女自身に存在する問題であって、

病理が起こす心理障害と同じように、
現実的な教育・情操が起こす問題であって、


「ナイトメアハンター」はそこにどうやって挑んでいきましょうね、というお話。
まして、同じ高校生であるキャラクターたちは、
そうしたちょっとメタ的な心理対症療法なんてわかって挑めるのだろうか?



社会生活に対して、何らかの不都合や被害が出ることを
ざっくりと「障害」ということが多く、
のこりを乱暴に「個性」と言ってしまうようにできている世の中じゃありますが、

でかい男子のほうは十分に「障害」になってしまうとして(ストレスから攻撃衝動につながってしまっているので)

取り付かれた女子のほうは、自分を傷つけるに至らない程度の「趣味」を部屋に集めたり作成するにとどまり、
ピアスまみれの男と交際する程度の「自由」を行使している程度の嗜好なので、
「社会生活に不都合が」でていたりはしない。


普通のコです。普通の。
サブカルに、ちょっと珍しい執着心であこがれる程度の、普通の。

(鬱Pの曲懐かしい)

彼女の「特別」なところは、ピアスまみれの男が知ってくれています。
自分のような文化圏の仲間内に、「どう見ても普通」な彼女が足を踏み入れている。
髪も黒いまま、肌も傷つけないまま、なんでだか一緒に居続けている。
そのちぐはぐな状態に身を置いている彼女に、ピアスまみれは好意を持っているのです。
なんかヤベェ!


趣味、センスの需要と肯定、ないし批評というものが
ここに至るまで社会的に欠如していた彼女が、
ピアスまみれというビジュアルだけに惹かれて付き合い始めた男から、
もしかしたら初めて「受け入れて」もらえつつあるというのは、
極端から極端に飛ぶ危険性をはらんではいますが、
それでも大切な自己形成の場になっています。


というわけで、

「彼女の”特別”への憧れと”普通”への排斥感との区別」、
「彼女自身が大切にしている”特別”への価値観」、
「彼女を受容してくれる存在」、
「彼女が自分の意志以上に大事にしなければいけない他者」、

のあたりのワード、あるいはそれを象徴する物品が、
今回のボスを弱体化したらしめるキーになっていくよということになります。



……しかし、
病理にけなげに挑んでいきながら、本来はツッコミ気質で
なんかわからんまま幼心に別れてしまった彼女に普通に突っ込まなきゃなあと思ってた
みたいな「彼」のキャラクター性はなんかすごく人気が出ていたのですが、

その彼を中心に、ナイトメアによって周りに被害を出さされていく「彼女」のほうの
まーPLに嫌われたこと!
なんでしょうね、
普通を嫌って安易な特別を求める普通さ
みたいなものにやはりイヤさはあるんですかね。
「敵としては好かれていた」といってもいいのかもしれないくらいだった。
確かに、人格形成の不備が、ナイトメアが起こしている被害と区別がつかなくて
「ナイトメアでなく、彼女の人格が悪さをしている」のと区別がつきにくい印象を与えるくらい
彼女自身の嗜好の描写が強かったというのもあるんですが


ナイトメアのことをちゃんと取っ払えば
ある種のセンスが形成されていく「途中」の、すごくいい子の
精神・社会的過渡期に立ち会えている感じで
私なんかうれしかったんですけども。
不思議なもんだ。


クリアの仕方次第では
自分の殻を変な風に飛び出して
自分の体をガンガン傷つけていくことに垣根を感じなくなっちゃうエンドもあったそうですから
こわいこわいというところではありましたが……
サブカル趣味を交換していける程度の状態で事件が収まってよかったよかった。
キノコ趣味を布教しに行こう。多分相性はいい。
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