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2018年10月23日22:44

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J.S.バッハの無伴奏V【3】チェロ…トルトゥリエ

前回1962年と書いたが、どうも彼が最初の無伴奏チェロ組曲をEMIに残したのは1960年…彼が46歳の時だったそうだ。
1956年からパリ音楽院教授になっていたようだから、当時はフランス第一の音大現役教授による無伴奏演奏だった訳だ。

猫も杓子もカザルスと絶賛される中で、「最初に無伴奏チェロを聴くならば…」とこの演奏を推してくれたのは、当時は確かコーヒー専門店にいたか、既に文筆家になっていたかのI氏で、その頃駿河台下にあった「パパゲーノ」の超常連だった。

ドワーフみたいな体型で一瞬怖く見えるが、実はとても優しいおじさんだった。
ベートーヴェンとバッハをこよなく愛し、音楽評論家のコメントはほとんど意に介さず、自分の判断基準をしっかり持った哲人という風の方だった。

それ以来、この演奏は私の全ての基準。何かあったら、ここに立ち戻るというベースみたいな存在。

確か19歳の時で当時は当然LP。英EMIの輸入盤3枚組だったと記憶している。
当時は商標の問題でレコードの中心部のHis Mater's Voiceのニッパー君は削られるという悲惨な時代だったが、音質は当時の東芝EMI盤とは比べ物にならないくらい良かった。

37年経った今はそれなりに色々な演奏を聴いているが、今も懐かしい。
現在はLPは買い直し、独EMIプレスの仏EMI(パテ・マルコーニ)盤に代わり、CDは何故か東芝EMIが1000円の2枚バラ売りした時の廉価盤がある。
LPはスクラッチノイズこそ多いのだが、盤は分厚く、ジャケットも超豪華で、チェロの音色がよりリアルだった。
CDは、ジャケットもしょぼい廉価盤なのだが、バカにする無かれ…リマスター表示もないのに、意外なほど音が良くて全く不満がないため、今も持っている。

さて、このトルトゥリエの演奏は、カザルスのような絶対的な信念というか断固たる何とか…というものでなく、もっとバッハを身近に感じさせてくれるような演奏。
ただ、流石に60年。気合いは十分入った演奏ではあった。
私も当時は気合いが入っているのは当たり前だと思っていたので違和感無し(笑)

実に自然に体に入ってくるような演奏で何の不満も持たず、何度聴いたか分からない。
それにしても1960年でこのクォリティの音質は、当時のEMIの技術力の凄さだろう。

トルトゥリエは、1983年にも無伴奏を再録音している。
ただ、再録する人の大半が陥るというかやらかす、1番のプレリュードを快速で弾き切ってしまうし、やっぱり46歳の時の方が脂が乗っているというかエネルギー感が違う。

一応、この83年の録音(69歳)の演奏も持ってはいるが、これを聴くなら60年を聴きたいし、今は他に聴きたい演奏はもっとある。

それでもトルトゥリエの60年は原点だから、迷った時はここに戻ると思う。
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