mixiユーザー(id:17119814)

2016年05月02日12:44

345 view

大砲(49)

ベッセマー法の登場で鋼鉄のコストは劇的に低下したが、実はベッセマー法には欠点が存
在した。それは鉄鉱石中の不純物であるリンを除去できない、ということである。リンが
含まれる鉄は極めて脆くなる。

なのでベッセマー法によって、「使える鉄」を入手するには、もともとリンの含有率が極
めて少ない、良質の鉄鉱石を使う必要があったのである。さらに燃料となるコークスの原
料石炭も、リンの含有率が極めて少ないものが必要だった。

この条件を満たせば少ない工程で大量の鋼鉄が得られる。ヨーロッパではスウェーデン北
部のキルナ=エリバレ鉄山で採掘された鉄鉱石がこの条件にマッチした。それでも鋼鉄の
製造コストはベッセマー法が従来法の6分の1から7分の1になる。世界中でベッセマー
法に適した鉄鉱山が探されることになった。

アメリカの五大湖周辺で、大規模なリンの含有率が極めて少ない鉄鉱山発見されたのだ。
ピッツバーグを中心に大規模な鉄鋼生産施設が建設され、アメリカが世界最大の工業大国
にのし上がっていくきっかけとなったのである。まさに「鉄は国家なり」だ。

こうした良質の鉄鉱石が利用できない国はどうしたか。従来の鋳鉄から脱炭する方式を採
るしかなかったが、この方法もドイツのシーメンス兄弟が開発した平炉法という方式で、
生産性が向上した。この方式が開発されたのもベッセマー法と同じ1856年。

生産コストはまだベッセマー法のほうが安いが、鋼鉄を量産する方法は確立された。こう
して19世紀末は「鋼鉄の時代」となり、大砲や軍艦などの兵器や、建築物の大型化ある
いは高層化、そしてなによりも新しい交通機関である鉄道が発達していくことになる。

0 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する