mixiユーザー(id:64521149)

日記一覧

  16.   「こんにちは、また凄い量の花束ですね」  リリーが尋ねると、椿は笑顔を見せながら応えた。 「ええ、そうなんです。卒業式シーズンは終わったので、退職用です」  店のテーブルには花束が無造作に置かれ、メッセージカードが散乱していた。

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  13.  リリーが青々とした庭園に踏み込んだ時には、冷静さを取り戻していた。深呼吸し迷いなく目的地に向かう。空を見上げると灰色の雲が浮かんでおり今にも降り出しそうな天候に変わっていた。  皐月は外の庭の手入れをしていた。雨が振る前に終わら

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  12. 「えらい遅かったね、間に合ったのかい?」  部屋に戻ると、蘇鉄は笑顔でいった。 「女性にそんなことを訊くのは失礼だと思うんですが」 「すまんすまん、あまりに遅かったからね。ええと何の話だったっけ?」 「鋏の話です」 「そうそう、鋏って

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  10.  結局一睡もすることができずリリーは眩しい光を遮りながらブラックコーヒーで目を覚ました。普段ならコーヒーなど飲まないが徹夜明けには飲まずにはいられない。  鑑識官の話によると、刃物が二つ使われた形跡があったらしく、何でもナイフには

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