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2015年09月27日00:33

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『時には愛の言葉を』

 何となく妄想した短編というほどのものでもないネタ。
 オリジナルキャラが双子と絡んでます。オリキャラの嫌いな方は見ないように。
 アケローオスについては、『ハルモニアの首飾り』『ドナウの白波 黄金の酒』『セクアナの泉』『例えばこんな愛の形』『執着と愛の境界線』『常識についての一考察』を参照。
 『例えばこんな愛の形』以来、エロ話では、サガ、カノン、アイオロス、ラダマンティス、アケローオスの五角関係になっちゃってるわけだけど、この中で一番報われないのは誰なんだろう…。


『時には愛の言葉を』

 いつものようにアケローオスとサガとカノンが三人で愛し合った後。サガに左腕で、カノンには右腕で、それぞれ腕枕をして二人を抱いていたアケローオスがこう言った。
「サガ、カノン、一つ頼みがあるのだが…」
「何です?」
「『愛している』と、おれにそう言ってくれないか」
「…え?」
「…は?」
 双子はそろって目を見開いて顔を上げた。
「ほら。やはり気付いていなかったな。お前たち、一度もこういう場でおれに愛をささやいてくれたことがないぞ」
 アケローオスが軽く苦笑しながら指摘する。
「そ、そういえば、そうかも…」
 サガが考え込む。
「…今さら、おれたちに愛の言葉が必要か?おれたちの想いなんて、こうして肌を合わせていればあんたには全部丸わかりだろう?」
 アケローオスの腕に頭を預けたカノンが言う。
「ああ。それでも…聞きたい」
 と、河神が重ねて乞うた。
「心の伴わない行為など空しいだけだ、などと青臭いことを言うつもりもないが…、時々、我ながら何をやっているのかと、自分で自分に呆れることがあるのでな」
「……」
 体を起こしたサガが、そっと上からアケローオスに口づけながらささやいた。
「愛していますよ、アケローオス様」
 軽い口づけを与えながら、サガが繰り返す。
「愛してます。あなたは…私の大切な『兄』だから…」
「男としては、愛してはくれないのだな」
 その言葉にサガは眉根を寄せて困ったような顔をした。
「ああ、やはりそんな顔をする。すまない、無理を言ったな、サガ」
「…すみません。私はアイオロスを…。あなたは違う『愛』をお望みかもしれないけれど、私は…そのお望みに応えられない…」
「いいんだ。分かっている」
 悲しそうにそう言って、アケローオスはサガの顔を撫でた。サガも瞳に悲しみに色を浮かべた。
「もし私が愛したのがアイオロスでなかったら…、私はあなたを愛していたかもしれないけれど…。あなたは、とても魅力的な方だから…」
「ありがとう、サガ。今はその言葉だけでいい。そう、おれもお前を愛しているよ、『弟』として…」
 サガを抱き直してキスをしたアケローオスは、カノンに目を向けた。
「カノン、お前は?」
 問われたカノンは体をアケローオスにすり寄せた。
「おれがあんたを『男』として愛したら…あんたはおれだけのものになってくれる?」
「…そうだな。そうなってもいい。だが、お前はおれを愛してはくれないのだろう?」
「…うん」
 カノンも申し訳なさそうにうなずいた。嘘やごまかしなどアケローオスには無意味だし通じないから、そう答えるしかなかった
 それでも、と、カノンが言う。
「おれ…あんたのことが嫌いなわけじゃないぞ。嫌いなら、おれの中には挿れさせてやらない」
「ふふ…」
「…愛してる、大兄さん」
 そう言って、カノンもアケローオスにキスをした。
「おれも愛しているよ、カノン」
 キスに応え、アケローオスもカノンに告げる。
「すみません、アケローオス様。私たちはあなたに甘えてばかりで…、何一つあなたに与えられなくて…」
「いいんだ、サガ。お前は教皇を、そしてカノンは冥府の判官殿を、愛していればいい。それがお前たちの幸せならば…おれはそれを望むよ。あとはおれがそれに満足していればいいことだ」
「すみません」
 謝罪の言葉を繰り返したサガが言う。
「私も…あなたに幸せになっていただきたい…」
「ああ」
 望んでいるのはただ一つ。愛する者の幸福だけ。
 その想いを胸に、三人はそれぞれの切なさと哀しさを飲み込んだ。

<FIN>

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