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2018年05月19日16:44

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『お兄ちゃんと一緒』

 2018年の双子誕作品です。
 今年はネタが思いつかず、こんな小品しか書けませんでした。
 聖戦後復活設定でロスサガ・ラダカノ前提ですが、サガとカノンのいちゃいちゃぶりにアイオロスが撃沈する話です。
 サガは天然ですが、カノンはサガに絶対にわざと甘えてます。
 昨年の双子誕はこちら。『女神と海皇の諍い』http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8189423


『お兄ちゃんと一緒』

 教皇アイオロスはいぶかしんだ。
 出仕して教皇の間に登宮してきた首席補佐官である双子座のサガの様子がおかしいのである。
 いつもは凛とした物腰でてきぱきと仕事を片付けていく彼が、その日は、やたらとあくびをしたり、目をこすったり、時にはうつらうつらとうたた寝をしているのだ。なんとも珍しい状況だった。
「サガ…眠いのか?」
 その時も睡魔に負けて舟をこぎ始めていたサガに、アイオロスが声を掛けた。サガははっとして慌てて意識を覚醒させた。
「す、すまない、アイオロス」
「そんなに眠いのなら、少し仮眠をとってきたらどうだ?」
「いや…大丈夫だから…」
「無理をすることはないさ。どうせ昨夜、カノンと遅くまで話し込んでいたんだろう?」
 アイオロスはからかうように笑った。
 そう、昨日は双子座のサガとカノンの誕生日だったのだ。
 二人は、アテナ沙織にジュリアン・ソロ(そしてこんな時に限って目を覚ましてくれるポセイドン)という二名の主君からの「誕生日の祝賀会を自分が開こう」という申し出を丁重に断り、二人それぞれの恋人であるアイオロスとラダマンティスからの「誕生日を自分と一緒に過ごしてほしい」という願いも却下して、兄弟二人きりで誕生日を過ごすことにした。
 カノンは自分が住んでいる海界の中心都市ポセイドニアにサガを招き、「人気劇団が新作喜劇を上演するから、一緒に見に行こうぜ」と兄を誘い、観劇の後は夕食をともにし、そしてサガは弟のところに一泊して、今朝、聖域に帰って来たのであった。
「まあ、確かに遅くまで二人で話をしていたというのもあるのだが…」
 サガはそこで眉根を寄せ、ため息をついた。
「はぁ…それにしてもカノンの寝相はどうしてああも悪いのか…」
「…は?」
 その発言にアイオロスは目を点にさせた。
「カノンの奴が始終、寝返りを打っては私の足を蹴っ飛ばしたり、頭を小突いたりしたせいで、夕べはよく眠れなくてな…」
 その状況をアイオロスは頭の中で想像してみた。
「…ちょっと待て。サガ、お前…カノンと一緒のベッドで寝たのか?」
「一緒だったが」
 サガは当然だという風で答えたが、アイオロスには衝撃だった。
「え、え?一緒って…!?」
「……?そんなに驚くことか?だって子供のころは一緒に寝てたし、カノンと話したいこともたくさんあったから、二人で枕を並べて語り合おうと…」
「いやいやいや!二十八歳の男兄弟が同じベッドで寝るとか、普通じゃないから!」
「そう…なのか?」
 アイオロスのツッコミに、サガは不思議そうな、納得のいかなそうな顔をするだけだった。
「まさか、まさか…『お休みのチュー』とかもしたんじゃ…」
「したぞ」
「したのかよ!」
 サガの答えにアイオロスが再びツッコむ。
「え?え?普通、寝る前には挨拶をするものではないのか?」
「だからといって『チュー』はないだろ!『チュー』は!」
「そうなのか?お前とアイオリアは、お休みのキスとか、しないのか?」
「しないよ!」
「しないのか?それはアイオリアが可哀想ではないか」
 サガはアイオロスを叱るような口調で言った。
「いやいやいや、可哀想とかないから!」
「そうか?アイオリアは寂しがっていると思うが…」
 あくまで幼少時の思い出を基準にアイオリアの気持ちを決めつけているサガだったが、また別のことに考えが移って、彼はため息をついた。
「寝相もそうだが…。カノンは食事のマナーも問題だな」
「そうか?おれはカノンが晩餐会などに出ている姿を見たこともあったが、特にカノンの食事マナーに問題があったという記憶はないが…」
「そういう場ではカノンも気を張っているからいいのだろう。昨夜は私と二人きりだったせいか、食べ方がどうも汚くてな。口の端をソースなどでよく汚していた。まあ、そのたびに私が拭いてやったのだが…」
 ぶっとアイオロスは吹き出した。
「お前が拭いてやるのかよ!お前はカノンのお母さんじゃないぞ!?」
「だってカノンは汚れたことに気付いてないのだ。私が拭いてやらねば仕方ないではないか」
 アイオロスの非難めいた言葉に、サガは抗弁した。
「お前はカノンを甘やかし過ぎだ!」
 そこではっとアイオロスは思い付いた。
「まさか…食べ物をスプーンにとって『あ〜ん』とかもしたんじゃあ…」
「したぞ」
 サガの答えにアイオロスはのけぞり、椅子から転げ落ちそうになった。
「え?え?おかしいか?だって、食後のデザートにババロアが出たのだが、カノンが自分の分を食べた後も、まだ食べたそうに私のババロアをじーっと見ていたから、スプーンに一口取ってカノンに食べさせて…」
「あー、あー、あー…」
 双子のあまりの密着ぶりに撃沈しかけたアイオロスだったが、さらにまずい事態に思いが及んで、こう聞いてみた。
「まさか…風呂まで一緒に入ったんじゃ…」
「一緒に入ったぞ」
「入ったのかよ!?」
 何か問題が?と言いたげなサガに対し、アイオロスは勢いよく机を叩いて立ち上がった。
「え…?だって一人だと背中を洗うのに苦労するし、カノンも『背中を洗いっこしようぜ』と言ったし、背中をカノンに洗ってもらうのは気持ちがいいし…」
「普段は一人で風呂に入って、一人で背中を洗ってるだろうが、お前は!?」
「でもせっかくカノンがいるのだし…」
 そこでサガは小首をかしげた。
「先程から何をそんなに驚いているのだ、アイオロス?カノンとは子供のころから一緒に風呂に入っていたぞ?驚くようなことではない」
 がん!とアイオロスは机の上に突っ伏して完全に撃沈した。
「…アイオロス?」
 机の上に上半身を伏せたまま固まっているアイオロスに、サガが心配そうに声を掛ける。
「……」
「え〜と…アイオロス?」
「サガァァァァーッ!」
 そこでいきなりアイオロスが立ち上がった。
「サガ!今夜は教皇の間に泊まれ!それでおれと一緒に夕食をとるんだ!そしておれに『あ〜ん』ってやって食べさせてくれ!もちろん風呂も一緒だ!おれの背中を洗ってくれ!それから一緒に寝るんだ!『お休みのチュー』をして!」
「あ、ああ…」
 「それならいつもやっているような気がするが…」と、アイオロスの気持ちを理解せず一人で首をひねっているサガとは対照的に、アイオロスは心の中でサガの双子の弟に対して対抗心と嫉妬心を燃やしてリベンジを誓うのであった。

<FIN>

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