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2015年09月21日00:43

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『常識についての一考察』第4話

『常識についての一考察』第4話

 異次元から帰還したサガとアケローオスを、アイオロスは教皇の間の執務室で迎えた。
「お帰り、サガ」
「ただいま、アイオロス。すまない、仕事を放棄したりして…」
「いいよ。おれが悪かった。サガに子供を産めだなんて…やっぱり無茶だよな。お前の心は男のままなのに…」
 サガはアイオロスの元に歩み寄り、首を横に振った。
「その、アイオロス、私…考えてみたのだ。お前と私の子、というのを…」
 アイオロスを見上げ、とつとつとサガは話し始めた。
「私が男のうちは、お前の子のことなど考えたこともなかった。だってお前が子を成すということは、その、私以外の他の女性と…ということだろう?そんなこと耐えられない。でもこうして女になって、お前との間に子が持てるかもしれないと改めて考えてみたら…、私、お前の子が見たい、この腕に抱きたい、と、そう思ったのだ」
「サガ…」
 アイオロスが目を見開く。暖かい感情が彼の胸にあふれ、頬に血の気が上った。
「アケローオス様に言われた。子を成すということは、私たちの愛の証を永遠に地上に伝えていくという行為なのだと…。子孫を残すということは、神が生き物に与えた尊貴で崇高な力なのだと。私…私、お前との愛を永遠のものにしたい。お前と私が愛し合った証を、子という形で残してみたい。お前の子を産みたい。産んでもいい…いいや、お前の子を、私に産ませてほしい!」
「サガ…!」
 アイオロスは感極まり、サガを抱きしめた。
「サガ、本当に産んでくれるの?おれの子を…」
「うん、アイオロス…。私も、アイオロスとの子が欲しい…」
「サガ、サガ…愛してる…。嬉しいよ、サガ…」
 そうしてアイオロスはサガの顔に口づけを繰り返した。アケローオスがそっと近寄り、サガの手を取って口づけた。
「サガ、おれの子も…産んでくれるな?」
「ええ、アケローオス様」
 甘やかな微笑みをサガはアケローオスに向けた。
「あなたの子も…産みます。子を、あなたに残して差し上げます」
 では、と、アケローオスがサガの肩を抱いて引き寄せた。
「今晩から早速、子作りの予行演習といこう」
「…え、ええええっ!」
 その言葉の意味を悟り、サガは赤面した。
「いやか?」
「い、いやというか…。まだ心の準備が…」
 慌てるサガをしり目に、アケローオスはアイオロスに笑いかけた。
「安心しろ、教皇。サガの処女はお前に譲ってやる」
「アケローオス様…っ!」
 ますます慌てたサガにアケローオスが言った。
「サガ、お前、女の体になってからまだ教皇に抱いてもらってないだろう?」
「だ、だってこの体になってまだ日も浅いし…。というか、なんでそんなことまで…!」
「まあ、触れればおれには分かる。ちょうどいい。今夜、教皇に抱いてもらうといい」
「で、でも…そんな急に…」
 戸惑うサガの頬を、アイオロスの手が包んだ。
「サガ」
 アイオロスがサガを見つめ、そっとささやいた。
「今夜…三人でしよう。サガがどんな姿になろうと、どんなサガであろうとおれの愛は変わらないということを…サガに分かって欲しいんだ」
「アイオロス…」
 そうしてサガは、恥ずかしそうにうなずいたのだった。

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